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シルヴィギエム 進化する肉体への考察、常に疑問を持ち続けること

シルヴィギエム、フランス人バレエダンサー。
わたしの永遠のミューズ(憧れの人)だ。
現在55歳。12歳でパリ・オペラ座バレエ学校に入学、当時は体操のオリンピック選手を目指していたところを、バレエ学校長から説得されバレリーナへ転向したのが大きな転機だった。
ずば抜けた技術と表現力で周りを圧倒し、わずか19歳というフランス史上最若でエトワール(主役を踊る最上級のダンサー)に昇格。

「欲しいものなら恐れずに自分から手に入れようとしなきゃ」

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そんな彼女は、身体も魂もガチガチのプロフェッショナルのかたまりである。鍛え上げられたその身体と、全てのステップを踏むために彼女を支える強靭なつま先は、彼女の率直さを表している。

「わたしはこれでもシャイな人間なの、舞台に出ているからって実生活でうまく自己表現できるわけじゃないわ。
わたしは気難しくてシャイで、激しいかもしれないけれど、舞台は何かを与えてくれる。
舞台の上ではひとつの世界の扉が開くわ。」

彼女はクラシックバレエからモダンバレエ、コンテンポラリーダンスまで幅広くこなす。

「クラシックバレエはバランスよ。脚をまっすぐ、背筋をまっすぐ、腕はいつも定位置にあるわ。でも今回取り組んでいるコンテンポラリー作品は、“言語”がまるで違う。危うさと紙一重のところに良さがあるのよ。瀬戸際の美学よ。」

新しいことにも臆することなく挑戦し、理解しようとする度量がある。実際にはどの分野でも“言語”が違うからと言って、その先の景色を見ることを諦める人が多いものだ。

「わたしはまず何でも疑ってみるの。自分の踊り、演じているキャラクター。
だからこそ深い分析ができて、進歩があるのよ。舞台の前に強く感じるのは、恐怖よ、それだけ。
テクニックやキャラクターに自信がなかったり、事前に充分リハーサルしなければもっと怖くなるわ。でも舞台が終われば別人になったよう。なんとも言えない気持ちよ。」

誰にもパーフェクトに見えるその表現力の前に、彼女は毎回恐怖を覚えるし、
誰もが羨む技術と美貌を持ってしても、彼女は自分に対して甘えることは一切ない。
幸運にも天から与えられた能力を駄目にしないように。才能に溺れたらそこで終わりだ。

率直ゆえに、歯に衣着せぬと言われる彼女の名言で、
「才能のない人が努力しているところを見るのは辛い。」
というものがある。超豪速球すぎて、聞かなかったことにしたいくらい破壊力がある。
その与えられた才能を、努力して伸ばしていくことに精一杯力を注いだ彼女だからこそ言える素直で直球な言葉だ。

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2015年12月31日大晦日カウントダウン。
50歳だった彼女は、ゆかりの深かった日本で、バレエダンサーとしての幕を閉じた。
引退後の現在、彼女は動物愛護の活動をしている。
プロフェッショナルとは、常に自問自答を続けていける自己の強さと、それをまわりに伝える勇気を持ち続けることなんだろう。
日本を愛してくれてありがとう。


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