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ナルト×考察:変化するヒナタの自己肯定感【Ep13】

こんにちは、ひとかどさんです。
先週のテーマ、「自己肯定感」と聞くと、ひとかどさんは真っ先に思い浮かぶ人物がいます。
それは、『NARUTO』に登場する裏ヒロイン、ヒナタです(表ヒロインはサクラでしょう)。
今回は、ヒナタの半生を見てみることで、自己肯定感について理解を深めたいと思います。

ヒナタの自己非独立

まずは過去の視点です。
ヒナタは、名門・日向の宗家(本家)に生まれ、5歳下の優秀な妹・ハナビ(本家)と、一族の誰よりも日向の才に愛された従兄弟・ネジ(分家)という存在に挟まれ、「日向一族の落ちこぼれ」として、辛い過去を送っていました。
父ヒアシにも「出来損ない」と言われ、中忍試験でネジと戦った時には、自分の過去を思い出し、ネジには勝てないと思い込む心理状況を引き起こしていました。
これこそ、前回紹介した自己非独立の状態です(ネガティブな経験ばかりをもとに自己イメージを持っているため、自己尊厳が保てなくなり、今の自分に自信が持てなくなっていること)。

昔の自分をイメージし、これまでの経験から…この試合の結果を想像した…負けるという想像をね!(日向ネジ)

『NARUTO』巻ノ九:ナンバー78「ネジとヒナタ」P119

しかし、その中忍試験のネジとの試合中、「自分を変えることは出来ない」と言いかけるネジに対して、声高に「出来る!!」と言い放ったのがナルトです。そして、ナルトの言葉によって、ヒナタの目つきが変わるのです。
一体、ヒナタの中で何が起こったのでしょうか。

ヒナタの自己独立

ヒナタにとって、ナルトは「誇り高き失敗者」でした。
なぜなら、ナルトには失敗をしてもそこから立ち向かっていく強さがあって、ヒナタはそんな強さを「本当の強さ」だと思っているからです。
ヒナタは、そういうナルトからの応援を受けて、「自分が強くなれたと思えた」と言っています。

宗家なのに認められない自分は、「失敗」ばかりの経験で作られた自己イメージでした。

しかし、ナルトからの声援が、ヒナタが思うナルトが持っている「本当の強さ」が、ヒナタの過去を、経験を、立ち向かっていく対象としてのポジティブなものに変え、自己尊厳を保つことに繋がったと考えられます。

このように、ヒナタは中忍試験を通じて、自己独立に近づいたと言えるでしょう。
面白いのは、自己価値を生む経験が同じでも、その経験の捉え方の違いは自己価値の形成に影響を与えるということです(ヒナタの場合、宗家なのに認められないという経験を、「失敗経験」と捉えていたのが、立ち向かい乗り越えていく「ポジティブな経験」という捉え方に変わっていますよね)。

あ…あのね、私…ナルトくんに応援された時…前より自分が強くなった気がしたの…予選が終わった時、自分の事がちょっとだけ好きになれた…(日向ヒナタ)

『NARUTO』巻ノ十一:ナンバー98「誇り高き失敗者!!」P158

失敗をするからこそ…そこから立ち向かっていく強さがあって…そんな強さが本当の強さだと私は思うから…ナルトくんはすごく強い人だと思う…(日向ヒナタ)

『NARUTO』巻ノ十一:ナンバー98「誇り高き失敗者!!」P160

ヒナタの自己非合理化

次は未来の視点です。
人は、誰しもこうなりたいという自己概念があり、それが達成できている状況を自己実現と呼びます。
ヒナタは、昔は「日向宗家として認められたい、父のように立派な忍になりたい」という自己概念を描き、それを達成しようと必死でした。
しかし、どんなに頑張ってもそれが達成できない、そんな状況は「自己非合理化」と呼ばれる状態であり、とても心穏やかではいられないでしょう。

ヒナタの自己合理化

そんなヒナタが変わったのは、先述の中忍試験から2年後、ペインが木の葉の里に襲来した時、ナルトを守り、告白をした回です。
いつの頃からか、ヒナタは「ナルトに追いつきたい、一緒に歩きたい」と思うようになっていました。

泣いてばかりで最初から諦めて…何度も間違ったところに行こうとして…そんな私を…ナルト君が正しいところへ連れてきてくれたの…いつもナルト君を追いかけて…ナルト君に追いつきたくて…いつだってナルト君と一緒に歩きたくて…いつもナルト君のところへ…ナルト君が私を変えてくれた!ナルト君の笑顔が私を救ってくれた!だからナルト君を守るためなら、死ぬことだって怖くない!!
私はナルト君が大好きだから…

『NARUTO』巻ノ四十七:ナンバー437「告白」P90-92

忍界大戦の時には、ナルトに追いつきたいからナルトを追いかけるのではなく、「横にいて同じ歩幅で歩きたい」と決意し、自己概念をより一層明確にしました。

私はアナタをずっと…ずっと…ずっと追いかけてきた…そして…今も追いかけてる
…でも…この戦争が終わったら、もうアナタを追いかけるのはやめにします
次はナルトくんの横にいて、しっかりアナタの手を握ったまま…同じ歩幅で歩きたいんです!

『NARUTO』巻ノ六十:ナンバー573「輝きへと続く道」P146

その後、「ナルトの横で一緒に歩く」というヒナタの自己概念は実現します。
忍界大戦でネジが十尾に殺された時、自分を見失いかけたナルトに、ヒナタは「一緒に立とう」と自分の気持ちをぶつけます。
これによって、あと一歩で闇落ちしそうだったナルトは、自分を取り戻すのでした。
この瞬間、まさにヒナタの自己概念は達成され、自己実現となり、自己合理化に至ったのです(ヒナタのケースはうまく自己実現できましたが、仮に実現できなくても、できそうだと自分が思える状態ならそれでもいいのです)。

ヒナタ…ありがとう!…お前がオレの横にいてくれたおかげだ…行くぞ、ヒナタ!!

『NARUTO』巻ノ六十四:ナンバー615「繋がれるもの」P147-148

終わりに

いかがでしたでしょうか。
もともと自己肯定感が低かったヒナタは、自己尊厳を保てない過去の経験と、心穏やかでいられない自己概念を描いていました。
しかし、ナルトや仲間と交流する中で、徐々に過去の経験の捉え方を変え、自分らしい自己概念を持つことで、過去に対して自己独立し、未来に対して自己合理化することに成功したといえるでしょう。

自己肯定感を高めることは「言うは易し」かもしれません。
ですが、今回のトピックとこの考察が、少しでもお役に立てば幸いです。

【参考資料】
『NARUTO』巻ノ九:ネジとヒナタ
『NARUTO』巻ノ十一:弟子入り志願!?
『NARUTO』巻ノ十二:大いなる飛翔!!
『NARUTO』巻ノ四十七:封印破壊!!
『NARUTO』巻ノ六十:九喇嘛!!
『NARUTO』巻ノ六十四:十尾


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#NARUTO
#ナルト
#自己肯定感

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