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[DX事例82]銀行を再定義するデジタルバンク「みんなの銀行」_株式会社ふくおかフィナンシャルグループ

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は金融業界からです。主に福岡銀行をメインに主に九州の銀行を複数展開する株式会社ふくおかフィナンシャルグループのデジタルバンキングです。


お金のSNS!? ふくおかフィナンシャルグループのDX事例

ふくおかフィナンシャルグループは福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行などを傘下に持つ会社です。十八親和銀行は長崎県を地盤とする銀行だそうで、主に九州の顧客をメインターゲットとしている銀行となります。
そんなふくおかフィナンシャルグループは2021年に全国エリアのデジタルネイティブ世代をターゲットとした新しい銀行「みんなの銀行」を設立していますので、ご紹介していきます。


①ネット銀行と何が違う?デジタルバンク「みんなの銀行」

「みんなの銀行」は2021年5月のサービス開始移行、2022年1月時点で口座数は20万口座を突破しているサービスとなります。

大きな特徴としては日本初の「デジタルバンク」という触れ込みであり、既存のネットバンクとは違う存在を強調している点です。デジタルバンクという定義はざっくりですが「スマホアプリを通してのみ利用できる銀行」であること。「全ての手続きや業務をデジタル起点で設計されている」こと。そして「1人1口座で、口座を作ったデバイスでしか取引できない」という特徴があります。

従来のネットバンクだと複数のPCやスマホから取引ができるので、ログインする際に複数の認証方法で安全性を確保する必要があります。それに比べて「みんなの銀行」ではデバイス制限で安全性を確保しているので、「ID・パスワード入力」か「生体認証」のどちらかで簡単にログインが可能です。

実際のアプリのデザインも文章はほとんとなく、絵でイメージして操作ができるような直感的なデザインにしているとのことです。

みんなの銀行 HPより抜粋



②「フリクションレス(煩わしさをなくす)」に焦点を充てたサービス

「みんなの銀行」は従来の基幹システム・勘定系パッケージを流用せずゼロから開発したこともあり、日本の銀行では初のパブリッククラウドでシステム構築した銀行となります。勘定系システムはGoogleクラウド上に構築し、後述するBaas(Bank as a Service)を展開するためAPIによる他社への情報開放も予定しています。また東京リージョン/大阪リージョンに構えるシステムも正副(アクティブ・スタンバイ)構成ではなく、分散処理「Cloud Spanner」を使ったアクティブアクティブ構成になっており「障害でシステムを止めない」作りとなっています。


みんなの銀行「国内初のデジタルバンク『みんなの銀行』が目指す新しい銀行のカタチ」より抜粋


と、、、いつもの記事と違い「みんなの銀行」をどう開発したかという点がDX事例の主旨ではあるのですが、読者である会社経営者に対して開発手法のことを細かに説明するつもりもありません。
ですので今回は上記の開発手法を使ってフリクションレスをどう実現したのかという点について触れたいと思います。


みんなの銀行は従来の「銀行らしさ」をなくし、シンプルかつミニマル、そしてフリクションレス(煩わしさをなくす)を目指して開発しています。銀行サービスでは異色なプレミアムプラン(月額有料サービス、600円)が必要な場合もありますが、下記のようなサービスがあります

①口座開設:オンライン上での本人確認技術であるekyc(Electronic Know Your Customer)を通して、スマホのビデオ通話を通して口座開設可能。紙の申請書や本人確認の手間をなくす。
②Box:普通預金口座とは別に、架空の口座を20個まで簡単に作成可能。貯蓄用口座などを作り、アプリ上の口座アイコンをスワイプすることで簡単に資金移動が可能。自動的に資金移動するスケジュール設定も可能。口座作成や管理の手間をなくす。
③Record:自分が使ったお金を記録する家計簿機能。他社の銀行口座、クレジットカード等も連携が可能なため、みんなの銀行以外も含めたお金の流れが確認できる。家計簿の管理の手間をなくす。
④Cover:口座の金額以上の出費があったとしても、最大5万円まで自動で立て替えてくれる機能。決済のたびに口座の残高を確認する手間をなくす。

色々なサービスがありますが、どれもフリクションレスという「銀行を使うときに発生する煩わしさ」をなくすための特徴を持っています。

更に「みんなの銀行」は今回作成したバンキングシステムをBaas(Bank as a Service)として外販する計画も立てています。同業の銀行他社だけではなく、非金融事業者に対しても同行のバンキング機能を提供することで、金融事業への参入をサポートする事業を立ち上げようとしています。

みんなの銀行「国内初のデジタルバンク『みんなの銀行』が目指す新しい銀行のカタチ」より抜粋




経営戦略とDXの関連性について

ふくおかフィナンシャルグループは「FGG統合報告書2021」にて、グループの取り組みの1つに他行や新規参入企業との差別化を図るために「銀行ビジネスそのものを再定義する」とし、そのためにDXを活用していくという記載があります。

もちろんその最たる例が「みんなの銀行」となっており、銀行本来の機能である「預金・貸付事業(B2C事業)」だけではなくBaas事業を通した「みんなの銀行の金融機能・サービスの提供(B2B2X事業)」「バンキングシステムの外販(バンキングシステム提供事業)」などの事業の柱を作り出そうとしています。

みんなの銀行「国内初のデジタルバンク『みんなの銀行』が目指す新しい銀行のカタチ」より抜粋


またみんなの銀行は「両効きの経営」でいう「知の探索」にあたるということで、グループ内のDXを先導するファーストペンギンを実践するとのことです。

ふくおかフィナンシャルグループでは、みんなの銀行で「知の探索」を、既存事業では業務改革/デジタル活用で「知の深化」を行うことでグループの構造改革をしながら、銀行ビジネスの再定義自らの抜本的改革を行いながら他社との差別化を図ろうとしています。



まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回はDX事例の紹介ではなくDXを使って何を実現しようとしているのかを中心にまとめた話でした。
DXはあくまで経営施策の一つなので、DX化することそのものが目的ではありません。みんなの銀行では銀行での手続き等の煩わしさをなくすという目的のもとに徹底して「フリクションレス」なサービスを生み出していましたね。

皆さんの会社でも、今回の事例のような「ユーザに寄り添ったサービス」を生み出すために日々活動されているかと思います。その場合に人だけで対応しようとすると人員不足や教育コストの問題がついて回ります。ITやデジタル活用をバランスよく行うことで、最適でユーザに沿ったサービス開発に取り組んでいただければと思います♪
次回も楽しみにしていただければ幸いです。
タナショー


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参考にさせていただいた情報
ふくおかフィナンシャルグループ「FGG統合報告書2021」
https://www.fukuoka-fg.com/investorimage/ir_pdf/tougou/202110/all.pdf
みんなの銀行
https://www.minna-no-ginko.com
みんなの銀行「国内初のデジタルバンク『みんなの銀行』が目指す新しい銀行のカタチ」
https://www.fukuoka-fg.com/investorimage/data/20210118_ir.pdf
金融機関のデジタル活用by ITmediaビジネス「みんなの銀行は、ネット銀行と何が違う? 銀行なのに絵本のようなアプリ」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2110/15/news049.html#l_ksmi2.jpg&_ga=2.242027906.1804220059.1648821105-1242576869.1648821105
payment navi「指先1つで口座を管理できるみんなの銀行が個人向けサービス開始、BaaS事業の展開も視野に」
https://paymentnavi.com/paymentnews/106595.html

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