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「空気で答えを出す会社」は空気を作るだけではなく、AI人材も育成する〜DX事例15_ダイキン工業株式会社〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteでは経営者にITを身近に感じてもらうための記事や、IT活用のヒント、経営者へのお役に立ちそうな記事をお届けしていきます。

今回はタイトルにもある通り、「空調設備を売るのではなく、空気を提供する」という目を引くビジネスモデル転換をはたして久しい「ダイキン工業株式会社」のAI活用およびAI人材育成についてのDXです。


「空気で答えを出す会社」はAIで何を提供したいのか?

ダイキンのエアコンシリーズの上位機種「うるさらX」には「AI快適自動運転」という機能が搭載されており、人の存在を感知し、室内換気含めて快適な温度・湿度調整をしてくれます。このように、一番目に触れやすいダイキン製品においてもAIは登場していますが、もちろん今回の記事で紹介したいものはそれだけではありません。

そもそもダイキンが提供したいビジョンの中に、「空気」と「環境」の新しい価値で世界に答えを出す、とあります。併せて「環境負荷を減らしながら、人や空間が健康で快適な社会」を実現したいとも言っています。そんなダイキンがAI活用で作り出す「新しい空気」、そして「快適な環境」について事例をあげます。


①NECと共同研究「知的生産性を高める空気・空間ソリューションの提供」
NECの持つAI・IoT技術を活用した取り組みになります。NEC側の個人を特定する顔認証技術、人の行動予測、感情を推定する音声認識技術等を活用し、かつダイキンの持つ空調技術を組み合わせることで、「リラックス×休憩室」「集中×個人席」「活性化×会議室」などの感情を利用して生産性を高めやすい空間を演出します。

②未来のオフィス空間「point 0 marunouchi」で多様な働き方に合わせた空間コンテンツの導入
ダイキン単独ではなく、有志の複数企業による共創プラットフォームプロジェクト「CRESNECT」での実証実験となります。目的に併せた様々なタイプの会議室や仮眠ブース、集中ブース、シャワールームなど、未来のオフィス空間づくりを目的として作られたオフィスです。ダイキンはこのプロジェクトにおいて、オフィス内の空気モニタリング、換気、空気フィルターの提供を行っています。この取り組みでは、オフィス内のエリアごとに温度差・空調のムラを発生させ、人の動きをウォッチし個人の嗜好性をAI判断することにより、その日に仕事をするのに最適な場所を提案する、というような試みを行っています。

参加企業

株式会社オカムラ、ダイキン工業株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、ライオン株式会社、株式会社MyCity、アサヒビール株式会社、TOA株式会社、TOTO株式会社、パナソニック株式会社

③エアコンの修理部品をAIが自動選定するシステム
こちらはダイキンが単独で開発した技術となります。サポート窓口にエアコンの故障連絡があった際、オペレータがエラーコードや故障原因をシステムに入力することで、過去13年間に起きた類似の事案と照らし合わせ、AIが交換部品を自動的に選定するというシステムになります。家庭用エアコンの交換部品は2,000種類にも及び、全てを持ち運ぶこともできないため、今回のシステムで必要な部品を選定できるメリットは大きいです。まだ導入したばかりですが、実際の修理に必要な部品との合致率は80%ということで、大幅なコスト削減が見込まれます。
さらにコロナ禍の中、エアコン修理においても人と人との接触を減らすことが重要ですが、このシステム導入で修理に伴う訪問回数を高い確率で1回に収めることができます。エアコンが適切な換気や空気清浄を行い、故障があっても迅速に修理することでダイキンが目指す「安心で健康な空気空間の提供」の実現に一役買っている形になります

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ダイキンが推し進めているAI人材育成とは何か?

上述の通り、ダイキンは外部との共同研究も積極的に行っていますが、内部の人材育成も積極的です。ダイキンはより高付加価値の空調を社会へ提供していくうえで、AI・IoTの技術を重要視しており、「ダイキン情報技術大学」と銘打ち、大阪大学の全面的な協力を得て、AI人材の育成を推し進めています。

2019年の記事情報なので現在は違うかもしれませんが、なんと「新入社員は2年間は仕事はしなくていい」とまで言い切っており、この「ダイキン情報技術大学」で2年間、AI分野の技術開発や事業開発のための講座受講に専念することになります。もちろんダイキンの空調などのコア技術も学びつつ、「生産効率向上」「ルームエアコンの販売予測」など、自社事業に直結したテーマで演習を行うことで、体系的なAI知識を持ち、ダイキン社内の、そしてひいては社会全体のさまざまな課題解決に寄与する「高度AI専門人材」を育成したいと謳っています。

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ダイキン工業株式会社情報誌「Challenge 第4号2020.01」より抜粋

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回はAIを活用したサービス事例だけでなく、AI人材(=DX人材)の育成というところにもフォーカスを当てた内容となりました。
今回の記事からも分かるように、ダイキンはAI活用は自社リソースに頼るだけでなく、多様な関連企業・大学と連携しています。そして人材の育成についても大阪大学の協力を得ています。

DXを推進する場合、DX人材を確保したり育成するのが課題の一つとなりますが、今回のダイキンのように、人材育成についても外部と連携して育成を進める、というのは有効な手段と思いました。DX、というかIT技術というのは潰しがきくもので、基本的な技術はどの企業でも応用できるものです。「その基本的な技術をどう自社の商品や業務と結びつけていくかが重要」というのは勿論あるのですが、その技術自体は外部リソースも頼りながら確保・育成していくのがDX推進の近道なのかもしれませんね。
次回も楽しみにしていただければと思います。
タナショー

参考にさせていただいた情報
ダイキン工業株式会社HP
https://www.daikin.co.jp
ダイキン工業株式会社情報誌「Challenge 第4号2020.01」
https://www.daikin.co.jp/tic/magazine/pdf/challenge202001.pdf
ダイキン工業株式会社「サステナビリティレポート2020」
https://www.daikin.co.jp/csr/report/
DX Lab Blog「DX銘柄2020 ダイキン工業の取り組み」
https://bainc.co.jp/dxblog/7118/
point0 marunouchi
https://www.point0.work/#/space
東洋経済ONLINE「ダイキン新卒100人「仕事しなくてOK」のなぜ」
https://toyokeizai.net/articles/-/271400
日本経済新聞「ダイキン AIが部品選定、エアコン修理を一発完了」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60155110Z00C20A6LKA000/




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