料理とは、理(ことわり)に料(はか)るのだ【美食地質学入門】
『美食地質学入門』 巽好幸著
~和食と日本列島の素敵な関係~
ワインにテロワールという
言葉がある。
風土とか土地の個性を表す言葉で、
それがワインの味を左右する。
本書は、それよりさらに深く?、
火山、地質、もっといえば、
プレートテクトニクスが
地域ならではの
素材の味を決めた、という話だ。
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たとえば、水は大きく軟水と硬水にわかれる。軟水はミネラル(カルシウム、カリウム、リンなど)の含有量が少なく、
硬水は多い。
この違いが日本では出汁(だし)の
文化を生み、
ヨーロッパではブイヨンなどの
スープが育まれた。
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ブイヨンの旨味を出すもとは、
獣肉や鶏肉だ。
これを煮込んだときに、
灰汁(あく)を取り除くと、
生臭さが消える。
硬水に多く含まれるカルシウムと
結合するためだ。
軟水ではこのようにはいかない。
逆に軟水だと、出汁のうまみ成分、
昆布などの旨味を上手に
引き出すことができるが、
硬水でこれをやると、
カルシウムが昆布のぬめり成分と結合して、
うま味成分が抽出できないのだ。
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と、ここまでなら、
料理本にも当たり前?に
書かれている軟水と硬水の説明だ。
本書のすごさは、ここからなのである。
では、なぜ日本は軟水なのか?
これは急峻な山地ができたことで、
川や地下水の流れが急で、
ミネラルが水に溶け込む
時間が短いのだ。
日本と同じ島国のイギリス。
その最高峰は「ザ・ベン」だが、
標高はたかだか1344m。
3000mクラス級の山々を抱えた
我が国とは大違い。
そして、本書は、ここでも終わらず、
さらにこういう山々を生み出した
火山の話、そしてプレートテクトニクスの
話へと進むのである。
脱帽ものであるw
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ちなみに、沖縄は山が低いため、
水は硬水である。だから、沖縄そばの
出汁は昆布、カツオではなく、
豚骨なのである。
つまり、理(ことわり)に料(はか)る、
「料理(=物事をうまく処理する)」に
ほかならないのであるw
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本書には、このほかにも
豆腐、醤油、蕎麦、うどん、
瀬戸内海の魚介、
山梨ワインなどなどが同様に
懇切丁寧に紹介される。
プレート運動が引き起こした
大地の恵みがダイナミックに
語られているので、
興味のある方、
また料理を生業とされている方は、
今までとはまったく別角度で
日本の恵みを知ることができるかも。
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著者は、日本の地球科学者。専門はマグマ学。神戸大学大学院理学研究科教授を経て、神戸大学海洋底探査センター客員教授であるだけでなく、かなりの食通でもある。興味ある方はぜひ。ただ、地質学の話は多少、なじみのない言葉が多いので、多少、避けて通りましたw
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