見出し画像

シリーズ「地域のために、わたしたちにできることってなんですか?」北海道上川町佐藤町長・KAMIKAWORK1期生絹張さんと考える、「人が育つまちづくり」


株式会社読売広告社・ひとまちみらい研究ルーム(取材時は、ひとまちみらい研究センター)は、「地方創生のまん中に、ひとがいる」を理念に掲げ、地域が抱える課題「観光振興」「産品開発」「移住・定住」に対し、独自のワンストップソリューションで応えるプランニングチームです。

地域の潜在価値を掘り起こし、高めていくためのモノづくり・コトづくり・場づくり、そして最もわたしたちが重視する担い手(ヒト)づくりで、地域を熱くサポートしています。

今後さらに地域の方々に寄り添い、本当の意味で「地方創生のまん中に、ひとがいる」状態を目指すために、地方創生の第一線で活躍する方々と対談を重ねながら「わたしたちにできることはなにか? 」をあらためて問い直す企画を始めることにしました。

その名も、「地域のために、わたしたちにできることってなんですか?」

もちろんこの問いに絶対の正解はありません。わたしたちに「できること」を見い出すために、地域に関わる第一線で活動されている方々と議論を交わしながら答えを模索していきます。

第4回目の対談相手は、『KAMIKAWORK』をはじめとした積極的な取り組みで注目を集める北海道上川町の佐藤町長と、KAMIKAWORK(地域おこし協力隊)1期生として活動後、株式会社Earth Friends Campを立ち上げた絹張さんです。

今回はお二人に上川町の成果や展望について伺いながら、「人が育つまちづくり」をテーマに、地域経済のプレーヤーと行政の相互作用に対して東京の広告代理店がどのように貢献できるかディスカッションしていきます。地域のために、読売広告社・ひとまちみらい研究ルーム(以下、読広(よみこう)ができることはなにか?佐藤町長・絹張さんと一緒に考えてみたいと思います。

<プロフィール>
●対談相手
佐藤芳治町長
1949年生まれ。遠軽町出身。1967年に上川町役場に入庁後、商工観光課長、議会事務局長を歴任。その後助役、副町長を経て2008年に上川町長選に立候補し当選。現在4期目。

絹張蝦夷丸さん
1990年生まれ。北海道・オホーツク出身。2017年から札幌を拠点に「キヌバリコーヒー」の屋号で自家焙煎コーヒー豆の販売とイベント出店を開始。2019年3月に上川町へ移住。同年4月からKAMIKAWORKフードプロデューサー(地域おこし協力隊)として活動を開始。2021年6月に株式会社Earth Friends Campを創業。2022年秋にキヌバリコーヒー初のロースタリーカフェをオープン予定。

●ファシリテーター
岡山 史興さん
70seeds株式会社の代表取締役/ウェブメディア『70Seeds』編集長「次の70年に何をのこす?」をコンセプトに掲げる70seeds株式会社の代表取締役編集長。これまでに100以上の企業や地域のパートナーとしてブランド戦略立案からマーケティング、PR、新規事業開発を手掛ける。2018年から「日本一小さい村」富山県舟橋村に移住、富山県成長戦略ブランディング策定委員などを務める。

●株式会社読売広告社・ひとまちみらい研究ルーム
児玉 隆典ルーム長
1972年福岡県出身。営業局にて通信・自動車・流通などを担当。2020年より現職として中小企業庁の商店街事業事務局業務に従事。

石黒 達暉
1996年大阪府出身。主に都心の商業施設の年間販促業務を担当。2020年より現職として中小企業庁の商店街事業事務局業務に従事。

まちづくりへの想いに、よそ者も地元の人も関係ない

佐藤町長の生まれは、上川町に隣接する遠軽町。高校大学卒業後に上川町役場に入職し、2008年に町長に初当選。以降現在に至るまで(2022年)上川町の活性化とまちづくりに半生を捧げてきました。

そんな経歴がありながらも町長選挙に出馬した際には、上川町の出身でないことから「佐藤さんはよそ者だもんな」と言われたこともありました。そんな逆境をものともせず町政に取り組んで来られた背景には一貫したまちづくりへの信念がありました。

「まちづくりへの想いに、よそ者も地元の人も関係ないですよ。私は40年以上、上川町に住んでいます。誰だって自分が住む町を良くしたいじゃないですか。こんな町になったら嬉しいな。豊かだろうな。そんな理想に少しでも近づけたい。だからはっきり言うけど、上川町をなんとかしたい想いだけは誰にも負けないほど強いですよ。自分にできることは何か?その一心でやってきましたから」

若者、移住者、東京の企業との連携など、外からの風をどんどん取り入れながら、町民が誇りに思えるまちづくりに奮闘する佐藤町長に話を聞きました。

地域おこし協力隊は、一緒にまちづくりをする「プロデューサー」

岡山さん:「KAMIKAWORK」をはじめ、外と内の絶妙なバランスが上川町の取り組みにおける面白いところだと思っているのですが、佐藤町長が大切にしている価値観について教えてください。

佐藤:上川町にある資源、歴史、文化、暮らす人々に目を向け、他の地域にはない上川町らしさを生かすまちづくりを大切にしています。そこにこそ、人は集まってくるのではないかと思うんです。

今、地方創生の取り組みは全国で広がっていますが、地域によって風土は異なるため、一概に「あそこもやっているから、うちもやろう!」と真似するだけでは上手くいきません。まして人口増加や企業誘致にばかりに力を注いでも限界がある。それよりも大切なのは、上川町らしさを生かすことにより結果として外の人からも「上川町で働きたい、暮らしたい」「なんか面白そう!」と、可能性を感じてもうことなのではないかと思うんです。行政としては、民間企業の発想を活かしながら、必要であれば条例も変えていくくらいの意識でまちづくりに励んでいます。

児玉:上川町らしさ・魅力を掘り起こすため、具体的にどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?

佐藤町長:外からの力が必要だと考えています。若者や移住者、東京の企業は、地元の人が気づいてない上川町の価値に気づかせてくれる貴重な存在です。

岡山さん:若者や移住者という側面でいうと、絹張さんは上川町の地域おこし協力隊1期生として移住をしたと伺いました。どのような経緯があったのでしょう?

絹張さん:僕はもともと札幌のゲストハウスで働きながら、個人でナチュラル精製のコーヒー豆を専門に扱う『キヌバリコーヒー』を運営していました。地域おこし協力隊の募集を知ったのは、友人に誘われて上川町の層雲峡で行われた紅葉のイベントに出店したときのことです。

他の地域とは異なり、『カミカワークプロジェクト』という名前で募集をしていたのが印象的でした。さらに協力隊のことは「プロデューサー」と呼ばれ、「フードプロデューサー」「アウトドアプロデューサー」「クラフトプロデューサー」「コミュニティプロデューサー」4種のプロデューサー職の募集が出ていました。

おもしろいことを追求しながら町に影響を与える。自分も町も豊かにする働き方を生み出す。そんなコンセプトに惹かれ、興味を持ったのが最初でしたね。

児玉:上川町では、地域おこし協力隊を「プロデューサー」と呼んでいるのは興味深いことですね!

佐藤町長:地域おこし力隊を募集するにあたって、任務はあれどそこに縛られすぎない受け入れ態勢をつくりたいと思ったんです。町の課題や人不足を補てんする役割を担うだけでは「こんなはずじゃなかった」と、ミスマッチにもなり兼ねません。

それよりも、自分にとっても、町にとっても、おもしろいと思うことを実現させてほしい。地元の人だけでは気づかない、町の魅力や若い人の発想を存分に活かしてほしいと思っています。

上川町と地域おこし協力隊が一緒になって、町を元気にしていくために「プロデューサー」という呼び方をしていますね。

絹張さん:僕はカフェの開業を目指す人向けの「フードプロデューサー」に応募し、妻や友人も他のプロデューサー枠に興味を持ったようで同時に応募しました。そうして家族・友人とともに上川町へやってきました。

児玉:実際に移住してみてどうですか?

絹張さん:まず驚いたのが、町役場の人も新しい取り組みや挑戦に前向きで、「いいですね!やってみましょう!」と背中を押してくれる人ばかりだったことです。他の地域の役場だと、できない理由ばかりを突きつけられることもあったのですが、上川町はちがいました。

石黒:町長としても、職員のみなさんにまちづくりへの想いや方針を共有されているのでしょうか?

佐藤町長:そうですね。役場の職員には、口すっぱく言っているんです。これまでのように事務的な仕事をしていてはダメだと。自分の仕事をきっちりこなせばOKではなく、周りを巻き込んで町の課題を解決していく姿勢を持たなければ、これからの時代、まちづくりなんてできないよ、と。

もしやりたいことに対して、条例や法律がじゃまをしているのなら「できない」で終わらせず、時間はかかるかもしれないけれど、変えていくための挑戦をしよう。そういうチャレンジする意識を持ってもらいたいと常々話していますね。

絹張さん:町役場の協力体制があってこそ、地域おこし協力隊も枠に縛られすぎず任務を楽しんで遂行できるのだと思いますね。

「上川町らしさ」のPRは、地元・広告代理店の役割分担を意識する

岡山さん:町役場と地域おこし協力隊が連携することで、町に良い循環が生まれているのだなと感じました。地域おこし協力隊の方々は具体的にどんな活動に取り組んでいるんですか。

絹張さん:例えば、移住促進の取り組みが少ないことに課題を感じた協力隊が、移住をコーディネートする役割を担ったり、地域教育をやりたいと移住した協力隊が、地域の施設を使って子どもたちに勉強を教えたり、イベントを主催したり。

誰かにやってくださいと言われたからでなく、町に必要だと思うことを役場に提案して実現させる。そうやって自分で任務の領域を広げている人は多いです。

佐藤町長:本当に多くの隊員たちが、「この先も暮らしていくとしたら、どんな町にしたいか?この町で自分はどう生きていきたいか?」という視点を持って活動してくれていますね。

絹張さん:大きな動きでいうと、学校教育と地域おこし協力隊が連携することもありました。道内の公立高校が次々と廃校になるなか、町内の上川高校も例外ではなく、なんとかして、生徒が行きたくなる。保護者が通わせたくなる。そんな学校にしようと、教職員、地域おこし協力隊、行政、地域の人たちが一体となったプロジェクトを発足させました。結果的に、学校のポスターとパンフレットを制作したのですが、魅力が伝わったのか無事に定員に達する生徒が集まり廃校を免れることができました。

佐藤町長:学校をどうしていくか?という議論に、地域おこし協力隊の若い人たちが一緒に参画して、教職員や地域の人たちも巻き込んで議論が展開できるなんて、今まで考えたことも経験したこともありませんでしたから、すごいことですよ。

岡山さん:地域おこし協力隊が、行政や学校、住民の架け橋になっているんですね!

絹張さん:着任してすぐ、役場と町民の間に入ることが、外から来た僕たちがやるべき仕事だと感じたんです。僕らは1期生なこともあって、そもそも地域おこし協力隊がなんなのか知らない町民もたくさんいて、役場の取り組みや熱意も伝わっていない様子でした。

だからこそ、町民の人たちを巻き込んだ「まちづくり」をするにはどうすればいいのか?を考え、少しでも上川町を誇りに持ってもらいたい、魅力に気づいてもらいたいと僕らなりに発信をしてきました。

でも全国規模で考えたとき、地域おこし協力隊の力だけでは限界があります。他の都道府県の人たちにも「上川町らしさ」を知ってもらうには、読広さんのような広告代理店の力が必要です。

佐藤町長:地元目線での情報発信、東京の広告代理店という外の目線での情報発信。それぞれ役割分担を意識したPRをしていきたいですね。少なくとも、東京からの視点は私たちにはないもの。まちづくりにおいて広告の力はものすごく大きいので、広告代理店の専門的な取材力や発信力に期待しています。

さらに東京の視点で言うと、実は3年前から上川町役場の職員を一人、東京の民間企業に派遣しているんです。東京各所でつながりを作り、観光、教育、メディア業界など計8企業と連携協定を結びました。ここ2〜3年で上川町と連携して何か一緒にやりたい!と言ってくれる東京の企業が増え、大変いい働きをしてくれていますね。

岡山さん:なるほど。PRの話を含め、上川町のまちづくりは佐藤町長の想いが色濃く反映されているなと感じます。「佐藤町長だからできた部分」も大きいのかなと思うのですが、意思を引き継ぐ後任も重要になってきそうですね。

佐藤町長:後任はどうするんですか?という質問はよくされます(笑)。でもそれほど心配はしていません。なぜかというと、今の上川町も私ひとりでつくってきたわけではないからです。地元の人はもちろん、役場、地域おこし協力隊、移住者、東京の企業との連携など、さまざまな人とのつながりの中で、主体的に動いてくれる人たちがいます。

それにトップが変わることによって、動き出すこともあるんですよ。今までできなかったことも、新しい町長に代わることで動き出すこともある。もちろんこれまでの良いところは引き継ぎつつ、まちづくりもどんどんアップグレードさせてほしい。私のやり方にとらわれず、新しい風を吹かせていってほしいですね。

もし佐藤町長が読広の社長だったら、どうしますか?

児玉:ありがとうございます!では最後に佐藤町長に伺いたいんですが、ご自身が読広の社長だったらどうしますか?

佐藤町長:そうですね。地域ならではの価値はどんなところにあるのか?住んでいる人は、どんなことに悩んでいるのか?良いところも悪いところも含め、じっくり時間をかけて地域に入り込んだ取材・発信をしてもらいたいです。

というのも、稀に一部分だけを切り取られたメディア報道で上川町の魅力や意図が正確に伝わらず、「そうじゃないんだよな......」と、残念な気持ちになることがあります。

情報を受け取る側にも、発信者の本気度は伝わります。いくら地域創生に力を入れても、表面的な広告戦略では「本質的な地域の魅力」は伝わりません。

PRすることによって、どう次につながるのか?広告の価値や重みは、そこにあると思うので、その役割を果たしてほしいですし期待していますね。

◯まとめ
テーマ:人が育つまちづくり。地域経済のプレーヤーと行政の相互作用に対して東京の会社がどのように貢献できるか。
・まちづくりへの想いに、よそ者も地元の人も関係ない。
・上川町らしさ・魅力を掘り起こすためには、地元の人が気づいてない上川町の価値に気づかせてくれる外の人の力が必要。
・地域おこし協力隊は、「プロデューサー」という呼び方をしている。上川町と地域おこし協力隊が一緒になって、町を元気にしていくという意味を込めて。
・PRは、「地元目線での情報発信」「東京の広告代理店という外の目線での情報発信」の両方が大事。それぞれ役割分担を意識したPRをしていく。
・地方創生のためのPRは、地域に入り込んだ本質的な取材・発信が重要。

※本取材は撮影時のみマスクを外し、インタビュー時はマスクを着用、感染症対策を講じた上で実施いたしました。

コンテンツ制作・監修 70seeds編集部
執筆:貝津 美里 編集:岡山 史興 写真:渡辺 誠舟(EFC inc.) 制作進行:大森 愛


この記事が参加している募集