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#009_【組織的公正】組織正義と社会的責任~従業員の第三者的視点が組織をどう捉える~(#4-101)

E. Rupp, D. (2011). An employee-centered model of organizational justice and social responsibility. Organizational Psychology Review, 1(1), 72-94.


本日の論文への惹かれポイント

Justiceという現象を理解するために、個人差・文脈的影響・感情・認知・社会的プロセスを考慮する必要がある、というアブストから、これまでの3分類(分配的・関係的・手続き的)の手前のもっと個人の内面や正義というものが認知されるプロセスに焦点を当てているものって面白そう、というところで、いざ読んでいきます!

この論文の目的は?

組織的公正のレビュー論文。
ただし、組織正義研究の包括的なレビューではなく、正義が従業員によって主観的にどのように経験されるかに従って、現代の正義理論を再構成しようとするもの。

従業員の経験の重要な要素は、自己と他者が組織のステークホルダーからどのように扱われているか、また組織が外部の集団に対してどの程度の尊厳と尊重を与えているかについての認識を形成することであると論じています。従業員のレンズは「内」「周囲」「外」の3種類があり、これらを使って判断している。

POINT1. Justive motivesの歴史

歴史的には「利己的」と考えられてきたそうです。
そこからの発展は、自己内・自己の周囲・外部(第三者)と広がっていきます。

  • 道具的モデル

    • Tyler,1987

    • 経済的合理性、自己のための成果を最大化する

↓ そこから発展して、現代は・・・

  • 関係モデル

    • 利己的な考え方の域を超える

    • 「正義は組織から評価される行動か?」という視点をもって判断している。判断ポイントは3つ。
      ① 経営慣行が中立性を示しているか?
      ② 信頼に足るものであると認識されているか?
      ③ 「認識する」従業員が集団の一員としての権利と尊敬を提供する地位を有しているか?

→ 正義が組織からどう評価されるかで、従業員の態度や行動が変わる。

↓ 最新の理論的勢力は・・・

  • デオンティック・モデル

    • 自己を越えたところに「正義」がある

    • 他社の権利を侵害する者を罰する、という進化した人間の傾向

    • 第三者による正義の認識

P.77

POINT2. 時間という概念

正義・・・色々要素がありすぎる!
情報の集約と判断の時間的モデルが必要だよね、という話。

正義を経験的なものとして取り扱う

これまで分配的・手続き的・関係的と分けて考えてきたが、これらをまとめて「出来事」として捉え、多面的認知として考える。
(とはいえ、まるっとすればいい、ということではない)

ポイントとしてあげた「時間」
過去の出来事は、将来の出来事の認識に影響を与える。

そして、中でも手続き的公正と対人的公正は感情的反応に影響を与え、認知に影響する、というもの。
(多面的、と言いつつ感情はとても強い、ということなのかもしれない。)

前回の記事でも取り上げましたが、この時間的経過というのはとても重要だと考えています。

時間の概念と出来事の順序は、正義の認識がどのように展開し、時間の経過と殿に形成されるかを理解する上で重要。

POINT3. 第三者としてのJustice

過去の正義研究の大部分は、一人称単数で研究されてきた(Kray & Lind, 2002)。
この「内観」の視点だけでは不十分であり、自分の態度や行動に影響を与える判断を形成する際に、「周りを見る(Looking around)」「外を見る(Looking out)」という視点が欠かせない、ということでした。

正義研究を歴史的に見ても個人(利己的)というところから多面的、個人を超えて、と進化してきています。

「自分は何も被害を受けていないけど、他人が受けていることを見て判断する」ということはありますね。上記でもリンクを張った前回のリストラの記事でも「リストラされる社員に対するサポート」を認識することが公正につながるという話がありました。

この第三者視点は、CSRの文脈でレビューされています。

  • 道具的理由

    • 従業員側:推測 従業員が雇用主を信頼できるかを判断するのは難しい。が、社会的に配慮した行動は信頼の代理である。

    • 経営側:CSRの取り組みは、組織の魅力、組織コミットメント、応募者向け魅力、仕事への満足度、組織市民活動、社会的認知、これらを向上すると経営学の観点で研究されている。(つまりは下心

  • 関係的動機

    • 心理的な帰属→CSR活動はボランティアなど従業員の参加を促す。これが倫理観や社会的価値観を育む。

  • 道徳的動機

    • 単純に、従業員は組織が社会的に責任のある行動をとることを期待している

最近では、顧客、同僚など、個人よりも第三者視点での正義研究が進んでいるように思います。

感想

レビュー論文なので、結論はないのだけど、印象に残った話としては、よく「手段と目的をはき違えるな」と言うが、目標システム理論で説明されていたのが、「目的としていたものが行っていく過程で手段となり、内発的動機付けとなる」(ざっくりいうとこんな感じ)

なるほど。
確かに。
内発的動機付けをどう促進するか、という話題は結構あるあるだけど、遠回りだけどそういう手法もあるのね、と。

そして、第三者的視点としての正義。
なるほど。確かに、時に自分は全く関係ないけど憤りを感じることってありますよね。去年は…そういう意味ではそういった不正が多く暴かれた一年でしたね。私は車を持っていないので、いずれも他人事ですがやっぱり憤りを感じました。そしていずれも組織風土の話が上がってましたよね。

サポートしていただけると嬉しいです! ぴよぴよ社会人博士課程の学生ですが、Organization Justiceについて研究を進めています。また、理想だけでなく実務で壁となるGoing Concern(売上、利益)といった面も考えつつ・・・模索しています。