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課長のヒント:部下には議事録じゃなくて議前録(ギゼンロク)を書かせよう

こんにちは。ヒトラボジェイピーの村上です。
今日のテーマは、議事録です。

筆者はコンサルタントとしての修業時代とても沢山の議事録を書かされました。

AI技術が進化して、会議の文字起こしをしてくれるツールが世の中にはとても充実してきましたので、今は昔と比べて随分と議事録を作成するのも楽になったんじゃないでしょうか。下手をしたらミーティングを録画・アーカイブしているので、議事録は不要になったという組織も増えてきている気がします。

旧時代の遺物として喪失されつつある議事録ですが、業務上の備忘録という効果のほかに、特に若手の方の人材育成という観点があったことは無視できません。

議事録をはじめて作成したときに、先輩や上司から激しく赤ペン先生をされて、ショックに沈んだという方も多いのではないでしょうか。

ただそのようなプロセスを通じて、
・この会議の論点とは何だったのか
・話されている意味不明な専門用語はどういう意味か
・プロジェクトマネジメントとはどうあるべきか
・議論のうまい進め方、下手な進め方は何か

等々、いろいろな学びの機会になっていたのは間違いありませんよね。

筆者も最初のうちは、1時間のミーティングの議事録を、3時間かけて書いて、それを2時間かけて書き直すというある種無駄なプロセスを踏みつつも、業務上・組織上の様々な事を議事録作成を通じて学んできた気がします(忙しい中、労力を割いて指導してくれた当時の先輩たちには本当に感謝しています)。

さて、AIが進化して議事録が不要になりつつある現代だからこそ、若手・人財育成の観点から議事録は大事である!


という話がしたいのでは全くありません(笑)。議事録の書き方を解説したい訳でもありません。


ここまでの流れを完全に無視するようで恐縮ですが、

私は議事録というのは「後から整理して書くもの」であり、議後録(ギゴロク)だと思ってます。それである時思いついたんですね、

部下に議事録を後から書かせるのではなくて、議前録(ギゼンロク)を事前に書かせようと。

要は、会議の前に議事録を書かせてみるんですね。

おい!意味不明な事を言うな!

という声が聞こえてきそうですが、これが結構効果があるんです。

筆者は、マネージャーの方にコーチングもしていますが、「部下が育たない」という悩みは、非常に多いテーマなんですね。その時によくこのアプローチを試すように促すのですが、「効果があってびっくりした」というフィードバックを沢山もらいました。

具体的なやり方ですが、簡単です。

部下にですね、今度、重要なXX会議があるよねと、30分あげるから当日の展開を予想して議事録書いてごらん? と指示するんですね。

まあ最初部下もポカンとすると思うのですが、これをやらせてみると、部下の力量や不足している部分、わかったつもりだけど全然わかっていない部分が一発でわかります。

何を理解していて、何を理解していないのか
・当日の重要論点や優先度を理解しているか
・必要な準備資料を理解しているか
・全体の流れの中での今回の位置づけは何かがわかっているか
・どういう展開になると理想的で、どういう展開になるとまずいのか、理解しているか
等々、当日のシミュレーションを事前にすることになるわけです。

要は、自分なりの会議に対する「仮説」を持つ訓練になるんですね。
そうすると実際の会議の時に、自分が描いていた仮説どおりの展開になるのか検証ができる訳です。記憶にも残りやすい。

仮説も持たずに、ぼーっと会議に出席して、後から議事録を考えるときに頑張る人と、事前に仮説を持って検証しながら会議に主体的に参加している人のどちらが成長するかは自明の理ですよね。

例えば、「役員に新規事業の提案をする」という重要な会議があったとしましょう。力量がない部下の議前録は、概ね以下のような感じです。

・当日の流れ(プロセス)だけが中心に書いてある(例:新規事業のコンセプト説明、当社にとって取り組む意義、投資対効果とシナジー、質疑応答、今後のアクションプラン 等) 

・当日の会議の中で、“自分の担当領域”の事だけが詳しく書いてあり、他の担当領域や上司が説明する箇所等の記述が薄い(狭い役割認識、全体像や繋がりを理解できていない)

・理想的な勝手シナリオしか書いていない(うまくいった時の事しか述べられていない)

・(番外編として)そもそも何も書けない・・・


逆に力量がある部下に議前録を書かせると、以下のような感じです。

・当日の流れ(プロセス)だけではなく、論点(イシュー)を中心に書いてある

自身の担当領域に拘らず、全体観を持って、優先順位の高い論点やKey Success Factorを含むポイントが提示してある

・理想的なシナリオに加え、最悪の展開も同時に複数シナリオ予想し、そのためのカウンター・アーギュメント(対応策の仮説)を用意している

・自分の出番を意識した記述になっており(こういう流れになった場合、自分や上司が介入すべき、という準備がある)、会議の中での自らの役割・貢献を理解している様子が伺える

勿論、いきなりこの力量がある部下のような議前録を書くのは難しいでしょう。前述のコーチングでも「部下が成長してビックリした」という話でしたが、最初は大体何も書けないのですね。

ただ、この書けないという事に部下が自分で気づくのが大事なんです。

それまでは会議後に議事録をしっかり仕上げれば、はい私は仕事しましたよ、という部下がいると思うのですが、そういう部下のマインドが徐々に変わってくるんですね。未熟なお客さんとして単に会議に参加してメモを取っていれば十分というマインドから、議前録の作成とレビューというプロセスを通じて、当日の会議に如何に自分は貢献すべきかというマインドに変えていく訳です。

更に議前録を書いて事前シミュレーションしている訳ですから、思うような展開になった場合は、実際に部下自身が会議に貢献できる確率も上がっている訳で、小さな成功体験を積める訳ですね。仕事のやりがいというのは、お給料や職場の人間関係、仕事内容だけではなく、「成功体験・達成経験」を積む事も大きく影響していますよね。

なので、私自身は議事録作成経験を通じて、色々と成長した実感はあるのですが、あえて声を大にして言いたいわけです。

部下には議事録じゃなくて、議前録を書かせよう! と。

勿論毎回のミーティングでやるのは大変なので、時々で良いと思いますが、
部下の育ちが加速し、戦力化するまでのスピードアップになるのは間違いないと思います。

働き方改革や生産性向上、小さな成功体験による動機づけにも効果が見込めると思います。

部下育成に悩む課長さんのヒントになれば幸いです。

*ちなみに議前録という言葉は筆者の造語です。2020/11/28現在、google先生に聞いたところ、全くヒットしませんねぇ・・・。

文責: 村上 朋也

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