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【生き物からのラブレター#12】かわいいかわいいウニの妖精

一度でいいから見て欲しい!と思うのがウニの発生である。

高校生物を履修したなら誰もが習うはずのウニの発生。卵が受精し、卵割を始め、陥入、孵化した後も形を変えプルテウス幼生になるというやつだ。

いくら流れを知っていても、写真で見ていても、ホンモノには叶わないと心底感じたものの一つだ。

発生とはまさに命が創られていく過程。これほど神秘的なものはなく、発生学に魅了される人が多いのも頷ける。

しかしやはりそうそう簡単に見られるものではない。発生の早いウニでもすべての行程を見届けるには3〜4日間こまめに観察しなければならないのだ。

私にそのチャンスがやってきたのは佐渡での臨海実習の時だった。


まずはバフンウニに卵と精子を放出させる。ウニは簡単に放精放卵させることができること、卵も適度な大きさかつ半透明で観察しやすいこと、発生のスピードが速いことなどから観察にはうってつけの材料だ。

シャーレに取った卵に精子の入った海水をほんのほんの本当にほんの少しだけ加える。すると、卵のある一か所から受精膜と呼ばれる薄い膜が広がり始め、見事に卵を包み込む。当たり前だが受精できるのは何億個のうちたった一つの精子だけ。そして受精後は他の精子を拒むように受精膜でガードされるのだ。

この受精膜が立ち上がってくる様子がなんとも美しい。真ん丸の卵を真ん丸の膜が包み込む。一瞬のその過程が生命の第一歩の瞬間として私の心に深く刻まれた。

その後の怒涛の展開も感動の嵐だ。卵が2つへ、4つへ、そして8つへと割れていく。どうしてこんなことが勝手に進んでいくのか不思議でたまらない。いくつへ割れたのか分からなくなり、円状に並んだなと思っていると、なんと!あの受精膜を破って泳ぎだした。

あんなに過保護に育ててたのにぃ!と思いつつ、孵化した後はシャーレの中を泳ぎまわるので、なんだか一段と可愛く見えてくる。

お次は陥入。陥入は外側に円状に並んでいた細胞を内側へ入れ込み、また外側へ貫通させる。つまり、お尻と口を作る作業だ。この一大作業は非常にダイナミックでおぉ!がんばれぇ!と声を上げずにはいられない。

陥入が済むと、色々な器官が作られていき、いよいよ人間・・・じゃないや動物らしい体つきになってくる。ここまでで約3日!

最終日の4日目、さてウニはどうなったかと顕微鏡をのぞいてみるとそこには見事なプルテウス幼生がいた。しかも顕微鏡の円形の視野の中をクルクルと回って泳いでいる。

か、かわいすぎる!!!!!!!!!!

プルテウス幼生は両手をバンザイしたクリオネのような形をしていて、まさに妖精!顕微鏡の視野から出て行ってもいいはずなのにずっとそこに居てくれるのがまたたまらない。

ありがとうありがとう。生命の神秘を目の当たりにした感動と我が子を見送るような気持ちでいっぱいになりながら佐渡を後にしたのでした。



☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

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