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#012_【ダークサイド】ビジョナリー・リーダーシップの落とし穴(#4-107)

Ateş, N. Y., Tarakci, M., Porck, J. P., van Knippenberg, D., & Groenen, P. J. (2020). The dark side of visionary leadership in strategy implementation: Strategic alignment, strategic consensus, and commitment. Journal of Management, 46(5), 637-665.



この論文の目的は?

ビジョナリーリーダーシップが純粋にポジティブな現象であるという見方に異議を唱える!

どんな良い戦略も、実行されなければ意味がない。
戦略の実行がうまくいかない原因として、組織メンバー(特にミドル層とメンバー層)のコミットメントの欠如がある。
このコミットメントの育成に欠かせないのが、マネージャーのビジョナリーリーダーシップである。

※ビジョナリー・リーダーシップは、戦略的ビジョンの追求を動機付けることに重点を置いているため、戦略的コミットメントの創造に直接関係している(Carton, Murphy, & Clark, 2014; Yukl, 2012)

これまでビジョナリー・リーダーシップはトップ・マネジメントでの研究がほとんどで、マネージャーにも一般化できるとされているが、本当?

POINT1. マネージャーの役割って??

上から言われたことを下に伝えてやらせるだけの存在・・・だと思っている方はさすがに近年いないのではないでしょうか??

マネージャーの大事な仕事の一つ、それはずばり!!
戦略が何を意味するのか、そしてそれが自分たちの領域にどのような影響を与えるのかをチームが理解できるように支援すること(Balogun, 2003; Balogun & Johnson, 2005; Huy, 2011)

つまり、この支援の過程で「ビジョナリー・リーダーシップ」が活用される、ということです。

POINT2. リサーチモデル


本論文のリサーチモデルはこちら

P.641

仮説1:チームメンバー間の戦略的コンセンサスは、チームの戦略的コミットメントと正の関係がある。

仮説2:チーム・マネジャーのビジョナリー・リーダーシップとチームの戦略的コンセンサスの関係は、チーム・マネジャーのCEOとの戦略的アライメントによって調整される。

仮説3:チーム・マネジャーのビジョナリー・リーダーシップが戦略的コンセンサスを通じてチームの戦略的コミットメントに及ぼす間接的効果は、チーム・マネジャーの戦略的アライメントによって調整される。

結論、この3点は支持されています。
さて、この論文テーマを思い出してみましょう。
「マネージャーにビジョナリー・リーダーシップがないとどうなるか」のではなく、「マネージャーがビジョナリー・リーダーシップを発揮できるが、トップマネジメントと戦略に合意していない場合にどうなるか?」ですよね。

POINT3. CEOとMgrの向き先マッピング

P.655

CEOとMgrの戦略の方向性と、メンバーの方向性が細い線であらわされている図になります。
一目瞭然で「High Strategic Alignmnet×High Visionary Leadership」のセルが同じ方向を向いて進むことが容易に見て取れます。

問題は・・・
「Low Strategic Alignmnet×High Visionary Leadership」
CEOとMgrが大きく離れている上に、メンバーもバラバラであること。

戦略的コンセンサスやビジョナリー・リーダーシップが高いからといって、必ずしもCEO の意図通りに動くとは限らない(セルa,c,d)とは限らないことがわかる。CEOとアラインメントしていないとチーム内の戦略的コンセンサスを阻害するだけでなく、戦略的コンセンサスの内容という点で、ミスアラインメントさせる可能性がある。

マネジャーとCEOの間に戦略的な整合性が欠けていると、マネジャーがチーム内に戦略的なコンセンサスとコミットメントを生み出すことができないことが、ここから読み取れると思います。

感想

これがなかなかどうして、難しいのよ。
というテーマではありませんか??
「リーダーシップ」を育成しようと躍起になっていますが、そもそも戦略とのアラインメントはできていますか?
という基本の質問に立ち返る論文ですね。

実務の世界では、これって当然わかっている、ということになるかもしれませんが実際結構ズレはあると思います。
「頭ではわかっている」ということと「自分の価値観や成功体験」にはズレがあると思うんです。
大手企業だと新卒から定年まで同じ体験をしている可能性があるのでズレが比較的少ないかもしれませんが、中途がほとんどのベンチャー企業だと、このズレは意外とあるんじゃないかと思います。

本論文のLimitationでも、比較的安定した企業であるため、戦略的コンセンサスが得やすい環境であることには言及されています。
ベンチャーをターゲットにしてこの切り口から研究すると、ひいては組織作りにも役立つかもしれませんね。

サポートしていただけると嬉しいです! ぴよぴよ社会人博士課程の学生ですが、Organization Justiceについて研究を進めています。また、理想だけでなく実務で壁となるGoing Concern(売上、利益)といった面も考えつつ・・・模索しています。