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前を向け!!奥村仁:2024 J1 第12節 ヴィッセル神戸×アルビレックス新潟

前半と後半で別のチームになっていたかのような俺たちの新潟。前半が後半と同じパフォーマンスなら勝てたんじゃね?というのは松橋監督が一番感じていることだろう。火傷してから強くなる俺たちの新潟。

結果はターンオーバーしている神戸相手に敗戦だったわけだが、この日に新潟サポの心を掴んだルーキー奥村について記録しておこうと思う。新潟サポがドン引きするくらいに怒鳴られていたけど奥村仁、元気です♪

奥村の特徴としてはゴール前の狭い場所で前を向いてボールを持てるところになる。パスにも特徴があるはずとは思うのだがボールの受け方が抜群にうまいのでプロットを確認してみよう。出場は後半64分から。

後半64分からの出場にしてはボールタッチが多くピッチ全体を動き回っている。パスは無難なものが多くドリブルはボールを前に運ぶものとなっている。

まずはファーストタッチ。高い位置から降りてきてボランチの位置でマイケルからボールを預かって秋山とパス交換しながら前進する… と思ったら奥山は前に行きたい、秋山はパス交換しながら後ろに留めて守備を引き込みたい、というお互いの思惑が一致せずにゴール前のめっちゃ高い位置中央でボールを奪われてカウンター被弾。ワチャワチャしたあとに最後は鍬先にナイスミドルを撃たれるというシーンだったこともあり秋山の怒りゲージを溜めてしまう。その後の数分間は動き回ってボールを引き出そうとするも味方からパスが出てこない奥村。がんばれ。

66:45のシーン。ビルドアップの流れから中盤の底でボールを預かった奥村。今度は間違わないぞ!秋山先輩は後ろでボールを持って俯瞰したいんだな!と思ったかどうかは知らないが秋山の方向へパスを出すと秋山は前に走り出してしまい再び噛み合わない。当然のように自陣であっさりボールを失ってしまう。この時、右サイド大外にはハセモが超ドフリーでスタンバイしていたので新潟の得意技のひとつであるサイドチェンジを通せば神戸の守備を左右に揺さぶりつつ縦に運べるという絶好のシーンだったのだが、どうしてそうなった感が半端ない。奥村には別の世界が見えていたのかもしれない。

67:25のシーン。インサイドハーフの位置から降りてきてボールを引き出す奥村。特徴を活かして前を向くかと思ったが後ろからプレッシャーを掛けている守備を感じ取ったのか90度だけターンして遠藤にボールを戻す。元気出していこう。

67:40のシーン。センターサークル前方でボールを受けると思い切り良く弧を描くドリブルでサイドに運ぶ奥村。サイドを上がってくる星とのボール交換で左サイド大外でボールを持つ奥村。慌てずにゆるゆると動いてハーフスペースに入ってきた星を経由してボールを持つのは秋山。星が動いて空いたハーフスペースに大外からスライドして入る奥村とそこに合わせてスマートな縦パスを通す秋山。今度こそ期待に応えますよ秋山先輩!と言わんばかりに得意のコントロールオリエンタードで前を向いて守備を剥がしてドリブリし、大外のハセモにボールを預ける。その後も星とのパス交換からゴールラインまで切り込んで上げたクロスは守備に当たってコーナーキックをゲットする。奥村の良さが出た一連のプレイ。高徳も怒鳴る。

70:40のシーンは奥村の輝きの片鱗が見えたプレイとなる。アタッキングサードで長倉から落とされたボールを受けると思わせてからのモドリッチっぽいボディフェイントで前を向いてゴール前中央に向かってドリブルスタート。左サイドペナ角には星がフリーでスタンバイしているが神戸の守備が3人でパスコースとシュートコースを封じている。それでもドリブルを止めずに守備との距離を縮め、守備がアタックしてきたタイミングを見計らって星を狙って狭いコースにパスを通すもタイミングが合わずにラインを割ってしまう。タラレバでしかないがタイミングが合って星がレシーブできればキーパーと最終ラインの間の距離がかなり広がっていたし中央には長倉が鎮座していたのでゴール期待値爆上がりというシーンだった。秋山の怒りゲージを溜めてから6分ほどでこういったプレイを連発するようになりエンジンが温まってきた奥村。

71:50のシーン。中央でボールをもらってドリブルで前進して大外のハセモにボールを預けると左大外目掛けてダイアゴナルランする奥村。ハセモからボールをもらうぜ!という雰囲気を出して神戸の守備を動かすと同時にハセモはドリブルで中央へ切り込んでいく。シンプルなオフ・ザ・ボールでチームに貢献しようとする奥村。本当はボールが欲しかっただけかもしれない。

74:45からのシーン。左ハーフスペースで当たり前のように前を向いてボールを受けると守備が寄せてこないうちに中央へ向かって動き、ダニーロへ斜めのボールを供給する。ダニーロがボールキープで守備を引き寄せることで空いた中央のスペースに奥村はスルスルと走り込んでボールを受け取りサイドに素早く展開して押し込みながら最後はコーナーキックをゲットする。高い位置で緩急をつけることができる奥村は今までの新潟にはいないタイプなんじゃないだろうか。ゴール前で火力が出せない新潟は緩急という武器で火力を補完できるようになったりするのかもしれないし、そのキーマンが奥村になる可能性は十分にありそう。事実、この時にゲットしたコーナーキックで遠藤のメンタル超回復ゴールが生まれていたりする。

77:35のシーン。左サイド大外でボールを受けるとペナ角へ向かって緩くドリブルする奥村は守備2人に囲まれる。ボールを跨いで突破と見せかけてから斜め後ろにフリーでスタンバイしているダニーロへボールを預けて自分はペナルティエリア内に突撃する。神戸の守備もアラート!ということで素早く壁を作るのでゴールの匂いは感じなかったが、なんとなく至恩を思い出すプレイを披露する奥村。このあたりが新潟サポにウケの良い要素なんだと思う。

奥村の適正としてはトップ下かインサイドハーフかな?という印象。そこから落ちて受けて展開というのがパフォーマンス出そうな感じ。守備は現時点で期待できるものは何もないので高い位置で攻撃的に振る舞うというのが良いような気がする。パスに関しては片鱗を見せただけで何も結果が出ていないので今後はどんなラストパスを繰り出してくるのかにも注目したい。

守備度外視で秋山アンカーの奥村+他のアタッカーという433のロマンを見たい気もするが守備度外視すぎて実現することはないだろう。ぼくのかんがえたさいきょうのアルビレックス。

奥村がこの先どんなふうに進化していくのか期待せずにはいられない。

試合雑感

フィジカルなサッカーをしてくる神戸に対して遠藤は自信を持ってエアバトルに挑んでほしい。前節はスクランブルではあったものの地上戦はできていたので今日はエアバトルに負けなければ大きな経験値を得ることができるはず。遠藤稲村時代が来るのを楽しみにしている。

そんな期待を込めて観た神戸戦なのだが、なんとも評価が難しい試合となってしまった。勝ち点を取れなかったという意味ではダメな試合だったのだろう。

とりあえず前半のことは忘れてと言いたいところだがそうもいかない。新潟が狙っていたのはプレスでパスコースを塞いで大迫がピッチ上に不在の神戸に蹴らせて回収だったのだろうか。それ自体はそこそこ狙い通りできていたとは思うのだがビルドアップが全く噛み合わない。

噛み合わないとはいえ、札幌戦のようなビルドアップを意図していないという状況ではなく狙いはあるんだけど質が伴っていないという状態になってしまっていた。とにかく三人目が全く繋がらない。

そんな状態でサクサクっと2失点した後に秋山を中心にしてビルドアップのやり方をあれこれ数パターン試しているうちにリズムを掴んでやっとボールが繋がるようになった。3人目を使うと見せかけて敢えて使わないみたい、新潟はどうせそれでしょ?とバレているからこそな駆け引きもやっていた場面もあった。こういう駆け引きは今後も楽しみなのだがやれるんなら最初からやっとけよ!というのは多くの新潟サポが思ったことだろう。

藤原のゴールは素晴らしかった。DAZNだと画面が切れてて藤原が突然現れてきたのだがスタジアムで観ている人は一番後ろから中央に全力疾走してくる藤原を目撃できたはず。フジワラロール完全版。

遠藤のゴールはメッチャ気持ち入っていたんだがオウンゴールのシーンの直前は遠藤スタイルの後ろからガツンとアタックをターンで華麗に躱されてゴールを晒した直後だったので磐田戦と同じメンタルなんだろうな、なんて思ってたら諦めない強い気持ちのゴールだったので遠藤のメンタルは正直良くわからない。筋肉と同じ仕組みの超回復でメンタルも超回復して鋼のメンタルを装備してほしい。

長倉のゴールは長倉らしさ爆発ではあったもののオフサイド。絶対に決まったと思ったんだけどリプレイ見れば確かに孝司がオフサイド。見逃してくれよ!

そして今日の目玉の奥村は特徴が良く出ていた。中央の狭いスペースで前を向けるのが特徴になる。受け方とボールコントロールが抜群で全盛期の香川を思い出す。キックの種類も豊富なので後ろの秋山と前の奥村で中央守備を蹂躙する日がそのうち来るんじゃないだろうか。

なんだかんだで結構語れるものが多い試合だったので、なんだかんだで良い試合だったんだろうか。

高木はハムストリングのようなので軽傷であることを祈るのだが、選手が出れないと他の選手に負担が掛かって結局壊れるという悪循環。フィジカルコーチも大変だ。

試合後の松橋監督のコメントが結構厳しいものだったんだけど勝ち点という結果がついてこなければ当然なんだろう。新潟サポも納得の不機嫌ぶり。

そして今日も小島神でした。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。