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今年見た映画の話2022②

パート①はこちら↑。今回はその続きです。よしなに。


トップガン・マーベリック

今年圧倒的ナンバーワンであることは間違いないです。今後5年でこれよりいい映画体験ってできるのかなって真剣に考えるけど6秒くらいでバカらしくなってやめるくらい素晴らしい映画です。公開後2か月ほど経ってやっと見た自分は本当に愚かだったと思う。IMAXのど真ん中で見るべきだった。それくらい凄い映画だよこれ。

最近忘れていたことがあってそれは純粋に映画を見るという「体験」「楽しさ」。体験こそがこの映画の真骨頂なのです。特に最近の物語に多いのは複雑なシナリオや伏線を張り巡らせ観客に考えさせるもの。物語の複雑さや緻密さ、計算された伏線がトレンドなのでしょう。あと、ジェンダーや人種への配慮。これも重要です。まぁそれはそれで良いんです。後者はその方向で正しいはず。面白い映画であれば。そこまででもない作品も山ほどありますから。例外なく前者もです。世間が複雑な物語を求めている。社会情勢も相まって映画にも多様性の波が常に立ち続けている状況。しかし、いい波ばかりではない。少し踏み込んで言ってしまえばポリコレを盾に自分たちの主義主張を押し通す人が一定数いて、いつの間にか誰のための作品なのか分からなくなっていることも多々ある。本当の目的は「平等」であり「相互理解」のはずなのに。
純粋に面白い映画ではなく社会に対して上手く問題提起した作品が評価されることも多くなったのではとも思える。ある側面で言えば社会が成熟した文化を扱える(支える仕組みを手に入れた)ようになった一方で純粋な面白さを捨てるのはもったいないとも思ってしまうわけです。(なぜかここでぱっと出たのはダイハード)

ではトップガン・マーベリックはと言えばこれこそ最高の体験だと断言できる。待ちに待った頭空っぽで見て面白いと言える最強映画。映画の中の映画。温故知新は懐古ではなく踏襲であり核心であり、王道であった。正に今後の映画の方向性をトムクルーズが示したと思います。結局これだけ売れたってことはみんなこれを求めてたってことの証でもある。
くぁっっっこいぃぃぃ!!を5分に一回心で叫び、戦闘機アクションになれば気がつくと手をギュッと握ってしまう。手に汗握るという表現に嘘偽りないものであり作品の中毒になる人の気持ちがよく分かる。アドレナリンがすごい出る。

ならず者国家どこ?とか言っちゃダメなんです。そんなことに何か意味はありますか?無いですよね。ないんです。はいその通り。
気持ちいい、楽しいことこそがこの映画の醍醐味であり劇場映画のあり方だと示しているのです。快感原則を乗っ取り,、心や身体にある感覚をハックする。これこそが大事なのです。

ちょっと今年は自分の中でこの映画と他の作品を比較するのやめます。他の映画の部が悪すぎる。100点軸で考えてもカンストしてるので。正しさは存在しないが近年公開された映画の中で1番正解に近い気がする。


ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド

すみません。初っ端から身も蓋もないことを言いますが相変わらずブラッドピッドがかっこよすぎて。個人的に成熟したブラビ成分を摂るための映画としても結構いい映画だと思う。あと、今回アマプラの吹き替えで見たけどプラピが堀内賢雄だったんですよ。まぁ〜それが良くて。気だるい感じとかがめちゃめちゃうまいしやっぱカッコいいですよね。
じゃあレオナルドディカプリオは?と言えばコレまたいい演技をする。あれほど美青年で売ってたイケメンもいつかはおじさんになる。時間は残酷で基礎代謝を落とし筋肉が付きにくくなる分、脂肪はつきやすくなる。それでもディカプリオはカッコいいし情けない役が似合う。情けない役が似合うのってすごい演技が上手いからだと思うんですよね。やはり大ハリウッドスターだけある。
この映画はシャロンテート事件という実際に起きた悲惨な事件があり、そこにアナザーストーリーとしてブラピとディカプリオがいるという設定になっている。シャロンテート事件はYouTubeでも映画と関連した解説があるのでそれを見てからでも面白いだろう。事件自体はとてもショッキングなものだが映画の全体像は結構見やすくなる材料である。

内容はと言えば・・・面白い。最後の最後でタランティーノが本性を見せるのですが(あ〜我慢できなかったんだなぁこの人って思ったww)その前も面白い。ただ劇的にって感じではなかった。長回しのただくっちゃべってるシーンとかもあータランティーノだ〜って感じ。そこを面白いと思えるなら好きだと思う。僕は好きなんです。あのくだらない会話とか意味のない争いとか。汚いけどクセになる食事シーンとか。あと、音楽のタイミングもすごく良くて。キメのカットをビシッと治めるあたりさすがタランティーノ。とにかくブラピが良かった。


さかなのこ

寝不足で見たもので少しブレがあるというかフワフワした感想になるのをお許しいただきたい。
この映画、今年本命の一本だった。予告が出た時から主演がのんだと分かって驚きと同時にこれは絶対良い作品になると分かった。能年玲奈(リスペクトを込めて)が最適解でありこの人以外いないと思わる説得力が映像にあった。(余談だけど僕は能年玲奈になりたい時期があり話し方とかを真似していた時期があった。結果として今まで以上に不思議な人と思われるようになった。)
この作品に対してジェンダーだのなんだのとメディアが騒いでいたが本当にしょうもないと思っている。さかなクンのイメージに一番近かったからキャスティングしただけでなのになぜ騒ぐのか全く意味が分からない。男を女が演じるのがそんなに目新しいのか?この国では歌舞伎という伝統芸能で数百年も前から男が女を演じているのに?違和感ない?当たり前だろ!天才のんが演じるんだから!違和感ないからキャスティングしとるのだろうが!!何にも分かってない!そこまでPV稼ぎに興味のない層にアピールしてるなら本当に残念だと思ってしまう・・・と見る前から怒ってた。

そしてやっとタイミングが合って劇場へ。結果としてとても良かった。本当にいい作品でした。

さかなクンをこの作品ではミー坊と呼ぶのだけどミー坊の物語としてとっても楽しめた。
特に床屋のおじさんとの会話とも言えない会話のシーン。大人になって引っ越したアパートの隣にある床屋のおじさんと会話するシーン。床屋のおじさんは低い塀に座ってタバコを吸っている。ミー坊は住んでいる隣のアパートに帰る前に釣ってきた魚を見せたり何が釣れたか話すけどおじさんはタバコを咥えながら「おー」しか言わないwでもそれが冷たい反応ではないのがよく分かる。近所にあるユルいコミュニティの良さというか気にしてないようで気にしているみたいな空間の心地良さみたいなのもを感じる場面だった。見守るというか他人事なんだけど他人ではないみたいなところの良さを見せつけられた。というかこの映画はこれに似た心地いい空間というか空気感をずっと感じるのだ。

それにこの作品は何かを否定することがほとんどない。肯定の連続。それが優しい映画であり同時に残酷でもある。
ミー坊はそのままで良いよ〜って周りから言われて、結果大成したからいいけどそれで地獄を見た人はいっぱいいる。諦めも大事なんだけど好きなことをやり続けた先に見える景色は眩しいくらい美しいってことを純粋な目で言われ続ける感じがするのは中々すごい映画だなと思わせる。脚色したとは言え概ねご都合主義万歳が現実で成り立った物語なので。ただそれでいいと思う。なぜなら心地いいから。やればできる!!ではなくて好きな事を好きなままでいるってステキなことだよね〜みたいな感じなので全く嫌じゃない。

そう、あまちゃんっぽかったというか優しいクドカンみたいな作品だった。00年代のドラマってこんな匂いの作品多くない?この感覚僕だけ?とは言えユルさと現実の境目を曖昧にするこの作品は本当に素晴らしい。ぜひ見てほしい。


四畳半タイムマシーンブルース

アニメ四畳半神話体系が好きである。浅沼晋太郎の早口と主人公のダメさ加減、シュールな物語、湯浅政明の独特なタッチにアジカンはスルメの如く噛めば噛むほど味が出るような作品である。僕が京都好きなのもこのアニメと同じく森見登美彦作品の夜は短し歩けよ乙女の影響は大きい。幾度なく流行り病に行く手を阻止されながらやっとの思いでたどり着いた京都へ赴き、残暑厳しい中レンタル自転車を爆走させ下鴨神社と糺の森へ行けたのは本当に甘美な時間であった。このあと飲んだビールはタクラマカン砂漠の真ん中に発見したオアシスに足を踏み入れた感覚に陥ったことは言わずもがな甘味なものであった。文字通り幸福を感じずにはいられない瞬間である。(すこーしだけ森見登美彦風に書いた)

さて映画の話をするとアニメの四畳半神話体系を見てない人も置いて行かない万人受けする作品と言える。ただ僕はアニメの方が好き。小説を読んでいるからなおさらかもしれないがテンポ良すぎと感じる。かと言って会話は落ち着いている。浅沼晋太郎はもう少し早く話してほしいなぁと思ったけどたまたま聞いたSpotifyの番組で意図的にやってることが分かりなるほどなと思い演出の意図は分かったものの些か少し残念であった。
まぁこの形態で新作アニメが見れる事自体を喜ぶべきである。良くも悪くも見やすいアニメであったことは間違いない。
あ、付け加えると今回湯浅政明要素があまり感じなかった。今回監督をしていないのは承知の上で言っている。なんというか湯浅監督要素ってこの物語には必要不可欠なものだったのだなと今更ながらに気づく。それが良いか悪いかは別として。
ただ、原作の雰囲気は残しつつ映像は本当に良く、なによりアジカンがアジカンしている曲でこの映画を見終えるということは全く持って正しい選択であった。あえて言えば夢破れたとて四畳半は必ずそこにある。これは普遍且つ正しい論理法則である。


ブレッドトレイン

「間違いだらけの日本の歩き方」みたいな映画だけどそれを楽しめるなら大好き。こういう描き方に嫌気をさしているなら別のことに時間を費やす方が有意義である。
いつまでも日本人がこれを受け入れてるから訳の分からないようになるんだと言われればこの映画は向いてない。僕も間違えた日本をいつまでやっているんだと思ってたけど撤回。面白いから全然アリ。そんなことで怒ってもしょうがない。短気は損気ってやつである。

さて、ここで気づくことがある。やはり海外の人はサイバーパンク的な東京と歴史と威厳を感じさせる古都、京都を望んでいることである。東京はビカビカのネオンだらけでそこを抜けると未来的な駅があるみたいな。しかも富士山はどこからでも見えるくらいバカデカくてその周りは平野みたいな。京都は平安時代の絵みたいな場所で敵はさながら任侠映画のイメージ詰め合わせ!みたいな感じ。とにかく海外の人はJAPANは未来と歴史の融合であって欲しいという願望があるのかもしれない。だとすればこの映画は最初から最後までその願望を叶えた映画であった。日本で撮影していないことが逆にメリットになることもあるんだなと感心する。ディテールそのものも思いっきりフィクションとして楽しめるからそれはそれでよき。

テリーギリアムのドンキホーテ

コロナ治りかけで夜中寝ながら見てた。なんか内容的にも頭おかしくなりそうな映画だった。呪われた映画としては知っていたが本当に呪われていると思う。ホラー的なものではないけど。ホント訳わからん。インフルエンザとかのときに見る悪夢くらいわけわからん。
後々知ったんだけど原本のドンキホーテ自体が現実とフィクションの区別が分からなくなった主人公が俺はドンキホーテ(騎士)だ!と言って旅をするというぶっ飛んだ内容らしくそれに則っているらしい。
ただアダムドライバーは相変わらず気の抜けた演技が上手い。「俺をバカにしてるでしょ?!」みたいな掛け合いは面白い。

エルフ 〜サンタの国からやってきた〜

大学の授業で見た。ポスターだけでは見る気が起きないだろう。こうやって自分が見ないであろう映画を見る機会があるってのはありがたい。そして想像以上に面白い。初っ端のエルフのシーンはホント面白い。ドリフトのコントを大真面目にやっているみたい。
この手の映画は突っ込んだら負け。純粋に楽しみながら見るのが正解。見た目はおじさん心はこどものエルフに気づかされることも多く最後にほっこりするようなお話になっていた。とてもいい映画。

恋人はアンバー

見たいと思った時に見る。案外それが幸せかもしれない。公開まで半年とか下手したら制作決定から待っていると1.2年は待ってないといけない。最早心労に近いものがある。最終的には期待しまくってわっくわくで映画館に行って🙂とか🙁みたいな顔になって出てくることも少なくない。だからYouTubeでシネマトゥデイとかの予告を見てたまたま出会った予告が面白そうだから時間あるとき観に行くくらいが本当はちょうどいい。
んでそのパターンで見たのが恋人はアンバー。結構好きな作品でした。要素としてジェンダーに触れる映画は最近多いし、たまーに見るけどジェンダーそのものがテーマの映画は恐らく初めてかもしれない。
映画.comではこんな感じで一言解説されている。

1990年代アイルランドの保守的な田舎町を舞台に、期間限定で恋人のふりをすることになったゲイとレズビアンの高校生を描いた青春映画。

映画.com/恋人はアンバー

ホントこの通りの映画なんだけど同性愛だから関係ないかと思って見るのをためらうのはもったいない。最後の「高校生を描いた青春映画」としてのクオリティがめちゃくちゃ高い。
個人的に好きな青春映画の条件のひとつとして共感性羞恥を感じてしまうことがあるのだけれどそれがしっかりある。
若いってバカバカしくてムダだけど異常にキラキラした瞬間的な部分がしっかりとある。あと傷つく場面。しっかりと傷ついてなんだか立ち直れそうで立ち直れないとか。でも何とか自分の道を進もうともがき苦しむ感じとかとってもグッとくる。

青春映画としてもいい映画なんだけど映像もとってもよかった。


マッドゴッド

1限だったから寝不足で若干具合悪いな~と思いながら映画館に。
結論から言えばこれはヤバイ作品。人を選ぶけど気になっているならば見て損はない。そもそも予告とかを見て気になっているならばこの映画を受け入れることができる準備はあるよね。
地獄のようではなく地獄。ディストピア的世界観ではなくディストピアそのもの。恐らくこの物語の世界に平和なんてものは存在しないし平穏なんて言葉は皆無だろうと思う。
とにかく圧倒的ビジュアルで否応なく世界観に入り込んでしまう。このほとんどがストップモーションとは思えないほど主人公?の追体験をしているように錯覚する感覚は何度もある。なんて言うんだろう。ディズニーシーのセンタオブジアースの急降下する前の世界観に常にいるイメージ。ただその全てが自分の敵だしグロいし残虐なやつらしかいない。そんで異常なまでのグロさ。ぞわぞわってする薄気味悪さ。
これこそ訳わからんのてっぺんに近い映画。いい意味で脳が疲れるし逆にクリエイティビティを刺激されるとも言える。
唯一無二の映画だったことは間違いない。一生忘れることはないであろう印象に残った作品だった。


と、こんな感じ

ごめんなさい。本ブログであるパート2は飽きてしまって少々どころか荒削りかつ雑な部分が目立ってしまいました。数本は掘り下げたいなと思いつつとりあえず世に出しておこうと思った次第でございます。

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