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【BtoBマーケティング講座】理論と実践

海老原です。

BtoBマーケティングとはなんでしょうか。BtoBとはBusiness to Business。企業顧客向けのマーケティングです。
マーケティングの本質は企業向けでも消費者向けでも同じ。ただしBtoB特有の思考方法やポイントがあります。

事業会社3社での新規事業立上げ後、企業研修講師、戦略策定支援などでBtoB歴20年以上の海老原が、BtoBマーケティングの理論と実践を解説します。
オーソドックスなコトラーのマーケティング理論をベースにしつつ、BtoB実務でありがちな疑問、落とし穴を踏まえたポイントを加えます。


マーケティングとは

マーケティングとは、顧客ニーズへの適合と優位を構築する活動です。

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自社(企業)、市場(顧客)、競合の3つを俯瞰的にとらえ顧客ニーズへの適合と競争環境への適合(競争に勝つ)を行います。

戦略の基本3要素

戦略論の大家リチャード・P・ルメルト教授の著書に「良い戦略、悪い戦略」があります。同書では「良い戦略には『診断』『基本方針』『行動計画』の3つの要素がそろっている」と言います。逆に、診断、基本方針、行動計画のどれかが欠けていれば、それは悪い戦略です。
この「診断、基本方針、行動計画」は、マーケティングに限らずあらゆる戦略検討に使えるシンプルで使いやすい考え方です。

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マーケティング戦略策定の流れ

マーケティング戦略策定の流れを「診断、基本方針、行動計画」の枠組みを使って示します。

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マーケティング戦略策定の流れにそって利用するフレームワークを示したのが次の図です。

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ニーズとウォンツ

マーケティングの原点は顧客ニーズの理解です。ニーズと混同しやすい言葉としてウォンツがあります。ニーズとウォンツは、目的と手段の関係と考えるとわかりやすいです。

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実際に顧客のニーズとウォンツと区別するのは難しいものです。ニーズヒアリングの注意点に次の2つがあります。

・顧客の発言は常にウォンツ寄りである
・人は抽象的なことより具体的なことのほうが話しやすい

目的と手段の連鎖でニーズを掘り下げた例

次の2つは私が研修受講者に質問してウォンツ(欲しいもの)をあげてもらい、質問でニーズを掘り下げた例です。

営業部女性社員のニーズ

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営業部女性社員は、なぜ電動自転車が欲しいかを質問で掘り下げました。
営業部男子社員のニーズ

営業部男子社員は、なぜ車が欲しいかを質問で掘り下げました。

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マーケティング環境分析

マーケティング環境分析のフレームワークに、PEST、3Cがあります。PEST分析はマクロ環境、3C分析は業界環境を理解するためのフレームワークです。

PEST分析

PEST分析は、業界を取り巻くマクロ環境を網羅的に捉えるフレームワークです。PESTとは、Political(政治)、Economical(経済)、Technical(技術)、Social(社会)の頭文字をとったものです。

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マクロ環境とは

マクロ環境とはなんでしょうか。マクロ(Macro)には、英語で大きい、巨視的な、といった意味があります。しかし、これだけではどこまでの範囲をマクロ環境とするのか、判断が難しい。マーケティング戦略においては、自社の所属する業界の外の話全部、と理解するのがシンプルです。

3C分析

3C分析とは、市場、競合、自社の視点で業界を網羅的に把握するフレームワークです。3Cは、Customer、Company、Competitorの頭文字を取ったものです。


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6C分析:BtoBマーケティングの顧客理解

BtoBマーケティング特有のフレームワークに6C分析があります。顧客業界の3Cと自社業界の3C、併せて6C分析です。

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マーケティングの出発点は顧客理解。BtoBマーケティングの顧客は、顧客の属する業界の中で競合と顧客の顧客を常に意識しながら企業活動を行っています。そのため顧客視点の3C分析も必要になります。

BtoBマーケティングで顧客の3C分析は、どこまで必要か

一口に顧客の3C分析が必要、といってもどの程度まで行う必要があるのでしょうか。業界分析には、継続的に顧客、競合、自社の情報収集し、整理しておかなければなりません。上を目指すときりがありません。

一つの基準は、顧客とマーケティング戦略レベルでの会話ができること、です。顧客企業が、どのような業界環境認識のもと、どこをターゲットに、どのようなポジショニングを狙っているのか。これらを理解したうえで、自社が貢献できることが何かを考えます。

マーケティング基本戦略(STP)

マーケティング基本戦略は、STPで表されます。STPとは、Segmantation、Targeting、Potioningの3つの頭文字をとったものです。

ターゲティング=分ける+選ぶ

ターゲティングとは、「分けること(Segmentation)」と「選ぶこと(Targeting)」です。

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市場をどのように分けるべきか。基本は似ている顧客群ごとに分けるべきです。「似ている」の基準は同一のニーズを持っていること。

3R:BtoBマーケティングのセグメンテーション

3Rは、BtoBマーケティング実務で使いやすい良いセグメンテーションを判断するフレームワークです。3Rとは、Response(測定可能である、 Reach(到達可能である)、Realistic(十分な規模)の頭文字です。

測定可能である(Response)

セグメンテーションが測定可能であるとは、各セグメントの内容、大きさを測る情報が得られることです。
例えば、「40代男性」は統計情報として明確に人数が分かります。一方、「白い服が好きな女性」の人数を計算するのは至難の業です。

到達可能である(Reach)

セグメンテーションに到達可能である(Reach) であるとは、セグメント効果的に到達できる営業手段を持ち得ること。
例えば、同じ新市場でも求められる営業スタイルの変化の大小で、到達可能性が変わります。

十分な規模(Realistic)

セグメンテーションで十分な規模(Realistic)があるとは、戦略を組む価値がある市場規模があることです。
なお、大きければ大きいほど良い訳ではありません。例えば、例えば、「自動車関連市場」だとセグメントが大きすぎて戦略を立てることができません。

ポジショニング

ターゲットは「どの顧客を狙うか」を決め、ポジショニングでは「顧客脳内での自社の位置づけ」を決めます。

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ターゲットは顧客で物理的に存在するもの。一方、ポジショニングは顧客の脳内イメージで、物理的に存在しません。

マーケティングミックス(4P)

戦略の基本3要素のうち「行動計画」にあたるのが、マーケティングミックス(4P)です。

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4Pとは、Product、Price、Place、Promotinの頭文字をとったものです。製品、価格、流通、プロモーションの4Pは、行動計画・実現手段を整理するのに最適なマーケティングフレームワークです。

STPと4P

ターゲットとポジショニングは、マーケティング戦略の「誰に(Who、To Whom)、何を(What)」提供するかを規定します。STPの具体的な実現手段(How)を規定するのが4Pです。

製品戦略(Product)

4PのProductは製品戦略です。ここでは、製品戦略を考えるのに有効な2つのマーケティングフレームワークを紹介します。製品コンセプトとFABE分析です。

製品コンセプト

製品戦略はターゲット、利用シーン、顧客価値の3要素で考えると整理しやすい。これが製品コンセプトです。

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混在しがちなのが製品コンセプトと製品仕様です。製品仕様はコンセプトの実現手段。目的と手段の関係です。

FABE分析

FABE(ファベ)は、Feature(特徴)、Advantage(優位性)、Benefit(顧客メリット)、Evidence(証拠)の頭文字をとったもの。元々提案整理に有効なフレームワークですが、商品戦略で商品の伝え方をまとめるのに適しています。

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商品パンフレット作成時など、FABE分析でメッセージを整理します。

なお、製品コンセプトとFABE分析の使い分けが迷いやすいところ。製品コンセプトは商品企画するときのフレームワーク。対してFABE分析は企画した商品を伝えるフレームワークとして、状況に応じて使い分けます。

価格戦略(Price)

4PのPriceは価格戦略です。価格戦略を考えるのに最も重要な価格ロジックについて説明します。
価格上限は、顧客が得る価値

価格算出ロジックについて、自社目線と顧客目線を比較したのが次の図です。

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典型的な自社目線での価格算出ロジックはかかったコストに利益を乗せます。一方、顧客目線で考えるとコストがいくらかは判断基準になりません。支払い意思額(WTP:willingness-to-pay)は、顧客が得る価値によって決まります。
顧客が得る価値が自社の提供価格の上限です。

BtoBマーケティングでは顧客価値を定量化

価格決定において顧客が得る価値が重要であるのは、消費財でもBtoBマーケティングでも同じです。BtoBマーケティングで、特に意識すべきは顧客価値の定量化です。

消費財ではブランド力など数値化しにくい部分の比重が大きくなります。一方、企業の意思決定は個人に比べより合理的です。企業の意思決定では、定量化し経済合理的に意思決定しようとする圧力が働きます。
BtoBマーケティングでは、購買意思決定により顧客がいくら得するかを示す必要があります。

流通チャネル(Place)

4PのPlaceは流通戦略(流通チャネル)です。流通チャネルの主な役割を次にまとめます。

【調査】製品に対する意識や意見などの情報収集する
【プロモーション 】チャネルを巻き込んだ、販売促進活動
【接触 】予想される顧客を掘り起こし、これと接触していく
【交渉 】価格やその他の取引条件における最終合意をとること
【ニーズ適合】 より細かな顧客のニーズに対応する
【物流 】製品の輸送と保管
【金融】 流通に必要な資金の確保、配分(資金回収、分割払etc)

流通チャネルをみるポイントは、顧客の受け取り価値はどの機能で高まるか、です。流通チャネルは一般に4Pの中でもっとも構築に時間と労力がかかります。付加価値を出す役割、効率性/コストを追求する役割、など長期視点でメリハリをつけ流通チャネルを構築します。

プロモーション(Promotion)

4PのPromotionはプロモーションです。プロモーションの本質は顧客とのコミュニケーション設計であるためコミュニケーション戦略とも言います。

プロモーションで重要なマーケティングフレームワーク。態度変容モデルと購買検討プロセスについて解説します。

態度変容モデル

コミュニケーション設計を行うには、購買までの顧客行動をモデル化することが有効です。これを態度変容モデルと言います。

AIDMA

態度変容モデルで最も有名なフレームワークがAIDMA(アイドマ)です。

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AIDMAは、Attention(認知)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶に残る)、Action(行動=購入)の頭文字をとったもの。

AIDMAは、個人消費者向けの態度変容モデルとして使いやすいフレームワークです。
コミュニケーション設計(AIDMAの例)

AIDMAでのコミュニケーション設計例を示します。態度変容をモデル化したうえで、顧客を次の態度に導くためにどのコミュにエーション手段を用いるか、最適な方法を設計します。

・未認知→認知:TVCM、電車広告
・認知→興味: 店頭POP、知人のおすすめ
・興味→記憶: リターゲティング広告
・記憶→購買: 販促キャンペーン

このように顧客の意識の流れをモデル化することで、コミュニケーション設計が容易になるのです。

【BtoBマーケティング】購買プロセス分析

BtoBマーケティングでは、態度変容モデルの代わりに購買プロセスを分析します。顧客企業の購買検討プロセスを理解し、各ステップに対応するコミュニケーション設計を行います。

BtoBマーケティングでもBtoCでも、購買までのプロセスをモデル化する、共通言語化することは同様です。
大きな違いはBtoCが個人の意思決定に対して、BtoBでは企業の組織的意思決定であること。よって、関係者一人一人の態度よりも、企業組織としての意思決定プロセス、購買検討の流れを掴むことが重要です。

【BtoBマーケティング】購買プロセス例:営業支援システム

購買プロセスとして、「営業支援システム導入」の例を示します。典型的には情報システム部門が主管し、営業支援システムを販売しているベンダーに提案依頼を行います。

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【BtoBマーケティング】購買プロセス例:製造部品

購買プロセスとして、「製造部品」の例を示します。
例では、顧客企業はメーカー。自社はメーカーが設計、製造する商品の部品を販売します。

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【BtoBマーケティング】購買プロセス分析のポイント

BtoBマーケティングの購買プロセス分析のポイントを解説します。

BtoBの購買プロセスはオリジナルで作る

BtoBマーケティングの購買プロセスは、AIDMAのような汎用性の高いフレームワークはありません。自社が扱う商品、営業行動特性、顧客企業の業界、顧客キーマンの特性、などの違いで適切な購買プロセスは異なります。

例えば、先にあげた営業支援システムと製造部品の購買プロセスの2つを比較すると全く異なることがわかります。また、例えば同じ製造部品でも、汎用品と特殊な部品では購買プロセスが異なるはずです(汎用品では、購買部門主体で価格比較。一方、特殊部品ではより上流の商品設計から検討が行われる)。オリジナルで自社に最適な購買プロセスを設計できるかが、営業戦略のキモになります。

営業戦略では購買プロセスの上流へ食い込む

購買プロセス分析の後、各ステップに沿ったコミュニケーション設計を行います。BtoBマーケティングのコミュニケーション設計は営業戦略が重要です。

営業戦略立案のポイントの一つが購買プロセスの上流に食い込むこと。例えば、製造部品であれば、顧客接点を上流の商品企画から持てるか、下流工程の仕様決定後の相見積もりからしか持てないかで受注確度が大きく変わります。下流から入るほど薄利多売モデルになります。購買プロセスの上流から接点を持つためには、ソリューション営業、問題解決型営業が必要です。

(文責:プロジェクトファシリテーター 海老原一司)

BtoBマーケティング講座は「ロジカルシンキング講師のビジネスナレッジ」WEBサイトにて、随時更新していく予定です。

https://project-facilitator.com/btob-marketing-lesson/


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ロジカルシンキング講師。プロジェクトファシリテーター。 企業の外部助っ人としてマーケティング支援、業務改革などのプロジェクトを常に複数回す。プロジェクトファシリテーション業務の傍ら、研修講師、立教大学経営学部講師としてわかりやすい論理思考の普及に励む。BtoBプロフェッショナル