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ITで人の五感を計測し、顧客のココロを揺さぶる「第六感」に刺さるサービスを作り出せ!!〜DX事例42_ユニ・チャーム株式会社〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は紙おむつ、生理用品など衛生用品の生産販売を手掛ける大手メーカー「ユニ・チャーム株式会社」の顧客の”ココロ”を読み解くDXです。


五感の先にある「第六感」とは何なのか?ユニ・チャームのDX事例

ユニ・チャームは顧客の価値の変化や購買行動を捉えるために、「生活者の五感を計測するための取り組み」「五感の先にある、生活者のココロを揺さぶる(=第六感)サービスの開発」を目的とした活動をしています。「ココロを揺さぶる」というのも理解が難しいですが、多様化と細分化が進む顧客のニーズにマッチする商品作りと読み替えてもいいかもしれません。
ユニ・チャームは、この目的を実現するために下記の取り組みや商品展開を行っています。

①商品の口コミや投稿データを分析。消費者インサイトの分析
消費者インサイトとは、消費者の購買行動の奥底にある、消費者が無意識に抱いている本音を指します。昨今の消費者のこだわりの変化や、価値観の多様性により企業は「ヒットする商品」を考え出すのが難しい状況となっています。ユニ・チャームはこの消費者インサイトを分析するために、口コミや投稿データを活用しました。
ユニ・チャームは消費者動向を分析するためにデジタルイノベーションセンター(DIC)を創設しており、SNSやeコマース等の口コミ、投稿データを収集し、発売した商品に関する使用感やニーズにマッチしているかを分析しています。

更に赤ちゃんに紙おむつを履かせた状態で、唾液や脳波、体の動きなどを計測して得られる生体情報分析も行っています。これらの計測と消費者インサイトの分析により、「自分たちの商品サービスが提供したい”価値”が、狙い通り顧客のニーズにマッチしているか」「顧客のココロを揺さぶり好感触を引き出しているか」という効果の検証ができるようになりました。


②子どもが進んでトイレに行きたくなる「ムーニーちゃんとトイレトレーニング」
子どもの成長に伴い、トイレのトレーニングが必要になりますが、トイレトレーニングを始める時期や進め方は、子どもによって違いがあります。このトイレトレーニングは大人の都合で始められるものでもなく、感覚的なところもあり対処が難しいのですが、それをこのアプリが解決します。
「ムーニーちゃんとトイレトレーニング」というアプリは、すごろくのようなごほうびシートのARマーカーと、スマホカメラにより「ムーニーちゃん」がAR表示されトイレトレーニングの応援をしてくれます。

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ユニ・チャーム「トイレアプリ紹介」より抜粋


トイレトレーニングに子どもが関心がない状態であっても、「ムーニーちゃんが応援するとトイレに座ってくれるようになった」などの効果もあるようです。他にもトイレの記録やうまくできて褒めた回数なども記録できるようになっており、子どもが「トイレをしたくなるよう、子どもの関心を引く」ような機能が用意されています。


③人には聞きづらい質問をAIが代わりに回答「大人用おむつNavi」
年齢を重ねていくと大人用おむつを利用するタイミングが来ることもありますが、気恥ずかしさからどう商品を選べばいいのか悩むことも多いです。

ユニ・チャームでは、そんな質問しづらい大人用おむつについて、AIによるチャットボットを用意しています。

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ユニ・チャーム「大人用おむつNavi」より抜粋

「大人用おむつNavi」ではチャットボットが用意されており、始めて大人用おむつを購入される場合のおすすめ商品や選び方を、質問に答えるまたは質問文章を打ち込むことでAIが回答することができます。
また、これと同じように体の成長に伴い突然始まる生理についても、おすすめの生理用品や体への不調へのヒントを教えてくれる「ソフィガール 生理の周期管理・生理日予測が簡単にできる生理管理アプリ」などもあります。

このように、大人用おむつなどの「自身の体調のことなので不安だが、気恥ずかしさもあり他人に相談しづらい内容」に対して、AIやアプリが対応することで質問しやすい環境を用意しています。


DXと経営戦略の関連性について

ユニ・チャームは第11次中期経営計画(FY2021~FY2023)の中で、個人の自立と相互扶助を促す「共生社会の実現」を目標としており、そのための戦略の一つにDX活用を挙げています。

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ユニ・チャーム「第11次中期経営計画(FY2021~FY2023)」より抜粋

また、ユニ・チャームは「共生社会の実現」のために、NOLA&DOLA(ノーラ&ドーラ、Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities )を掲げています。
NOLA:生活者の様々な負担の解消(”不”の解消)
DOLA:生活者の”夢”をかなえる商品とサービスの提供

このNOLA&DOLAを実現するためには、消費者の価値の変化や購買行動を把握すること、そして消費者が感じる「五感」とユニ・チャームが抱える商品・販売情報などの「デジタルデータベース」を組合せ、五感の先にある第六感(感・勘・観)を見極めることが重要だとしています。

ユニ・チャームはデジタルデータとDXを活用しながら、顧客の”ココロ”を揺さぶる商品サービスを展開しようと日々活動しています。


まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回の主旨とはブレるので事例では紹介していませんでしたが、ユニ・チャームは自社の2022年新卒採用において、応募者による自己PR動画をAIが分析するシステムを導入しました。自己PR動画内での対話能力や思考力、などをAIが評価採点するということで、例年数千人の応募がある新卒採用の負担軽減に繋げたいそうです。こちらも面白い事例だったのでせっかくなので紹介しました。

昨今のセキュリティやプライバシー問題にも通じますが、人の感情に配慮した商品やサービスの重要性が高まってきました。「こういう商品・サービスがあれば嬉しい」という正の感情だけではなく、「人を不快にさせないための配慮やセキュリティポリシーがしっかりしている商品・サービス」という負の感情にも対応が必要です。そういった意味で、今回のユニ・チャームの「人のココロを揺さぶる」取り組みはとても良い事例だったかと思います。
次回の記事もお楽しみにしていただければと思います。
タナショー


参考にさせていただいた情報
ユニ・チャームHP
https://www.unicharm.co.jp/ja/home.html
ユニ・チャーム「第11次中期経営計画(FY2021~FY2023)」
https://www.unicharm.co.jp/content/dam/sites/www_unicharm_co_jp/pdf/ir/library/chukei/J_The_11th_Mid-term_Management_Plan.pdf
ユニ・チャーム「トイレアプリ紹介」
https://www.torepanman.jp/ja/toitore.html
ユニ・チャーム「大人用おむつNavi」
https://jp.lifree.com/ja/product/adult/choose/navi.html
日本経済新聞「DXで読み解く顧客の「第六感」」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62832750Q0A820C2000000/
日本経済新聞「ユニ・チャーム、新卒採用にAI活用」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ2613M0W1A220C2000000/


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