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信じずにはいられない(オレンジブルーヒーロー):2024 J1 第14節 アルビレックス新潟×横浜Fマリノス

クラブの結果も内容もサポーターの感情もこれ以上落ちようがないところまで落ちていた俺たちの新潟。今節の相手はアジア王者へ王手を掛けているマリノスということで悲壮感を飛び越えて変な期待感を持たれていたようにも思うが結果は最高の勝ち点3となる。

そんな素晴らしい試合を記録しておきたい。スタメンは怪我人多数という状況の現有戦力で構築したものになる。デンは怪我からの復帰初戦で奥村は初スタメンでボランチの位置に入る。

新潟は秋山奥村がボランチの442でマリノスは喜田がアンカー、植中と渡辺皓太をインサイドハーフに置いた433のフォーメーションでスタート。

マリノスボールでキックオフ。後ろから丁寧に繋ぐマリノスと序盤プレスでボールを追いかける新潟。試合開始直後の攪拌作業。DAZNに映る藤原面構えが違う。

序盤5分ほどはマリノスに常時攻め込まれてコーナーキックも3本くらい与えてしまう。ヤンマテウスがいちいち質の高いキックを蹴り込んでくる。

前半3:30くらいからようやく新潟のターン。ゴールキックからのビルドアップはマリノスのマンツーマン配置でセンターバックもボランチもガッチリ捕まっているので俺たちのフィジカルこと長倉目掛けて小島が蹴るもトリッピングで倒されてしまう。その後は押し込んだ状態、マリノスによる自陣442ブロックにセットからのプレスに対してボールを動かしながら決定機を狙う。

新潟は押し込むと中央の長倉目掛けて浮き玉蹴って収めてもらうを遂行する。長倉が全部収めきれるわけもないので相手陣内でセカンドボールを回収したい新潟となるし、良い時の新潟はセカンドボールの回収頻度がべらぼうに高いのである。そんなセカンドボールを巡るポイントに現れるのは奥村仁である。

今シーズンから加入した大卒ルーキーはオレンジブルーの30番を身に纏っており、神戸戦ではその攻撃センスを十分に発揮した奥村。神戸戦では守備は見ないことにしておこうなどと思っていたが、セカンドボールの回収役として良い仕事をしてくれた。長倉が弾いて奥村が回収するというのは非常に良い形だし、相手陣内でセカンドボールを回収したら恐れずにガンガン前に仕掛ける奥村が頼もしい。

前半4:40のシーン。セカンドボール回収マシーンの奥村が回収しきれない隙をついて井上健太が後ろからボールをハントする。マイケルもドリブルで躱されてしまい、高めに設定していた新潟の最終ラインを突破されて小島とタイマン勝負かと思われたがデンがうまく進行を遅らせる。が、後ろからアンデルソンロペスが中央レーンを駆け上がってきており井上は「あとは頼みましたよ」と言わんばかりにマイナスのボールを供給してミドルズドンの2秒前を覚悟したら星が猛スピードで戻ってきてアンロペをビックリさせる。この星の行動によるコンマ秒の対応遅れで新潟はペナルティエリア内に帰陣することができたのでゴール絶対死守というオレンジブルーの壁を形成する。ヤンマテウスがとりあえず振っとけ!みたいなシュートを放つが入るわけもなくボールはピッチの外に跳ね返っってターンエンド。星の素晴らしい守備対応だったし、良い時の新潟は間違いなく守備が良いのである。

試合開始から5分ほど経ち試合も落ち着く時間帯となる。新潟は小島にボールを預けて新潟式ビルドアップを遂行するがマリノスの守備はポゼッション型チームへのメタとして世界中でメタられているマンツーマンプレスである。両センターバックとボランチにベッタリとマンマークしてパスコースを塞いでロングボールを蹴るという選択肢しか取れない状況を作ってからのセカンドボール回収である。蹴飛ばさずに無理矢理繋ごうとするポゼッションから高い位置でボールを奪えれば即決定機という非常に合理的な対ポゼッション守備である。当然のようにしゃーないから蹴るか、という感じで蹴る小島なのだが新潟には小島というスペシャルなキーパーがいることをマリノスは甘く見ていたのかもしれない。小島の左足から繰り出される低くて速いキックは高い位置から落ちてくる孝司にピタリと合う形で飛んでいく。偽9番をスタイルしている孝司のことはマリノスもインプット済みであり、落ちる孝司を追いかけてセンターバックの上島がセンターサークル付近まで追いかけてくる。最終的には上島が孝司を倒してファウルとなるが、新潟としてはワンプレイで一気に相手陣内までボールを運んでマイボールにした訳なのでメタのメタをやったということになる。誇らしい。

どうでもいいかもしれないが上島の筋肉が凄すぎるしこの試合のパフォーマンスも凄かった。上島の名前でググると筋肉というキーワードがサジェストされるのがツボ。柏の育成出身でグラビアアイドルの奥さんがいる27歳か。これは良い筋肉型センターバック。

この日の新潟の守備は基本どおりの442ゾーンプレス。マリノスが最終ラインでボールを持ったら孝司長倉と2列目の誰かが連動してボールを外に誘導してプレーエリアをタッチライン際に限定させる。前半7:50や前半11:30からのシーンなどは非常に地味だがこのゾーンプレスが機能したものだった。この形からマリノスの選択肢を限定させてピンポイントで奪ったりそのままハントしたりミス待ちをしたりという守備になる。

新潟のゾーンプレスに嵌まらないようにボールをキーパーまで逃すマリノスだが、その先のメタも用意していた新潟が誇らしい。マリノスがキーパーまでボールを戻したら両センターバックのパスコースを消す形で孝司長倉がマンツーマンで張り付き、アンカーの喜田には奥村がマークに付く。センターバックやボランチにボールが出れば奪いにいくし、そこにボールを出す度胸もないということで右サイド深い位置に高くて大きなキックを蹴り出すマリノスキーパーの白坂だが、小島のようにコントロールされたキックではないので星が悠々と弾き返す。その後のセカンドボール回収バトルにおいても絶対に負けられない強い気持ちで挑む俺たちの新潟。442ゾーンプレスに加えてマリノスのやっている守備も当たり前にこなす俺たちの新潟。

前半8:40のシーン。なんでもできる奥村というわけではない奥村の守備の拙さからサイドを渡辺浩太に振り切られてフリーなクロスを上げられてしまうが残念そこは面構えが違う藤原奏哉ということでクリアする。セカンドボール回収のタスクに集中していたせいだとは思うが、奥村はとにかくオフザボールの動きをする相手を見失うことが多かった。奥村、まずは持ち前の攻撃力を極限まで研ぎ澄ましてほしい。俺たちは待ち続けているからな!

その後も相変わらず前プレマンツーマンを仕掛けてくるマリノスだが、自慢のパス回しと小島の絶品ロブのコンボで途中引っ掛けられながらもセカンドボールを当たり前のように回収して前進する俺たちの新潟。ボールの出先に対して無理やり奪おうとしてファウルになるマリノス。ずっと新潟のターンという強い時の新潟の流れを掴んできた前半序盤となる。ファウルを受けるのはボールの引き出し役としての奥村。攻撃的なタスクならなんでもできそうな奥村が全新潟の心を掴んで離さない。

前半10:10のシーン。高精度キックを蹴れるのは小島だけじゃないと言わんばかりに自陣に引き込んだマリノス守備の裏を走り抜ける巧へ目掛けて秋山が裏ポンのフィードを供給する。越後の槍は真っ直ぐにピッチを縦に走ってボールを収めようとするもスカウティングどおりですよ!という感じで巧のそばから離れていなかった加藤聖に追いつかれてしまう。巧と秋山のタイミングのコンマ秒の世界でチャンスクリエイトとはならなかったが、その効果は十分に示したナイスプレイ。多彩な攻撃を仕掛けることができる俺たちの新潟。

新潟は相手陣内に押し込むと全員で攻撃を仕掛けるスタンスを明示する。前半12:15のシーンではボール回しの流れからデンがアタッキングサード付近まで上がってボールを受けて長倉に楔を打っていたりする。いくらなんでも攻撃的すぎるだろと思うものの、この人数を掛けた攻撃は結果としてセカンドボールの回収にも繋がるのでゴール前で絶対に決め切るという強い気持ちを感じた。カウンター被弾しそうならススーッっと下がって最終ラインにセットするデンが偉い。

前半13:00のシーン。ビルドアップの流れから小島の絶品ロブが左サイドタッチライン側に飛んでいくと小見が胸トラップからのちょん蹴りでターンして守備を華麗に躱すと目の前には膨大なスペースが広がっていたのだがちょん蹴りが強すぎて上島の筋肉にクリアされてしまう。それでも新潟のターンが続くので良いのだが、ここで小さなタッチでコントロールできていたら凄いことが起きていたんじゃないかというタラレバの世界を妄想せずにはいられないプレイだった。その直後にはサイド密集の狭いスペースで三人目の動きでボールを受けた小見が細かいタッチのドリブルで中央を目指してゴール前でファウルをもらう。素早リスタートを試みるが審判に止められてしまう小見。今日は良い仕事をしている小見。その後のフリーキックを秋山が蹴ると巧の頭をかすめるもののボールは枠の外。デンやマイケルも詰めていたけど惜しい!サムズアップで秋山に送る巧。

その後、マリノスから絵に描いたようなカウンターを浴びてしまう。小見はキーパー白坂の前でウロチョロしてボールを遅らせ植中を潰そうとするもドリブルで躱されてヤンマテウスにラストパスを供給されて盤面としては藤原と星しか残っていない絶望的な状況だったが残念そこは藤原奏哉がシャットアウトする。偉大すぎる。

なお、これだけヒヤヒヤしたシーンの直後においてもマリノスのマンマーク相手に堂々とボランチ目掛けてパスを供給する新潟のビルドアップは本当に凄い。中央ボランチからフリーのサイドへ滑らかに繋がるボールが本当に美しい。

なお、小見と言えばフリーロール。勝手にコミロールと呼んでいるがSNSなんかでとにかく評判の悪い小見のフリーロール。「これが今年の新潟のスタイルだ!」と開幕直後に断言してしまった俺がいる。

開幕序盤以降、試合結果に対するフラストレーションがサポーターの中に溜まりに溜まりまくってその捌け口のひとつに小見のフリーロールが大きなトピックとして飛び交うことになった。小見も俺も辛いし良い結果が出なかったから当然でもある。小見はU-23代表でも普通にフリーロールしていたので新潟の戦術というよりは小見の個人戦術であることは間違いなさそう。そんなフリーロールがこの試合では久しぶりに機能した。機能したというよりは頻度控えめでフリーロールする時には仕事をしてくるという結果になった。小見はこの調子で頑張ってほしい。

前半16:40にアクシデントが発生。秋山のゴール前をターゲットにしたフィード目掛けて右サイドから飛び込んでくるのは巧。位置もタイミングもピッタリあっていたが巧が走るのをやめてしまう。ハムストリングを押さえて座り込んでしまう巧は完全に立ち上がることができず負傷交代。巧本人もこの試合に掛けるものは大きかっただろう。顔を覆いタンカに乗ってピッチを出ることになったしまう。巧の交代として谷口が入る。谷口が左サイドで小見が右サイドに回る布陣となる。

交代で入ったこの日の谷口。タスクとしては左サイド突破マンである。前半20:35のシーンでは自陣深い位置から繰り出される秋山のサイドチェンジを受けてドリブルでアタッキングサードまで持ち運ぶ。新潟は押し込んだ状態を維持してゴールを伺う。この状況を作るのが谷口の大きなタスクのひとつだった。前半30:30には思い切りの良い海キャノンをブッパする。

右サイドに突然回された小見、戸惑ってしまったのか直後に守備の感覚がフィットしないうちにサイドを空けてしまいマリノスの左サイド加藤聖へ余裕でボールを通されて突破されてしまう。前節浦和戦の松田を思い出す光景だが、ピッチの上の11人が守備の目的と手段を共通認識として持つというのは本当に大変なことなんだなと感じたシーンでもあった。これは小見だけではなくチーム全体が突然の変更にフワフワしていていろんなところでここまで通させていなかったパスを簡単に通されてしまうことになる。加藤聖もそれを察知したのか大外でスタンバイする頻度が高くなったように思う。前半21:35にはビルドアップの出口としての右サイド大外でボールを受けるシーンがあったものの、動き出しが遅れてあっさりインターセプトされたりもしている。こういったところは本当に入るのが難しいんだと思うんだが与えられた仕事をとにかく頑張ってほしい。

そんな不安定な時間帯で先制点を奪われてしまう。アタッキングサードに押し込んでからの見事なゴール。ACLに続いてこの渡辺皓太が凄い!2024というゴールなのだがそもそもビルドアップ失敗からのボールロストさえなければ起きなかった話と言えばそれまででもある。

そんな状況でも気持ちが折れないのはこの日の新潟である。全員面構えが違うということで秋山がミドルをブッパする。これは結構惜しかった。

が、なんだかんだで小見の守備がフワフワしていてアンカーにボールが入るとか入りそうになるとサイドを空けてしまい加藤聖と井上健太の基本に忠実な5レーンアタックに翻弄されてしまう。小見の攻撃に関しては右ハーフスペースで楔のパスを受けて展開するとかゴリゴリとゴール前中央でボールを失わずに掻き回すのとかは前半34:20の中央裏抜けとかは非常に良い感じだったので慣れない逆サイドの守備も頑張れ。試合終了直前の決定機は決まらなかったけど本当に良かった。

先制点を奪ったマリノスは気が緩んだのか新潟の前進を簡単に許してくれるようになる。デンやマイケルや落ちて受ける長倉らに中央をドリブルでスルスルと運ばせてくれる。この日の長倉、本当に良く落ちて受けるというレベルではないくらい深い位置まで降りて受けてキープして捌いていた。加えて前線でのポストプレイやゲットゴールも狙うという怪物ぶり。この一連の動きが走行距離12kmオーバーというスタッツに現れているんだろうし、それを試合終了まで質を落とさなかった長倉のフィジカルが偉大すぎる。ちっちゃい頃から体力測定でずっと一番だったに違いない。

押し込み続ける新潟は前半32:00に秋山のフリーキックからチャンスメイクするだけではなく、アタッキングサードに押し込んだ状態でボールを奪い切る姿勢を強める前半33:50にはファウルになったもののマイケルがアタッキングサードまで飛び出してボールを奪い切る熱い気持ちを見せてくれた。

前半35:00のシーン。小見と藤原の基本に忠実な5レーンアタックでによるボールの出口は奥村。奥村がサイドでボールを持つとマンマークの対象としてひっついてくるのは渡辺皓太。渡辺皓太と対峙した奥村は判断させる時間を与えないままカットインで切り込んで後ろから中央に走り込んでくる小見に左足でラストパスを出すもののタイミングが少々合わず。タラレバ決定機。その後もコミロールでゴリゴリと中央ドリブル突破してからの孝司が右足を振り抜くシュートでゴールを狙うがキーパー白坂がナイスセーブ。

奥村は前半39:40にも圧巻のプレーを見せる。左サイド大外でボールを持つとターンしてからドリブルスタート。寄せに来る守備を細かいタッチで交わしながら中央に切り込んでいって左ペナ角から思い切りの良い右足ブッパ。シュートは守備に当たってディフレクションとなり枠を外れたが全ての新潟サポーターが至恩と三戸のプレイを重ねたに違いないだろう。オレンジブルーヒーローの系譜であることを示した奥村を愛さずにはいられない。その後もゴール前波状攻撃のトリガーとなるラストパスを繰り出したり自らミドルブッパしたりと奥村の輝きが止まらない。止まらない波状攻撃に「マジやべーよコイツら!」という表情を隠せないキーパー白坂。

前半終了間際の44:50にマリノスのカウンター&波状攻撃で最後はヤンマテウスにゴールを割られてしまうがVARチェックからのOFRで結果は秋山が引っ張られて倒されたポイントがオフサイドの判定に。秋山はOFRの結果に対して「あれだけ悪意のある引っ張り方なんだからオフサイドじゃなくてファウル+イエローだろ!」と抗議していたように見える。秋山のキャプテンシーが偉い。その後も残り時間で一発決めてやる!と全員がギラギラしながら秋山のミドルブッパ&加藤聖どつき倒しで前半終了。

スコア上は負けているが内容は全く負けていないというかむしろ勝っている俺たちの新潟という前半だった。

後半、新潟ボールでキックオフ。大事に繋ぐ新潟と忘れていたマンツープレスを思い出しつつあるマリノスという構図に。星がビルドアップ時、嫌がらせのように左サイド大外に張っているのが違いになるだろうか。

後半に入っても奥村の輝きは止まらない。48:15のシーンではマイケルから中央への斜めパスを一発でハントしにくる渡辺皓太をターンで躱すと中央レーンでドリブルをスタートさせる奥村。まずい状況を察知したアンロペが後ろからしばき倒して止めることになる。イエローでないのかよ!と言いたくなるファウルだったがJ屈指のボランチである渡辺皓太をあっさり躱したターンをみた全ての新潟サポは高木と涼太郎の姿を重ねたに違いない。完全にオレンジブルーヒーローの系譜である。その後もアタッキングサードにおける波状攻撃のキーマンとして輝く奥村。スカウトとしての本間勲が優秀すぎて怖い。

同点ゴール直前の新潟の攻撃。奥村がピッチ中央でタクトを振るい、トライアングルの一角として大外にスタンバイしている星にボールを預けると最終ラインから内→外のダイアゴナルランで裏抜けするのは谷口。抜け出した谷口が最深部からグラウンダーのマイナスクロスを蹴り込むとペナルティエリア内に走り込んでいるのはデン。センターバックのデンがビルドアップの流れからこのタイミングでこの場所に走り込んでゴールを狙うという俺たちの新潟式フットボール。攻撃的すぎるにもほどがあるのだが谷口の裏抜けがオフサイドの判定に。惜しい!

そして生まれた同点ゴール。集中力を切らさず守備を続けた結果の素晴らしいゴールである。

ビルドアップのミスを見逃さずに状況が発生したらいつでもピンポイントで狙うという集中を持ち続けていた孝司とキーパーに弾かれても叩き込んでやるというポジショニングをする長倉。マリノスが新潟に対してやりたかったことの全てをやってのけたスーパープレイ。ビッグスワンに新たに装備されたLED照明の演出が眩しい!俺たちの新潟が強い!スタジアム総立ちだ!

同点に追いついた新潟はさらに攻撃的になり、その熱量にあてられたマリノスも攻撃的になる。攻撃×攻撃が加速すればカウンターの撃ち合いになるのは必然となり、その終止符を新潟が打つ。同点ゴールから僅か2分19秒後の衝撃。

マリノスの力強い攻撃を防いだ新潟は小島がボールを確保してからデンに預ける。アンロペが小島に当たりにいっていることもあり新潟の両センターバックにプレスが掛かっていないことを目視してからデンに預ける。プレスがなければデンは容易に運べるのでスルスルと持ち上がりセンターサークルへ落ちてきている孝司へボールを供給する。この時の孝司の役割としてはオフ・ザ・ボールで守備を釣って後ろから上がってくる奥村に持ってもらうとうものだったのかもしれない。結果として孝司と奥村が被ってしまい孝司がボールを持ってそのまま前進して最終ラインの裏を通すスルーパス目掛けてダイアゴナルに走り込んでくるのは谷口。ボールを受けたあとのキーパーとの駆け引きをニアぶち抜きという形で完勝して雄叫びをあげながら白鳥のエンブレムを叩く。とんでもない熱量が溢れている熱狂のビッグスワン。

これはゲットゴールに至るオフ・ザ・ボールのお手本みたいなプレイな訳だが、まず守備は長倉を視界に入れておかなくちゃいけないけど大外を走ってる小見が内側にダイアゴナルしてくるのも潰さなきゃいけない。この状況で左サイドを走る谷口は誰も視界に収められていないという状況を作ることに成功している。そもそも喜田が孝司に股抜きで躱されるなんて想定外なんだろうが、そうなった時点で残っているのは最終ラインの4人だけである。

孝司が右寄りにドリブルを仕掛けるので守備の目線は小見方向に向いているし、實藤も小見サイドを切りつつ孝司をブロックする対人守備をしておけば問題なしと思ったのだろう。長倉にボールが入ったところで上島の筋肉が全てを解決してくれるという信頼もあったと思う。しかしながら結果はまさかの左サイドへスルーパス。松原は孝司のキックを目視できているので左サイドへの可能性は予見できていたかもしれないが、それを上回る孝司のキックが飛んできて松原の足では追いつけない。そして谷口の左足ニアぶち抜き。豪快爽快なテクニカルシュート。全ての新潟サポーターのテンションもぶち抜かれたスーペルゴラッソ。

逆転したとはいえ試合終了まではアディショナルタイムを含めて40分くらい残っている。マリノスは当然攻めてくるし新潟も引く気はない。とんでもない熱量を持った試合の結末としてこのまま40分が経過してくれと全ての新潟関係者が考えていたことだろう。攻める守る攻める守るを繰り返して途中交代で入ってきた稲村のとんでもないサイドチェンジに目ん玉飛び出たり孝司OUTの史哉INで星がボランチに動いた結果の玉突きとして奥村が一列上がったりしながら勝利へのカウントダウンを始めようかと思った後半81:50。

相手陣内深い位置からのスローインを藤原がゴールライン目一杯まであがっている小見に投げ込む。小見はそのまま藤原にリターンすると藤原はダイレクトで軽いタッチのロブをペナルティエリア内に蹴り込む。ペナルティエリアの誰もいないスペースに転がるボールだが、そこに走り込んでくるオレンジブルーの30番。慌てて潰しにくる榊原を股抜きドリブルで躱して左足を振るとボールはクロスバーの下を叩いたあとにゴールライン奥の芝生も強く叩く。このゴールのために準備されていたんじゃないかとすら思ってしまうビッグスワンのLEDが煌びやかに5月の夜を照らす。

ビッグスワンのLED照明が輝く時、毎年やってくるJリーグの日を迎える度に、オレンジブルーヒーローの奥村仁が誕生した試合を新潟サポーターは思い出すことになる。

アルビレックス新潟というクラブを信じずにはいられない。

試合雑感

試合のことは本文に全部書いてしまったので書くことはないのだが、この試合を観ていたときの感情を原文のまま残しておきたい。

以下はオープンチャットに試合観ながら書いたもの。

奥村スタメンで秋山とのボランチ無双に期待でしょう。間違いなく秋山が後ろで奥村が前になるでしょうから円滑なビルドアップからの奥村ラストパスに期待です。

巧の縦爆走クロスからの長倉も楽しみですが注目すべきは守備戦術です。前節は正直訳のわからないことになっていましたので今日は基本に忠実にやるのかをまずはチェックします。サイド守備が肝になりますので巧と小見は集中力が要求されます。

初めに失点シーンですが、これはマリノスの質が高かっただけなので新潟がどうこうという話ではありません。渡辺皓太が見るたびにスーパーなフットボーラーになっています。

新潟の守備は外誘導の442プレスで素晴らしいとは言いませんが全員が今までと違う面構えでタスクをこなしていました。が、失点後は元気がなくなったようですし巧アウトのあとに右に入った小見は前節の松田と同じやらかし守備をやってしまいヒヤヒヤしています。サイドを離して中にプレス行くとマリノスなら一発でサイドに通してきます。

その小見ですがとにかく評判の悪いフリーロールは控えめというか中央に行く時には何か仕事してくるので今日は機能しているフリーロールでしょう。ゴールが生まれてもおかしくない小見でした。

攻撃では落ちる役割は長倉ですね。かなり深い位置まで降りてきます。キープできるからということでしょうか。

そして奥村。これは今の新潟の光でしょう。至恩と涼太郎が転生しています。転生してチートで無双して伝説になってもらいましょう。渡辺皓太や植中の落ちる動きにホイホイ釣られて裏を取られてしまうのは見ないことにしましょう。

マリノスの守備は前プレマンツーが基本ですね。新潟なら普通に外せるプレスですので慌てずに自分達の積み重ねてきたものに自信を持てば良いだけです。

巧の負傷というアクシデントはありましたが試合内容としては十分に逆転できます。

行ってもらいましょう!

素晴らしい熱量、素晴らしい展開、素晴らしい結果。

ディス・イズ・アルビレックス!

スタジアムの帰路で居酒屋でおうちでインターネットで、31回目のJリーグの日に観た全てを思う存分語り合ってください。

アイシテルニイガタ!

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。