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そして、分析プロセスへ

UCI Lab.の渡辺隆史です。
いま、京都から自宅に戻る新幹線の車内でこれを書いています。

「行けばわかる」わけではないけれど。

10月と11月、プロジェクトメンバーは宮城県と広島県に赴きました。
緊急事態宣言の間にオンラインでお伺いしたお話は、たくさんのはっとする気づきがあり、どれも深く胸に響くものでした。

しかし同時に、聴いている私の側に限界を感じてもいました。画面越しに当時の現場の状況や皆さんの創造的な対応をお伺いすればするほど、「現場をまだまだわかっていない私たちに、何かソリューションを考える資格があるのだろうか」「本当に、現場の状況や気持ちに寄り添ったデザインができるのか」という意味での距離感、もどかしさのようなものです。

もちろん、だから「現地に行けばわかる」というほど話は簡単ではありません。

たとえ現地に身を置いても、何を感じて受け取ることができるかは、その人の態度やまなざしなど様々な要素で大きく異なります。私自身、現地に行ってもやはり己の能力の限界を思い知らされました。そしておそらく、被災や支援の現場を経験していない私たちがどれだけ努力しても、「わかる」という言葉は決して使えないのでしょう。

 分けるのではなく、寄り添い解釈していく

だからこそ、ここからの地道で多角的な分析プロセスが重要になります。
まずは、自分たちが現地に赴いて当時と現在の状況を感じて、皆さんの声を聴く。そして、それらを曖昧な記憶ではなく、ビデオや発言録などすべての記録を複数人で振り返りながらそれぞれの立場からの解釈で議論し言語化していく。

こうした対話の過程を経て、現地で受け取ったひとつひとつの気づきは、もはや単なる情報ではなく、より多くの意味や文脈を圧縮した温度感のあるものになっていきます。次に、それらを大きな全体像としてまとめて、今回フォーカスするエリアを検討していきます。具体的なアイデアを考えていくのは、それらを経た後、もう少し先のプロセスです・・・。
このように、丁寧にきめ細かく理解しようとすることで「自分の地域で災害が起き、自分が避難所にいたら」という状況をより立体的に想像して、そこから何かを立ち上げることができるのではないか。そう願いながら、プロジェクトは分析工程に進んでいきます。

フィールドワーク以降、大学の研究室では先生方や学生の皆さんが途方もない時間をかけて、現地の記録に基づく「発見クリップ」の作成を進めていました(発見クリップの工程や目的について詳細はこちら)。そしてこれから、それらのクリップと動画に基づき、現地フィールドワークまでに作成されていた分析マップがさらに更新されていきます。

今日(12月10日)は、大学の研究室で発見クリップの共有とカードソートのワークが行われており、私も京都でその工程に参加してきました。今日のワークで理解が大きく進んだ部分もあれば、一方でもう一度発見クリップの精度から見直す部分もでてきました。それら具体的な内容については、またプロジェクトが進んだどこかで、改めて共有していきたいと思います。

こんなふうに、私たちのプロジェクトは、コロナの影響や現地で受け取ったことを踏まえて、スケジュールや航路をその都度修正しながら、少しずつ、でも着実に歩みを進めています。引き続き、暖かく見守っていただければ幸いです。 


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