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データドリブン経営への転換で宅急便を改革せよ!〜DX事例36_ヤマトホールディングス株式会社〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は運送業です。ステイホームが続く中、タナショーも大変お世話になっているヤマトホールディングス株式会社の運送に関するDXです。


配送をDX! データ・ドリブン経営を軸にした取り組み

データドリブン(Data Driven)とは、経験や勘などではなく、データを元に意思決定をする手法となります。主に大量のビッグデータを元にデータ分析や意思決定をすることがありますが、ヤマトはもちろん宅配便等で取り扱う「配送情報」をデータ分析しながら下記の取組を実施しています。

①AIが集荷の電話対応「AIオペレータ」
荷物の集荷を依頼する際、近くの営業所または担当ドライバーに電話をして集荷を依頼しますが、それらを有人ではなく無人AIが対応するサービスとなります。

集荷の電話では、集荷する場所や時間の要望を伝えることで、AIが音声認識しながら集荷依頼を受け付けます。集荷の電話が殺到して有人オペレータが対応しきれず、電話が繋がらない問題を解消することができます。もともと法人の集荷業務にのみ「AIオペレータ」を提供していましたが、好評に付き2021年4月より個人のお客様に対しても提供されるようになりました。

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ヤマト運輸 よくある質問「AIオペレータとはどんなサービスですか?」より抜粋


②「置き配」や「自転車のかご」まで。様々な受け取り方法を直前まで変更できる「EASY」
以前の記事でも紹介したZOZOTOWNまたはメルカリなど、ヤマト運輸と連携したオンラインショップで注文した商品は、受け取りの際に対面はもちろん、自宅敷地内の玄関ドア前やガスメーターボックス、車庫などを受け取り方法として指定することができます。しかも、受け取りの変更が荷物が届く直前まで変更可能なため、例えば「雨が降ってきたから玄関前から車庫に変更したい」や「子供の迎えが発生したので対面から置き配にしたい」などの柔軟な変更が可能になります。

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ヤマト運輸「EASY」より抜粋


③配送に関する全てのデータを蓄えるデジタルプラットフォームで需要予測「ヤマトデジタルプラットフォーム(YDP)」
①のAIオペレータや②のEASYなど、全て配送データを活用した取組ですが、その基盤となるのがこのヤマトデジタルプラットフォーム(YDP)となります。

YDPは顧客やECサイト、製造工場から荷物を受け取る「集荷」や、荷物を保管・配送する「配送」、お客様に届ける最後の「ラストワンマイル」などの全ての配送プロセスで発生するデータを収集しています。このYDPで蓄えられたデータは、データ加工・整形をされた上でデータ分析用基盤「クロネコビッグデータ(KBD)」に集約され、データ分析に利用されます。

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冒頭のデータドリブンの説明にもある通り、ヤマトはこのKBDを活用することで、従来の経験と感ではなく、確たるデータをもとに配送の需要予測をしたり、各業務プロセス単位での最適な人員配置が可能となり、業務効率化・コスト削減が実現できるようになりました。


DXと経営戦略の関連性について

ヤマトHDは2020年1月に経営構造改革プランとして「YAMATO NEXT100」を発表しており、そこでDXを改革の柱の一つとして打ち出しています。

その中で特に優先順位の高い戦略としたのが「データ・ドリブン経営への転換」です。ヤマトHDは2020年度の宅配便取扱個数だけで「21億個弱」という膨大な配送データがあり、このデータをもとに需要や業務量の予測精度を高め、経営資源やリソース配置を最適化するとのことです。

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ヤマトホールディングス株式会社「One YAMATO 2023」より抜粋


巣ごもり需要やステイホームから、ECサイトの利用による「定形サイズではない」小口荷物の配送が爆発的に増えています。法人ではなく個人への配送のため、配送場所も配送時間もバラバラ担っていく中、配送要員の負担も劇的な増加が起きています。
ヤマトHDは配送の第一線に携わる従業員の負担を軽減しつつ、多様な配送ニーズに答えるためにIT活用・データ活用を中心に、新しい「運び方」を作っていこうとしています。


まとめ

いかがでしたでしょうか?経営戦略の話を少し引っ張りますが、ヤマトHDはデータ・ドリブン経営への転換を3つのフェーズに分けました。2021/4までにデータドリブン経営を開始するための準備期間「データ・ファースト」、2024までにデータ・ドリブン経営を本格的に転換し始める期間「トランスフォーメーション」、最後に構築したプラットフォームをオープン化していく「イノベーション」と分けています。

タナショーの記事でも何度か登場していますが、プラットフォームは関係者に使ってもらいその技術を広く公開していくことで、共に新たなイノベーションを作り出していくという「共創」が大事なんだと思います。世界にはGAFAを始め、自社では到底太刀打ちできないと思えるような巨大企業がたくさんいますが、それらに打ち勝つ方法の一つが「共創」や「協業」、「オープン化」でしょう。3人寄れば文殊の知恵ですが、3社も集まればキラリと光るユニークなサービスが作り出せると思います♪
誰かと一緒に仕事をしたり、新しいサービスを作り出していくのは楽しいものです。そんな想いを持つ企業の成長をお手伝いするため、今後もITに関する記事をお届けしていきますので、次回も楽しみにしていただければ嬉しいです!
タナショー


参考にさせていただいた情報
ヤマトホールディング株式会社HP
https://www.yamato-hd.co.jp
ヤマトホールディング株式会社「統合レポート2020 One YAMATO 2023」
https://www.yamato-hd.co.jp/investors/library/annualreport/pdf/j_ir2020_02_00.pdf
ヤマト運輸「EASY」
https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/customer/service/eazy/
CLOUD USER by ITmedia NEWS「データ・ドリブン経営の会社に ヤマトHDの大改革、仕掛け人を直撃」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/11/news001.html#l_kf_yamatonext100_02.jpg&_ga=2.120171528.1887958810.1619787643-1767321528.1619787643
CLOUD USER by ITmedia NEWS「「クリック1つで拡張」 PaaSフル活用、データ分析基盤を構築 ヤマトHDの決断」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/11/news002.html

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