「感傷」
保険証が、私1人のものになったとき、
「あぁ、一人で生きていかなければ」
という恐ろしさと感傷が私を襲った。
もう随分、前の話だ。
手続きひとつで、特に変わったことはない。
利便性を優先しただけ。
家族じゃなくなったわけじゃない。
この世界にはありふれた、よくある話。
けれど、どうしようもなく、
ぽつんとした、"一人" を意識してしまう。
その日、私は、ひとりぼっちになった
カードの名前を眺めて、
寒々しい覚悟を決めるしかなかった。
分かちあえばふっと消えてしまうような儚い感傷を、一人、胸に抱えていく覚悟だった。
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