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【生き物からのラブレター#20】ホタルイカの旬を私は決して忘れない

大学4年の3月。ささやかな卒業旅行に私は新潟から富山へと向かった。

友人に車を借りて海沿いをのんびりとドライブ。部活の遠征などで長野や石川へは何度か行ったことがあったのだが、富山はお隣にも関わらず立ち寄ったことがなかったのだ。

縦に長ーい新潟県。なかなか新潟から抜け出せず、やっと抜けたと思うと富山は一瞬。気づいたら通り過ぎている感じだったので、一度くらいゆっくり堪能してみたいと思っていた。

とは言っても北陸で3月はまだ冬。黒部ダムも雪に閉ざされトロッコにも乗れない。それでも私には温泉の他にも非常に楽しみにしている場所があった。

それが滑川市ほたるいかミュージアム!

能登半島に囲まれた富山湾。実は沿岸から急に落ち込むすり鉢状の面白い形をしており、深海生物がたくさん生息することで有名だ。

全身を発光させる小さなホタルイカもそのひとつで、普段は深海に棲んでいるのだが春になると集団で沿岸に押し寄せてくる。青白く光る海は幻想的でとても美しいらしい。この世界でも珍しいホタルイカの群遊海面が見られるのが富山湾なのだ。

光る!カワイイ!そして美味い!
こんな魅力的な生き物がいるだろうか。実物を見ないわけにはいかない。

そしてほたるいかミュージアムでは、ホタルイカの発光ショーが見られるとな!期待に胸を膨らませ、意気揚々と向かったのだが・・・。

なんとその日はホタルイカ漁解禁一週間前。ホタルイカが採れるのは一週間後!発光ショーはやってません!うそでしょ。

そんなバカな。。。しかも漁がまだ行われていないので、売店で売っているお目当てのホタルイカの沖漬けも去年のもの。うそでしょ。

ホタルイカ漁を模した船の模型の写真スポットで、むなしく大漁旗を掲げて記念撮影をして帰ってくることになった。私が見れたのは青いLEDの光だった。

それでももちろん色々な展示があり、ホタルイカや富山湾、深海について学ぶことができた。この辺では海洋深層水を汲み上げているらしく、その過程で採れた深海生物の展示なんかもあり、ズワイガニやビクニンの仲間に触れたり、楽しいところなのは間違いない。

ただ、ホタルイカが見れなかったことが悔しすぎた。

極めつけはその帰り道。東日本大震災が起こったのだ。北陸はそこまで揺れなかったうえに車に乗っていたので、体感はほとんどなかったのだがテレビで見る惨状に空いた口が塞がらなかったことを覚えている。

そんなわけで、ホタルイカの旬は私にとって忘れたくても忘れられないものとなってしまった。

自然の恵みと自然の脅威。それらは表裏一体、人は自然に生かされているのだ。感謝と畏怖の念、どちらも忘れずに海と付き合っていきたいと思う。

そして今度は発光ショーではなく、海で自分でホタルイカを採ってやる!とリベンジに燃えているのだった。


☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

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