しくじり商品研究室:デダチャイ・ストラーダ
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
デダチャイ・ストラーダの例
デダチャイ・ストラーダとは
デダチャイ・ストラーダは、イタリアの自転車部品メーカーのデダチャイ(Dedacciai)がそれまでOEM供給してきたフレーム技術を活用し、自社ブランドとして発売したロードバイクのフレームブランドです。
複数の商品が発売されていますが、ここでは、一連の商品をまとめて扱いたいと思います。
デダチャイ・ストラーダは2010年に立ち上げられていますが、2020年頃には、日本国内で新商品の発表はなくなり、実質撤退している状況です。
何を隠そう、所長の私自身が所有している自転車がこのデダチャイ・ストラーダの自転車なのですが、同じブランドの自転車に乗っている人に滅多に合わないので、しくじり商品として取り上げました。
しくじり理由
①ブランドと技術の親和性がない
「デダチャイ」という名前を聞いたことがある人は、確実に自転車好きです。自転車のフレームの中でも、鉄やアルミのフレームは、筒状の部品を組み合わせ、溶接して作ります。
デダチャイは、このフレームの材料となる鉄やアルミのチューブ(筒)の供給で名を馳せたメーカーです。かつてはプロが使う自転車のフレームにもデダチャイのチューブが使われていました。つまり、金属の部品供給で有名なメーカーです。また、ハンドルやシートポストといった金属部品の製造でも有名です。
ところが、最近のスポーツ自転車では、金属よりも軽く、より強度の高い炭素繊維を使ったフレームが主流になっています。
この状況に対して、デダチャイではカーボンフレームを製作し、OEMでメーカーの供給を行っています。そこで培われた技術を活用し、自社ブランドとしてフレームの販売を始めたのが、今回の「デダチャイ・ストラーダ」です。
しかし、先述の通り「デダチャイ=金属」のイメージが強いのです。確かに、カーボンフレームのOEM供給を行っていましたが、その際には「デダチャイ」の名前が表に出ることはありませんでした。
結果、「金属メーカーのデダチャイがなぜカーボンをフレームを作るのか?」もっというと「金属メーカーのデダチャイのカーボンフレームを買う意味」を消費者が見出すことができませんした。
②プロによる性能の裏付けがない
入門者は別として、高価なロードバイクに乗る人は、基本的に「より遠くに、より楽に、より速く行く」ことを目標としています。その対象は平地であったり、山道であったりと様々ですが、その究極が「ツール・ド・フランス」などのプロレースです。
「ツール・ド・フランス」では、23日間で3,300km前後、高低差2,000m以上という起伏に富んだコースを走る、世界一の自転車のレースです。野球のWBCや、サッカーのワールドカップ、その他オリンピックや世界大会、にあたるイベントです。当然、優勝したプロが乗る自転車は、注目の的になり、ブランドイメージに影響しますし、実際に各メーカーがプロへ自転車を供給し、競争を繰り広げています。
かつての金属フレーム主流の時代において、デダチャイのチューブは、優勝したプロの自転車に使われていました。この実績があったからこそ、デダチャイのブランドイメージが培われています。
しかし、デダチャイ・ストラーダはこのプロによる実績がありませんでした。ここでもやはり、「金属メーカーのデダチャイのカーボンフレームを買う意味」を消費者が見出せなかったのです。
なぜ、私はデダチャイ・ストラーダを買ったのか?
ここまで来ると、なぜ私がデダチャイ・ストラーダの自転車を買ったのかが気になるかもしれません。
その理由は以下です。
①デザインがシンプルだったため
②人と違うブランドの自転車だったため
③金属メーカーとは、知られたメーカーの安心感があったため
特にデザイン面が大きく、フレーム、ハンドル、シートポストなど、すべて同じロゴで揃う、という見た目を重視していました。
つまり、性能やブランドイメージよりも、デザイン性を重視する、変り者だった、というのが理由です。(このような変り者はそう多くはいないので、なかなかヒット商品にはなりにくいでしょう・・・)
なお、デダチャイが自社ブランドで商品を展開する上では「キャノンデール」というメーカーの自転車のやり方が使えただろうと考えています。
キャノンデールは、カーボンフレームも作っていますが、アルミフレームにも力を入れています。CAADシリーズは、カーボンフレームよりも安価なアルミフレームでありながら、カーボンフレーム並みの性能を持つことから「カーボンキラー」と呼ばれています。
デダチャイも、金属フレームメーカーの知名度とノウハウを活用し、カーボンフレームと張り合えるフレームを展開していたら、「元祖カーボンキラー」と呼ばれていたかもしれません。
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