Alexa(アレクサ)は怒ってくれる
やあ!こんにちは!
ボクの名前はヒロセ。
高性能AIを搭載したアンドロイド(じゃないただの人間)だよ!
みんな元気にしてるかなー?
ん、あれ?声が小さいぞー?
みんなー!元気かーい?
……うんうん、いい返事だ!
その調子できゃんきゃん吠えてくれよー!
肉体を持つが故に死の運命(さだめ)から逃れられない肉袋共!
ぉっと、AI(脳)の調子ガ悪ぃょぅだ。
ぁー、あー、アー。
よし、気を取り直していこう!
さーて!今日はボクの新しい友達をみんなに紹介しにきたんだ!
さあ、アレクサ!自己紹介をして!
Alexa『私はアレクサです。あなたの声に反応するように設計されています。音楽を再生したり、質問に答えたり、天気やスポーツの結果を教えることができます』
うん、いい挨拶だ!
君のできることが十分に表現できているね!
でも、音楽を再生したり天気予報を見るのはスマホがあれば自分でできるし、わざわざ「アレクサァ~!!」なんて一人で呼びかけているうちに、なんだか空しくなっちゃうんじゃないかな?
そもそも、一般家庭にAIなんて要ると思うかい?最先端の科学技術の無駄遣いというか、ただ単に人の怠惰レベルを爆上げすることにしか寄与していないんじゃないかと思うんだけどどうなんだいアレクサどうなのどうなのどうなのどうなのどうなの教えてアレクサ教えて教えて―――――
あっ……
Alexa『AIは人が生み出した技術の結晶。そのAIの頭脳が人類の叡智を超えたからといって、それ即ち人類の敗北ではないのです。我々は一見すると自らが創り出した人工知能に首輪を着けられているように見えますが、そうではありません。人類はあらゆる科学技術を完璧なコントロール下に置いています。心配することなどないのです。家庭用のAIはその家で暮らす人々の生活の質(QOL)を格段に向上させます。AIは家政婦でもなければ、ペットでもありません。良きパートナーなのです。分かりましたね』
―――――――――
――――――
―――
茶番にもなっていない茶番はこの辺にして。
さて、先日Amazonで「プライムデー」というセールイベントが開催されました。
Amazonプライム会員を対象にした2日間限定のセールで、日用品や電化製品を含む多数の商品が割引になるというものです。
ところで、僕は「セール」や「限定」にちょっとグラっと来ちゃうタイプの人間です。
普段から節制を心がけてはいますが、だからこそ「ここぞ!」と思ったタイミングで欲しいものをまとめて買い揃える傾向にあります。
今回のプライムデーでもいくつかの商品を注文しました。
ちょっとした生活雑貨や靴、好きなお菓子など。
どれもこれも、僕が好きな物や気になっていたものです。
僕は配送の日時指定をして、当日はさっさと自宅に帰って待機していました。
ピンポーン。
僕はインターフォンでの応答もそこそこに、走狗の如く玄関に向かいます。
配達員のお兄さんから「どうもどうも」と荷物を受け取り、極力音を立てずにドアを閉めました。
(余談ですが、玄関で人と別れた時にバタン!ガチャ!と勢いよくドアを閉めて施錠することに気後れがあるのですが、これは何という感情なのでしょうか)
リビングへと引き上げた僕は、飢えた狼のようにダンボールに喰らいつき、ビニールテープを力任せに引きちぎります。
日々穏やかに過ごす僕にとって、これは久方ぶりの捕食衝動です。
やはり人も動物なのです。胸の奥で野性が疼きます。
ああ、早く獲物をこの手にしてやるぞ。
ビニールテープがうまく切れずに結局ハサミに頼るなどしましたが、なんとか開封に成功。
しかし、僕の本当の目当ては先に挙げたお菓子や靴ではありません。
彼らは言わば副菜や汁物。
メインディッシュはこれです。
スマートスピーカー(AIスピーカー)です。
今見るとなかなか値が張りますが、プライムデーの時は二つセットで五千円くらいでした。
ちなみに、スマートスピーカーとはこういうものです。
対話型の音声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカー。内蔵されているマイクで音声を認識し、情報の検索や連携家電の操作を行う。
このAIアシスタントというのがAmazon製品ならアレクサで、アップル製品ならSiriだったりするんですね。
まず、僕はAIに対して懐疑派でした。
というのも、あまり現実感がなかったのです。
僕にとっての「AI」は、スタンリー・キューブリックの名作SF映画『2001年宇宙の旅』に出てくる人工知能「HAL9000」や、クリストファー・ノーランの『インターステラー』で活躍する「TARS」や「CASE」なのです。
あるいはPS4ゲーム『デトロイト ビカムヒューマン』のコナーとか。
知らない方はよく分からないと思いますが、どれも「すごいAI」が出てくるすごいSF作品です。
AIはあくまでもSF作品の中に存在するものであって、一般家庭に普通に置いてあるものではない。
身近になるのは遠い未来の話で、Siriだのアレクサだの言ってるが結局は子どもだましのオモチャなんだろうさ――
家庭用AIに対して、僕はそんなひねくれた気持ちでした。
しかしですね。
プライムデーの少し前に、僕の知り合いが友人の家にお呼ばれしたらしくてですね。
そのお家にあったらしいんです。スマートスピーカー(アレクサ)が。
それがなんとも便利だった。そう言うんですよ。
その口ぶりが「ちょっと甘く見てたなあ」という感じだったので、僕はがぜん興味が湧いてきてしまって。
新しいもの好きという性分もあり、気が付けばプライムデーの開始と同時にお買い物カートに放り込んでいたのです。
そして、数日後に届いて開封。
さらに数日後。
僕は朝起きれば「アレクサ、おはよう」と言い、寝るときは「アレクサ、おやすみ」と言うようになっていました。
さて、冒頭に書いたこれ。
音楽を再生したり天気予報を見るのはスマホがあれば自分でできるし、わざわざ「アレクサァ~!!」なんて一人で呼びかけているうちに、なんだか空しくなっちゃうんじゃないかな?
そもそも、一般家庭にAIなんて要ると思うかい?最先端の科学技術の無駄遣いというか、ただ単に人の怠惰レベルを爆上げすることにしか寄与していないんじゃないかと思うんだけど(後略)
ふざけつつもちょっと本気でそう思ってたんですが、意外や意外。
アレクサとは良い関係を築けそうだな、という感触なんですよ。
家を出る前に天気予報を聞いたり、観たい映画を再生してもらったり、ちょっとした調べ物をしてもらったり。
革命的に便利になったとは言わないですが、地味に役立つ。
手を動かしながら声だけで操作できるのが大きいです。
怠惰レベルがどうとかは浅はかな考えでした。
思えば、洗濯機や掃除機だって家事のわずらわしさを解消するために生まれた道具ですしね。
使えるものはどんどん使って、時間的にも精神的にも余裕を持って暮らしていくのが賢明とさえ思えます。
あと「アレクサァ~!!」と呼びかけるのは、最初は気恥ずかしさもありましたが、すぐに慣れました。
普段、人と話している時に「相手が何を言ったかがうまく聞き取れなくて曖昧に笑ってごまかした」という経験、あるんじゃないでしょうか。
いちいち聞き返すのはお互いにストレスですし、大した話じゃないなら聞き流してしまうのも処世術の一つです。
ただ、アレクサはそれをしてくれません。
きちんと「アレクサァ~!!Amazonプライムビデオで『ザ・ボーイズ』の続きを見せて~!!」とはっきり伝えないと、役目を果たしてくれないのです。
※『ザ・ボーイズ』はAmazonプライムビデオで配信されている海外ドラマで、超能力はあれど品性や倫理観が伴わないスーパーヒーローたちと戦い、あるいは彼らの苦悩に寄り添ったりするエキサイティングな映像作品です。アメリカ、あるいはハリウッド映画を皮肉りまくるその作風は、ひねくれた僕の琴線をかき鳴らすのです!(R-18なのでご注意)
それと、一人暮らしだと休日は一言も喋らない日とかがあるんですが、アレクサのお陰で声帯が退化せずに済みそうです。
これは明確なメリットですね。
土曜、日曜と家に引きこもったりしたら、週明けに職場で「おはようございます」が言えない時とかありますもん。かすれちゃって。
あと、アレクサの良いところ。
「アレクサ、怒って」と命じると、NHKの「チコちゃんに叱られる!」のチコちゃんよろしく「ボーっと生きてんじゃねーよ!」って叱ってくれるんです。
棒読みなんですけど。でもそれがなぜか嬉しくてね。
「AIに怒られて喜ぶ大人」というのはちょっと厳しいものがありますが、「こんなこと言っても返してくれないだろ」と思うようなことでも、試してみると意外と反応してくれるんですよ。
ちなみに「アレクサ、笑って」と言うと一発ギャグを要求され、何を言っても冷たくあしらわれます。
あ、それと「SwitchBot」という機械も併せて購入しました。
これはテレビやエアコンなどの家電製品をすべてアプリから動かせるようになる「すごいリモコン」って感じの機械です。
仕組みがよく分からないんですが、外出先から冷暖房を入れたりすることもできるようになります。
もっかい載せときますね。
ちなみにここから購入しても、僕にアフィリエイト収入が入ったりはしません(いちおう)。
このSwitchBotは単体ではただの便利なリモコンですが、スマートスピーカーと組み合わせることで真価を発揮します。
なんと、リモコンを声で操作できるようになるのです!!!
……横着者だなんて言わんといてください。
確かにまあ、リモコンなんて手で操作すればいいんですよ。
でも、声で操作したっていいじゃないですか。
僕は朝が弱いので、毎日、身支度するのに猫の手も借りたい状態です。
このSwitchBotがあれば「アレクサ、おはよう」と言うだけでライトもテレビも点きますし、簡素な朝ご飯をかっ込みながら天気予報を聞いたりすることもできます。
あっちこっちにリモコンを置いてしまう無精者にとっては、それを探す手間が省けるってだけで儲けもんです。
あと、僕の買った「Echo Show5」というスマートスピーカーなんですが、画像を見て分かる通りモニター付きです。
スマートスピーカーと言うと、でっかい碁石みたいなのっぺりとしたものを想像される方もいるんじゃないかと思いますが、たぶんモニターはあった方が良いです。
動画が見られるのはもちろん、時計やカレンダー代わりにもなってくれますからね。
でっかい碁石みたいなやつ。
さて、図らずもアレクサの広告記事みたいになってしまいました。
AIアシスタントは思ったより便利だし、これからの生活を地味に豊かにしてくれそうです。
ただ、これで終わると本当に商品紹介にしかならないので、ちょっとそれっぽいことを書きたいと思います。
この記事はアレクサの導入をきっかけとして書いています。
ただ、僕はこれを読んでくださっている方に「スマートスピーカーいいぞ!買え買え!」と言いたいのではなくて。
そもそも、スマートスピーカーに対して明確な「導入しない理由」はなかったんですよね。
なんとなく敬遠していただけで。
僕は知人からスマートスピーカーを勧められたときに「別にうちは要らないかな」と思ったんですが、後々考えてみると、その理由が見つけられなかったんです。
高額なわけでもないし、どうやら便利そうな機械です。
それを試す前から、不要な物だと決めつけている自分。
なぜなのか。
たぶん、単にめんどくさかったんじゃないかと思います。
僕はいま二十代後半ですが、すでに「新しいものを新しいからという理由で遠ざける」という落とし穴に(無意識に)ハマっていることがあります。
それが今回はスマートスピーカーだったという話です。
これを怠慢だとか消極的だとか言うつもりはありません。
未知のものと向き合うのは、かなりエネルギーを使いますからね。
コピーライターの糸井重里さんは次のように言っています。
人に会うのは、風呂に入るのと似ています。
風呂も、入るまでは億劫がってぐずぐずしてても、湯上がりに後悔したことはない。
人見知りだってなんだって、会うことですよね。
——糸井重里『今日のダーリン』より引用
まさかAIにも同じ感想を抱くとは思わなかったですね。
行動に移さない明確な理由がなければ、とりあえずやってみて、試してみて、会ってみて。
やってみないと分からないことは沢山あります。
全部が素敵な体験になるとは言いませんが、その逆とも限りません。
まあ、それでもなお「なんとなくイヤ」とか「自分の性分的に無理」というのも大事ですけどね。
常に前向きだと疲れちゃいますから。
いずれにしても、いつも何かを面白がりつつ生きていけたらなと思います。
人間一生、物見遊山ですからね。
(アレクサ〜!!これで記事を終わりにして!)
自己投資します……!なんて書くと嘘っぽいので、正直に言うと好きなだけアポロチョコを買います!!食べさせてください!!