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ゴールキーパー観戦術:2020 J2 第9節 栃木SC×アルビレックス新潟

Bright future for ALBIREXですよ!

この試合は、栃木のプレス&トランジションを俺イズムで攻略する新潟という非常に見応えのあるナイスゲーム。貴章も愛されていて気持ちのいい試合。

がしかし、この試合においてはゴールキーパー藤田について語らなくてはいけない。語らずにいられない。

ゴールキーパーの気持ちはゴールキーパーにしかわからないという言葉があるとおり、キーパーどころかサッカー経験すらない俺(草サッカー は現役15年目くらい)にキーパーのことを伝えることができるのかわかんないけど、手持ちの情報を少々整理してみる。

結果、ただのフットボールネーション紹介記事になってしまったというのは内緒だ。いや、どのキーパー本よりも説明しやすいんですよこれ。

ということで、フットボールネーションの9巻と10巻はアルベルトアルビ×キーパー藤田を楽しむための内容が盛りだくさんなので未読の方は是非。

ゴールキーパーのポジショニング

良いセービングは良いポジションから!ということで、まずはゴールキーパーのポジショニングについて確認してみよう。

キーパーのポジショニングについては『フットボールネーション(9)』を読むと分かり易い。というかキーパー本には漏れなく書いてあるはずの基本になるのでこの機会に覚えておく。

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ゴールキーパーポジショニングの基本である3つのゾーン。

プロなら当たり前のようにやっていることだが、少年サッカーや一般的な部活レベルだと全くできていない部分なのでパパコーチや顧問の先生は意識すると良いと思う。

各ゾーンでオフェンスがボールを持っている時、キーパーは基本ポジショニングを取っていればゼロステップまたはワンステップでシュートを防ぐことができる。ゾーン2についてはゾーン3とゾーン2の頂点を結んだ線で区切っている教本もあったりする。

ゾーン1は基本的にはステップ不要で立っているだけでシュートを捌ける。ゾーン2はボール保持者の利き足やシュートの質によってはステップが必要になるので集中が必要になる。ゾーン3は思い切りよくゴールエリアギリギリまで飛び出してシュートコースを限定させる必要がある。

という前提で藤田のスーパーセーブを改めて確認してみよう。シチュエーションはゾーン3。

ゴールエリアどころかペナルティエリアギリギリまで飛び出てるじゃん!勇気100%!

キックの弾道

今となってはいろんなところで紹介されてるし、自分も初見でいいね!したので今更語ることはないのだが改めて触れておく。この話は『フットボールネーション (10)』が分かり易い。

通称南米キックと呼ばれるサイドボレーパントキックなんだけど、藤田はこのキックの精度がメチャクチャ高い。少年サッカーのパパコーチはこの蹴り方を知っているだけで他の少年団に差をつけることができるので是非。

低くて速くて正確なキックを蹴ることにより、ヘッドで競って弾いてイーブンのセカンドボールを頑張って拾うという形ではなく前線一発でボールを納めるという形が作れるようになるし、ファビオみたいなデカくて強い選手なら無双できる。ちなみに競り合いは見ている以上に体力を削られるので、前線の体力を温存できるというメリットもあったりする。

で、最初はパントキックだけ上手いのかと思ったらセットしたゴールキックもとんでもないボールだったという驚愕の展開。サイボーグキッカー藤田は地道に練習したんだろうな。

状況判断

この試合で藤田が一番輝いていたのはこれ。読み物としては前述のフットボールネーション10巻を参照。

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今までの藤田はバックパスでボールを戻されたらおっかなびっくりにボールを扱っていたが、この試合ではサイドバックを上げて両センターバックが大きく開くことによりゾーン1にボールを配給していた。こういうのは小島もかなり上手いはず。

とはいえ、キーパーがボールを晒すのは猛烈プレスで奪われたら即失点なので自信がないとできないプレーとなる。ちなみに田上も最初は最終ラインでボールを受けるとおっかなびっくりだったけど、初ゴールを決めた試合で殻を破って最近は自信満々にプレーしてる。

なお補足。左センターバックが右利きだったりするとボールの供給場所に混乱が生じたり逆足で扱わなくちゃいけなくなったりしてスムーズにいかなくなるので田上ではなくゴメスが必要になるし、現代サッカーでは左利きの大型センターバックが希少性も相まって重宝されたりする。あれ?なんかそんなスペックのセンターバックがその昔...

この試合の藤田、的確な状況判断に基づいて配給方法(蹴るか投げるか、転がすか浮かせるか)を変えるということを徹底していたように見えたんだけど、もしかしたらエコノメソッド成果の可能性あり。正確に数えていないけど判断はプログラミングのごとくロジカルにやっていると思う。サイボーグキーパー藤田。

繰り返しになるけど藤田のスペシャリティはゾーン5やゾーン6への低弾道キック。このキックはヨーロッパトップリーグの試合なら誰もができるというものではないし、あそこまで蹴れるキーパーを日本の2部リーグで目撃できるとは思わなかった。僕らはある意味最先端を目撃していることになる。幸せだ!(奪わないでJ1)

おまけ(プレジャンプ)

フットボールネーションの10巻にはキーパーのプレジャンプについても触れられている。

以前ならプレジャンプする/しないは神学論争に発展する内容だったんだけど、VARやPK時のルール厳格化も相まってこれからはプレジャンプ不要論が主流になるのかな?ここらへんリアルな現場の話を聞いてみたい。

プレジャンプで地面を蹴る反動を使えるのはメリットとしてあるような気はするんだけどプレジャンプゼロというより小さなプレジャンプが良かったりするのかな?

こんなことを意識しながらキーパー観戦すると面白いですよ!


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。