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『Live in Switzerland』

2020年5月8日、コロナ自粛期間中のFacebook投稿より(2020年10月加筆修正済み)

本日の振り返り鑑賞は、Enrico Pieranunzi 『Live In Switzerland』。

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こちらも昨日と同じyvpの作品ですが、yvp作品群の中では後ろの方、2000年のソロのライブ盤です。
これはソロ作品の中では圧倒的に聴いたアルバムの一枚なんですが、あれだけ聴いたのに、10年以上ぶりに聴きました。
古いファンじゃないとyvpの作品はあまり聴いていないかもしれません。私の実感ですが、それよりはモリコーネ作品集以降のロマンチックな作品群や、EGEAなどのものが人気で、yvpのものが好きという人にあまり会ったことがないです。古いファンは別ですよ。
yvpの作品群は、美しいコンポジションよりはインプロヴィゼーションが多いので、とっつきにくいこともありますが、おそらく理由の一つとして、『vol.1』の記事で書いた音質の問題もあると思います。全体的に硬質で硬くセパレートな音作りのために、少し排他的なサウンドがする面があります。2000年代以降のロマンチックなエンリコから聴きだした人には、ちょっとキツい馴染みのない音に聴こえるかもしれませんし、音楽への没入しにくさはあると思います。
このソロのライブ盤は、その排他的な硬質さが非常に良く合っている名盤です。少しでもエンリコ好きって言っていてこれを聴いていないのは非常に勿体無いので、聴いていない人はぜひ聴いてください。私が普段のライブで譜面見ずパッと弾き始める曲が全部入ってますが、こちらが本物です。御本尊です。ほんと死ぬほど聴きました。一曲目のインプロヴィゼーションだけで名盤確定です。
先日の自分の配信ライブで「Don’t forget the poet」も弾きましたが、今日久々に聴いたら確か最初の入り口が同じようなことしてしまっていて、刷り込みって怖いなと思いました。本当に更地で演奏できるのはいつの日になるんでしょうね。
このアルバム、ダンパーペダルの音だけじゃなくて、めちゃめちゃピアノのアクションの音がゴツゴツ入っているんですが、どういうマイキングをしているのか、ハンマーの近くで一発マイクがあるのか、ピアノの下にもマイク入れてるとかかな? 音も、右に高音、左に低音をパンしてますし、ちょっと独特の質感です。私はこれはこれで作品として大好きです。
「Adjapi」が意外とこのテイクは重量級で、ちょっとラッシュしている感じとか、エモーションがかなり前に出ていてとても良いです。クロマチックで何と無く降りてくるフレーズとか、普通ライブで共演者にやられたら腹立つはずなんですが、このテイクのはなんて情感的なんでしょうね。タッチかな、先が見えてるからですよね。この曲はこのテイク以外にはEGEAの『Con infinite voci』というアルバムでもやっていますが、こちらはファツィオリで穏やかなスタジオ録音。このスイスのライブは、スタインウェイの音だと思います。随分印象が違います。
「Con infinite voci」という曲もこちらのライブ盤で演奏してますが、この入り口のG#の音の連打を聴いてもらったら、これがアクションの音です。普通こんなに音入りません。結構弦のビビリノイズも乗っていますが、この感じがなんだかエモーショナルで良いんですよ。全て完璧なEGEA盤だったら、こんなこと絶対起こらないです。yvpありがとう。
「Je ne sais quoi」みたいな、ソロの内容が広がるタイプの曲は、yvpじゃないとその演奏のアイデアの幅はなかなか聴けないと思います。
尖った部分、毒のある方のエンリコが聴けるのは、昔はyvpに任せとけ!という感じだったので、最近そういう毒っぽい作品があまり聴けなくなっちゃいましたね。2020年新作の『Flame』は、そういう面で久々に良かったです。
今Apple Musicで聴けるか確認して聴きましたら、トラック3は「Adjapi」の間違いで、そこから一曲ずつ曲がずれいていてトラック4は「Con infinite voci」、「Si peu de temps」が入っていません。
なんとかチャレンジっていうのが流行ってますが、一人でエンリコチャレンジをしています。


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