見出し画像

モビリティを支える「タイヤ」データで新たな価値を創り出せ!〜DX事例10_ブリヂストン株式会社〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteでは経営者にITを身近に感じてもらうための記事や、IT活用のヒント、経営者へのお役に立ちそうな記事をお届けしていきます。

今回はタイヤメーカーといえば、必ず代名詞としてあがるでしょう。また、Maasといえばトヨタが有名ですが、意外とITを使ったモビリティサービスの先駆者としては、タナショーはこちらの会社のほうが印象強いです。今回は「株式会社ブリヂストン」のタイヤを使ったモビリティサービスのDXです。


タイヤという「モノ」を売らずに「移動するコト」についてのサービスを売る

2020年5月から日本航空(JAL)と共同で、航空機用タイヤの交換時期を予測するIoTシステムを開発しており、本格運用を始めています。機体ごとに異なる航空や滑走路を走るため、タイヤの摩耗度に応じたタイヤ交換は経験則に頼る事が多く、整備費用ならびに人件費がコントロールしづらかった課題に対応したシステムとなります。今回開発したシステムでは、航空会社が持つ離着陸時の気象状況や路面状況といったデータや、フライトデータ、整備士が確認しているタイヤの磨耗状況のデータをもとに、タイヤの減り具合を算出し効果的なタイヤ交換を行うといったサービスになります。

また航空機に限らず、ブリヂストンは2007年頃からトラックなどの長距離移動を事業とする企業に対して、新品タイヤとリトレッドタイヤ*の定期点検および交換をパッケージ化したTPP(トータルパッケージプラン)というサブスクサービスを古くから展開しています。TPPの導入実績は2018年末時点で全国660社、3万5000台にも及び、ブリヂストンの大きな収益の柱となっています。併せて、建設・鉱山車両用の大型タイヤなどにはセンサを取り付けてモニタリングするサービスも行っています。
*リトレッドタイヤ:すり減ったゴム部分を張り替えることで、新品同様の性能にリストアしたタイヤ。省資源かつ新品タイヤより安い。

01.サービス

どのサービスにも共通することですが、利用者側からするとメンテナンスや部品代などの、走路や時期などでコスト予測がしづらい箇所に対して定額化できること整備するための人員を用意しなくてよいこと、というメリットがあります。

また、ブリヂストンとしても従来の「タイヤを売る」というモノから、「安全に走行するためのサービス(タイヤ販売も含む)」というコトに転換することで、従来より付加価値の高い商品サービスを展開することができるようになっています。


DXと経営戦略との関連性について

DXと経営戦略との関連性ですが、2019年12月に発行されたサステナビリティレポートから読み取る事ができます。ブリヂストンは2031年の創業100周年、そして2050年に向け、サステナブルかつ社会価値・顧客価値を提供している会社をビジョンとして、「タイヤ・ゴム事業」「タイヤセントリックソリューション事業」「モビリティソリューション事業」を軸としたサービス提供に注力していくことを中長期事業戦略として謳っています。

タイヤセントリックソリューション事業:タイヤのメンテンナンスをシステム化・アウトソース化することで、タイヤの性能を最大限に発揮しトータルコストを改善するためのサービス

02.タイヤセントリック

ブリヂストン「サステナビリティレポート2019-2020」より

モビリティーソリューション事業:タイヤセントリックソリューション事業などで蓄積したタイヤデータ・走行データを活用し、安全性工場や経済性を高める「新しい価値」を提供するサービス

03.モビリティ・ソリューション

ブリヂストン「サステナビリティレポート2019-2020」より


本レポートでは、タイヤ・ゴム事業をすべての事業戦略のベースとしての「コア事業」、そして「成長事業」としてタイヤデータやモビリティデータを活用して新たな”価値”を想像し、”価値”を売るソリューション事業に進化することとしています。タイヤを通して得られる全てのデータを、ITを使ってフル活用していくことが事業戦略ということですね。


まとめ

いかがでしたでしょうか?サステナビリティレポートにもありましたが、ブリヂストンは、

①タイヤ・ゴム事業で「”モノ”を創って売る」
②タイヤ・ゴムから得られるデータで新たな高付加価値なサービスを作り「”価値”を創って売る」(=タイヤセントリックソリューション)
③高付加価値なサービスを活用して、他の事業や領域へ転用できるシステムを作り「”システム価値”を創造して売る」(=モビリティ・ソリューション)
としています。

前回の記事のコニカミノルタのDX事例でもありましたが、DXの取り組みで生まれたシステムを新規領域へ転用していくのは、新たな商品サービスや新規事業を作りだす際に有用な手段だと思います。ゼロから作り出す新規事業と違って、開発コストや体制を整える手間も少なくチャレンジしやすいかと思います。


DXでよくあるのが、自社が取り扱っている商品や商品データを活用してDX施策を行うことです。自分の会社でも新しいビジネスに転用できそうな”データ”がないか、ぜひ探してみてください♪
今回の記事は以上です。次回もよろしくお願いします!
タナショー


参考にさせていただいた情報
ブリヂストン株式会社
https://www.bridgestone.co.jp/index.html
ブリヂストン株式会社「サステナビリティレポート2019-2020」
https://www.bridgestone.co.jp/csr/library/pdf/sr2019.pdf
日本経済新聞「ブリヂストン、「賢いタイヤ」が燃費改善を提案」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO61501300U0A710C2TJ1000?type=group&s=4
MONOist「「タイヤを売るだけでは生きていけない」ブリヂストンが抱える“強烈な危機感” 」
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2007/10/news070.html



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?