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それでいいのか、シオマネキ!俺の嫁は発泡スチロール【生ラブ#22】

ハクセンシオマネキという生き物を知っているだろうか?
かんたんに説明すると、干潟にいる片方のハサミだけが大きいカニだ。

シオマネキという名前は、この大きなハサミを“潮を招く“ように振る行動に由来する。
また、ハクセンは“白扇“。繁殖期になるとこのカニは色が白くなる。白いハサミを扇に見立ててハクセンシオマネキというわけだ。

見た目も名前も実にシャレている。私のお気に入りの生き物の一つだ。


私がハクセンシオマネキに初めて出会ったのは、熊本大学の実験所での実習のとき。

熊本に面する有明海は、潮の引きがハンパじゃない。さっきまで海だった場所が、潮が引くと見わたす限りの砂地になる。水はどこにいった!これは実際に見ないとなかなか味わえない感動だ。

そうして現れる広大な干潟に、ポツポツと白い動くものが出てくる。これが今回の主役、ハクセンシオマネキ!一度見つけると、あれも?これも!?とあたり一面シオマネキだらけなことに気づく。

シオマネキのなかまは、砂の中に巣穴を掘ってすんでいる。潮が引くと、巣穴から出てきてお食事タイムの始まりだ。でも警戒心が強いので、歩いて近づくとあっという間に巣穴に引っ込んでしまう。

だから座ってジーッと待つ。ここは我慢くらべ。するとゆっくりゆっくり、あたりを確認しながら出てくる。ひっきりなしに口に砂を運び、砂ダンゴを量産。コロコロした砂ダンゴも、せわしないシオマネキもどちらも愛らしい。

これだけでも永遠にながめていられそうだ。しかし、もちろんこれだけではない。ここで例の発泡スチロールを使った実験を始める。


実は、ハサミが大きいのはオスだけ。そして、“潮を招く”ウェービングと呼ばれる行為はメスへの求愛ダンスなのだ。

オスはメスを見つけると、メスに向かってウェービングを始める。そして自分の巣穴に誘い込むことができると結婚成立♡というわけ。つまり、潮招きじゃなくて“メス招き“。その様子を見ていると、私には「こっち来いよ!」というイケメンボイスが聞こえてくる。

そこで、適当な大きさに切った発泡スチロールをはりがねに刺して、オスの目の前で動かしてみる・・・。

大きすぎるとダメ、小さすぎてもダメ。でも実際のメスと同じくらいの大きさの発泡スチロールに対してはウェービングを始めたではないか!ダマされてる!

ちなみに赤や青、黄色に着色したものだと反応しない。これは理由が明確で、ハクセンシオマネキが白くなるのは成熟したサイン。白いのが大人の証。

だからといって、小さくて白けりゃなんでもいいのか!雰囲気しか見てないのかよ〜と呆れながらも、面白くてやめられないのだった。


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