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ミーシャ・ジー インタビュー(前編)「カズキとは、たくさんの話をしてきました。」

全日本選手権から2週間半、ICE EXPLOSION 2020のためにミーシャ・ジーさんが再来日しています。そこで、色々なお話をうかがってきました。


―スケートに関していろいろなことをしていますが、今は、主にどんなことをしていますか?

コーチ業、振付け、セミナー(主にスケートの普及など目的のもの)の3つがメインです。とはいっても時期によって配分は違っています。ただここ数ヶ月は試合のシーズンなので、コーチとして選手を教える時間が一番多かったかな。練習したり試合に帯同したり。僕の中では、コーチ業と振付師としての仕事への思いが、今、強いです。

―今、直接教えている選手は

シニアの国際大会に出ている選手だと、カズキ(友野一希選手)と、イム・ウンス(韓国)、ホンイー・チェン(中国)、ハンナ・ハレル(田村花亜/アメリカ)、ペアのアシュリー・ケイン=グリブル&ティモシー・ルデュク(アメリカ)です。

―ほかにもたくさんの選手たちに振付けをしていますね。ミーシャはロサンゼルスに住んでいますが、様々な国の選手たちを、どう指導しているんでしょう。

僕は今挙げた選手たちのセカンドコーチなので、彼らのホームにはメインコーチがいます。たとえばアメリカで試合がある時には、少し早めに来てもらってそこで一緒に練習したり、先月の全日本選手権の時には、僕が早めに来日して、カズキの練習を見たりしました。チームとしてのバランスが大事ですよね。それぞれの選手たちのこともコーチたちのこともリスペクトしているし、折に触れて「今の環境や状況はどう?」とか、いろいろ話をしています。

―スケートにまつわることで、この1年で一番嬉しかったことは?

2つでもいい?

―もちろん。

1つめは、カズキの全日本のフリーです。

―素晴らしかったです!

カズキとは、彼の内面をもっと見せる演技を、と2シーズン頑張ってきましたから。カズキも前から頭では理解はしていた。でも、それを実際の試合で見せられてこなかったんですよね。

でもあの日、彼と練習をしてきたなかで一番、彼の内面の強さを見せてもらいました。コーチとして幸せな瞬間でした。順位や点数や小さなミスとかは関係ない。彼の内側にある炎とパワー、自信が感じられて、それがとっても嬉しかったんだ。

―彼はインタビューのなかで、「2018年世界選手権で5位になってからの2年、とても苦しかった」と話していました。

あの演技の裏には、彼やチームがやってきたいろいろなことがたくさんあるんです。技術について練習するのはもちろんだけど、そのほかに、「僕がどう五輪に向かっていったか」、「どう世界選手権に向かっていったか」、「チャンピオンたちはどんな風だったか」といったことを、氷上でもオフアイスでも、いろいろ伝えてきたんです。

カズキとは、たくさんの話をしてきました。時には、大阪のカフェでね。「今、どんな気持ちでいるの?」とか「最近の練習はどう?」とか。そういう1つ1つのことをすごく細かく深いところまで話をしました。そういうこともあって、心からの演技というものがどういうものか、カズキはわかっていたんです。でもそれを実際に試合で見せるのは、本当に大変。特に今の日本の男子シングルの状況を見ると、若手も活躍していて、肩に重石が乗っているようなものすごいプレッシャーがかかっているから。でも、そうしたものも、1つ1つ話して、改善策を考えてトライしてきたんです、少しずつ少しずつ。

―それが、あの全日本のフリーという場でできたのは、なぜなのでしょうか。

どのジャンプを跳ぶか、といった戦略もあるけど、さまざまなアップダウンに遭うたびに、調整を重ねてきたからですね。

―ミーシャは、コーチ、振付師であり、さらにメンタルトレーナー的な存在でもあるんですね。

そうともいえるかもしれないですね。メンタルトレーナーについても、勉強してもしつくせない。だから今も学んでいるところです。僕にはメンタル面でのメンターが2人いて、1人は、トトミナニーナ&マリニンやプルシェンコたちのメンタルトレーナーの女性です。現役時代、「ミーシャ、君はシーズンを通して安定した演技ができるよね、すごいね」って言われることが多かったんだけど、それには、第一に練習したから、その次に、すごく詳細にわたって考え尽くしてきたから、というちゃんとした根拠があるんです。

―なるほど。

全日本のフリーでのカズキは、そうしたすべてのものがかみ合ったんですね。僕のコーチの1人でもあるラファエル・アルトゥニアンが、コーチと生徒がうまくいくのには、少なくとも1年半くらいの時間はかかる、と言っていました。カズキともだいたいそのくらいの時間が経ったところですよね。

最初の夏にカズキと話したとき、『プログラムを1つ振付けて終わり、ではないよ。長い目でやっていく。そして長くやっていくのなら、僕に頼りきりになるのではなくて、一緒にやっていくよ』って話したんです。その通り、一歩一歩やってきました。

―では、もう1つの、この1年で嬉しかったことは?

ダイスケ(髙橋大輔選手)のショートプログラムの振付けですね。

後編


▼これまでの、ミーシャ・ジーさんインタビュー

2019年4月のもの(さいたまの世界選手権にて) /  / ●2017年5月のもの(ヘルシンキの世界選手権にて&成田空港にて) / ●2017年2月のもの「フィギュア選手の「最後のシーズンかも」との言葉から」 / ●2014年3月のもの「男子フィギュア、ミーシャ・ジー「変化のときが来た」



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