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【短編】星が欲しかった僕はキリンの夢を見る


四角い箱を見つけた。その中にはキリンがいた。小さいキリン。

体は小さいけれど首はうんと長かった。最初は僕の人差し指くらいの長さしかなかったけど、だんだんと首は伸びていった。

気がつくと部屋の天井にぶつかりそうになった。焦った僕は急いでキリンを部屋から連れ出す。

外に連れて行くとキリンの首はもっと伸びた。そのうち頭は雲に隠れて見えなくなった。

僕はその様子をずっと眺めていた。空には星が光っている。

ふと目を落とすと、キリンの首にハシゴがついているのが見えた。

これを登ったら星に手が届くかも知れない。そう思った僕は梯子を登って行くことにした。

少しずつ登って行く。やがて庭に生えた木がブロッコリーみたいになり、そして最後は見えなくなった。

星がどんどん近づいてくる。もしかしたら手が届くかも知れない。登り続ける。

途中、雲の海が見えた。雲の海には無数の光がいて、自由気ままに飛び回ってる。

雲海を横に僕はそのまま登り続ける。そしてキリンの頭が見えてきた。

キリンの頭にたどり着けば星はもうすぐそこ。手を伸ばさせば届く距離だ。僕はキリンのツノに捕まって必死に手を伸ばした。

するとキリンが話しかけてきた。

「星に触ったら夢は夢で無くなってしまう。夢は夢のままの方が幸せなんだよ。」

「でも、星はすぐそこなのに。」

「どうしようもなく手に入れたくなってもそれは君のエゴにすぎない。自分の枠から外れているから夢は夢であり続けられるんだ。」

「よくわかんないよ」

「言葉にしてはいけないことがあるのと一緒で現実にしてはいけないものがあるんだ。夢の枠組みの中に置いておくのがみんなの幸せなんだ」

まだ、よくわからなかったけど、キリンの話にはなんだか説得力があった。だけど、僕は我慢ができなかった。キリンの頭に体重をかけて少しだけ飛んだ。手が星に近づく。

その時

「だめっ!」

キリンは首を振った。僕はその反動で足を滑らせ真っ逆さまに落ちていった。

風を切る音が耳をつんざく。

◇◇◇

ハッと目覚めると耳元でお母さんが掃除機をかけていた。

「いつまで寝てるの。もうお昼になっちゃうよ」

夢だったのか。もし星に触っていたらどうなっていたのだろう。ふと手を見ると手に少しだけ砂がついてる。なんでだろう。

すると、足元からあの小さいキリンが歩いてきてこう言った。

「君は星に触れたんだ。君の夢は現実になった。今日からここが君の現実だよ。」

そうして僕は空に落ちた。
もう元には戻れない。

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