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【詩小説】故に言葉を包む

これをあなたに。そんな気持ちで綴っても、紙の上に現れるのは稚拙な文字の羅列。

結局は自分を納得させるために筆を握っている。見えているものを皮膚に刻み込むかのように。

そんなことを考えていたら、隣の部屋で壁に立てかけておいた本が倒れる音がした。

立てかけていたものがドミノのように倒れ、横たわっている。ちょうどいいからそれを横のまま積み上げた。その部屋の窓は空いていて、夜風が流れ込んでくる。

机に戻ると、嘘が紙の上に並んでいた。
新鮮な空気に頭が洗われたせいだ。自分の中身がよく見える。

洗っても取れない、生活の中でこびりついた習慣。
自分を大きく見せる孔雀のような虚勢。

せめて最後は綺麗に。これが最後の嘘。

「みんなくたばっちまえ」

積み上げた本の上に乗り、準備ができたら

それを蹴った。


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