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ヒットの手がかり:古きを見直す

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品がヒットした要因を独自に分析、その中から一つを、”ヒットのヒント”として解説します。
今日は「Get Navi」2024年1月号、「2023爆売れヒットセレクション」の中から日立の「かるパックスティック PKV-BK3K」を見ていきたいと思います。

(トップ画像引用元:https://store.kadenfan.hitachi.co.jp/store/g/g186203/

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がればと思います。

かるパックスティック PKV-BK3Kについて

「かるパックスティック PKV-BK3K」は、日立が2022年の12月の発売した、スティックタイプの掃除機です。最大の特徴は、ごみを集めるのが、ダイソンのようなサイクロン式ではなく、紙パック式になっていることです。
これまでの日立のスティッククリーナー同様に高い集塵性と、擦ったゴミは紙パックを捨てるだけで済む、メンテナンスの楽さを持ち合わせた商品になっています。

サイクロン式の掃除機のようにダストケースを洗ったりする必要がない
(画像引用元:https://store.kadenfan.hitachi.co.jp/store/g/g186203/)

ヒットの手がかり:古きを見直す

「かるパックスティック PKV-BK3K」の最大の特徴である紙パックですが、技術としては新しいものでもなんでもなく、かつては掃除機で主流で使われていたものです。
一方のサイクロン式掃除機は、(ダイソンによる)吸い込みが持続するイメージ、紙パックを購入する手間・コストが掛からないという点から、紙パック式に取って代わっていきました。
ダイソンが日本市場に入って来たことで、掃除機市場はサイクロン式が主流になり、ピーク時で販売の6割~7割ほどがサイクロン式になったと言われています。その後、掃除機の小型化とコードレス化が進み、現在のスティッククリーナーが主流となるのですが、ここでもダイソンの存在が大きくサイクロン式が主流となっていました。

店頭ではサイクロン式の掃除機が多数並ぶ
(画像引用元:https://dempa-digital.com/article/317817)

では、なぜこのタイミングで紙パック式の掃除機を日立が出してきたのでしょうか。変化していく掃除機のニーズに対して、紙パック式が合致してきたからです。
まず、アレルギーやその原因となるハウスダストへの意識の高まりが挙げられます。サイクロン式ではせっかく集めたハウスダストもゴミ捨ての際に舞ってしまいますが、紙パック式では取り出した紙パックをそのまま捨てれば良いので、ゴミが舞う事もありません。
次に、時短ニーズの高まりが挙げられます。サイクロン式では時々ダストケースの清掃・水洗いが必要になりますが、紙パック式であれば、紙パックを交換するだけで済みます。

吸ったゴミが舞うことなく、紙パックの交換だけでメンテナンスが済む
(画像引用元:https://store.kadenfan.hitachi.co.jp/store/g/g186203/)

また、紙パックはサイクロン式に比べ、部品点数が少ないため、掃除機本体を軽くすることができます。都度手軽に掃除をするために掃除機も軽いものが良い、というニーズに対してもサイクロン式より紙パックの方が都合がよいわけです。

デメリットが目立ちにくくなった

ここまで紙パック式のメリットが時代の変化にマッチしたという点を挙げてきましたが、同時にデメリットが目立ちにくくなっていることも大きいです。
紙パック式掃除機の最大のデメリットが紙パック購入のコストですが、かつては掃除をするために仕方なく変える必要があるというマイナスな印象でしたが、時短ニーズが高まりで「時間をお金で買う」という意識へ変化しています。
また、吸い込み性能の持続に関しても、技術的で解決しています。特に流路の設計はかつての掃除機でも使われていた技術を、新しい技術のように紹介してイメージを変化させようとしています。

流路の設計で吸い込み性能も向上

さて、このように、かつての技術を改めて採用してみる、というのも企画のヒントになりそうです。
今回の「かるパックスティックPKV-BK3K」については、これまで紙パック掃除機の実績がある日立の強みを活かしたものになっており、サイクロン式の技術しか持たないダイソンやシャークといった海外メーカーがマネできないこともポイントです。
世の中のニーズが変化した結果、紙パック式が実はソリューションとして優れていた、という例になります。世の中の変化と、かつての技術のメリットとデメリットの合致がポイントになります。


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