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「試着ができない通販」から「試着不要であなたにピッタリな商品を届ける通販」を創り出そう!!〜DX事例34_株式会社ZOZO〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回はアパレルメーカーからです。ファッションECサイトとしてもトップシェアを誇る、株式会社ZOZOの通販に関するDXです。


「通販ではサイズ感が分からない?」を解消、通販でも自分に最適な商品を購入するためのサービス

「現物のサイズ感が分からない」、「試着してみないと自分に合っているか分からない」。これらの理由でアパレル商品を通販で買いづらい人は一定層いますが、ZOZOTOWNではこの問題を解消し、「通販であっても自分に最適な商品を探す」ために以下のサービスを展開しています。


①全身採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」
ZOZOの代表格といえばこのZOZOSUITで、当時は実際に着用してみた記事やツイッターがトレンドになりました。白い水玉模様のついた黒のボディスーツを着用し、スマホのカメラで360度撮影することで全身のサイズが計測できる計測ツールとなります。2020年には、更に高精度な計測ができるよう改良した「ZOZOSUIT2」も発表しています。

初代のZOZOSUITは自社のPB「ZOZO」での購入しか対応できていませんでしたが、ZOZOSUIT2ではパートナーである他ブランド企業にもデータ利用を許可しています。他ブランド企業に対して、計測結果をZOZOTOWNや自社ECサイトにも利用できる「オープン化」のスタンスを取っています。

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ZOZO「ニュース 3D計測用ボディースーツ「ZOZOSUIT 2」を発表」より抜粋


②身長と体重だけで最適なサイズを提案「MSP(マスチサイズプラットフォーム)」
通販サイト「ZOZOTOWN」では従来のS/M/Lのような定番サイズとは別に、「マルチサイズ」という独自のサイズがあります。マルチサイズは選択時に身長と体重を選択すると、自分にピッタリ合った商品サイズが提案されます。これは自社PB「ZOZO」だけではなく、ZOZOTOWNに参加している他ブランドも順次MSP対応を進めています。
アパレル用品はブランドごとに独自のサイズ規格があり試着したらサイズが合わないということも多かったのですが、このMSPによりブランドが異なる商品を購入してもサイズ選びに困らなくなりました。

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ZOZOTOWN「MS マルチサイズ」より抜粋


③アプリが閲覧したアイテムから似ている商品を自動検索「WEAR」のAI検索
「このコーデの似たような柄や形の商品を調べたい」と思ったとしても、洋服は何千何万と種類があり、類似商品を探すのは大変です。ファッションアプリである「WEAR」にはアプリ内で気に入ったコーディネートがあると、そこから似たような商品を検索する「類似アイテム検索」機能があります。これは自分で取った写真から検索も可能です。

この機能は検索したいファッションアイテムの形・質感・色・柄などを元にAIが似ているアイテムを検出するもので、ZOZOTOWNで取り扱う約281万点もの膨大なラインナップから探し出せます。これにより、「親子でお揃いコーデを見つけたい」、「雑誌のスナップと似たような柄や形の商品を一気に見比べたい」などのシーンでお気に入りのファッションアイテムを探せるようになりました。

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ZOZOテクノロジーズ「ニュース コーディネート画像から「欲しいアイテム」が見つかる ファッションコーディネートアプリ「WEAR」に新機能を導入」より抜粋

DXと経営戦略の関連性について

ZOZOは前取締役社長である前澤友作氏が有名ですが、前澤氏が会社を去り後任の澤田宏太氏が代表取締役社長兼CEOになってから、経営戦略のTOPメッセージとして「MORE FASHION ✗ FASHION TECH」を掲げています。
澤田氏はインタビューの中で、ZOZOはIT企業ではなくファッション好きの社員が1000人もいる「ファッション企業」であること、「ZOZOは”ファッション”を打ち出していく」ということを語っています。

従来のトップダウンの組織から、”ファッション好きの社員”たちが自発的に動いていくボトムアップの組織へ変えていく。そこから生まれるファッションに関する宝のようなデータを集め、そのデータをさらにビジネスに活かしていきたいとあります。

ZOZOSUITやMSP、アプリのWEARによるテクノロジーの力で、ユーザが感じている「通販での購入のし辛さ」というハードルを下げ、もっと通販で購入しやすくするための施策を打ち出していくとのことです。


まとめ

いかがでしたでしょうか?
ZOZOはZOZOSUITなど「店舗に行かなくても計測できる」という計測ツールの開発に力を入れていましたが、最近では計測用の紙(マット)とアプリを利用して足のサイズを三次元で計測する「ZOZO MAT」。専用のメガネとアプリを利用して、肌色を計測するメガネ「ZOZOGLASS」も開発しています。

「ZOZOMAT」は足のサイズを測り、最適なシューズを提案。「ZOZOGLASS」は肌色から最適なコスメ商品を提案することができます。どちらも今回の事例で紹介したように、いずれも通販では購入しづらい商品ばかりです。

コロナ禍の中、「現物のサイズ感が分からない」、「試着してみないと自分に合っているか分からない」といった現物ありきの商品の需要は落ちてきています。ですが、通販でも店舗のように「自分に最適な商品を選択・購入できる」体験を作り出すことで需要を掘り起こすことができる事例だったかと思います。
次回も楽しみにしていただければと思います。
タナショー


参考にさせていただいた情報
株式会社ZOZO HP
https://corp.zozo.com
株式会社ZOZO「2021年3月期 第3四半期 決算説明会資料」
https://d31ex0fa3i203z.cloudfront.net/wp/ja/wp-content/uploads/2021/01/J_FY2020-Q3-Consolidated-Business-Results.pdf
株式会社ZOZO「2020年3月期 決算説明会資料」
https://d31ex0fa3i203z.cloudfront.net/wp/ja/wp-content/uploads/2020/04/2003_4Q_J.pdf
ZOZOテクノロジーズ「ニュース コーディネート画像から「欲しいアイテム」が見つかる ファッションコーディネートアプリ「WEAR」に新機能を導入」より抜粋
https://press-tech.zozo.com/entry/20200928_wear
ZOZOテクノロジーズ「ZOZOが推進するアパレル生産のデジタルトランスフォーメーション」
https://techblog.zozo.com/entry/msp-tech
日経XTECH「ZOZOが「ZOZOSUIT 2」を発表、全身採寸にリベンジ」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/09049/
WWD「ZOZO澤田新社長が語った“脱・前澤路線”  原点回帰で「ファッション強化」」
https://www.wwdjapan.com/articles/1016117
日経ビジネス「ZOZO、「脱・前澤氏」は成功したか」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/110600162/

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