見出し画像

ヒットの法則:1+1=2の法則

「アイデアは既存の要素の組み合わせ」と言われます。
一方で、要素を組みわせた新しいアイデアであるはずの新商品も売れるものと売れないものがあります。これらを分けるものは何なのか、探ってみます。

任天堂Switchの例

任天堂Switchは皆さんもよくご存じかと思います。
ここでは、わかりやすい例として任天堂Switchを分析、解説していきます。
「Splatoon」や「ゼルダの伝説」などの魅力的なソフトや、コロナ禍での巣ごもり需要が販売を後押ししたこともありますが、商品として最も本質的なヒット要因は何でしょうか。

「1+1=2の法則」

任天堂Switchのコンセプトは「持ち出せる据え置きゲーム機」と表現できます。「携帯ゲーム機の持つ価値」と「据え置きゲーム機の持つ価値」を足したものが任天堂Switchです。このような「何かと何かを足して、新しい付加価値を生み出す法則」を「1+1=2の法則」と呼びたいと思います。

さて、任天堂Switchでは、「携帯ゲーム機の持つ価値」と「据え置きゲーム機の持つ価値」を足すことで、本格的なゲームが、いつでも、どこでも、だれとでも楽しめるようになり、以下のようなメリットが生まれるでしょう。

・親にとっては、様々な機能を持つスマートフォンではなく、ゲームという機能に絞られた、より安全と思われる娯楽を子供に与えることができます。
・一般ユーザーにとっては、場所に関係なくいつでも同じゲームが遊べます。従来の携帯ゲーム機ではソフトが据え置き機とは異なるので制約がありました。ゲームをやりこむ際には効率が良いでしょう。

任天堂Switchの競合商品としては、業界競合ではプレイステーションや、ゲーミングPC、近い価値を提供する競合商品ではスマートフォンがあげられますが、上記のメリットをすべて満たせるのは任天堂Switchしかありません。
つまり、「携帯ゲーム機の持つ価値」と「据え置きゲーム機の持つ価値」を足すことで、他にない新たなメリットを生み出したのが、任天堂Switchのヒットの要因と言えるでしょう。それまで、用途によって分かれていた3DSのような携帯ゲーム機と、WiiUなどの据え置きゲーム機が合わさることで、より広いシーンに対応できるようになったとも言えます。

「1+1=2の法則」の裏にあるもの

その一方で「1+1=2の法則」は実践が難しい法則です。数学では当たり前の「1+1=2」ですが、商品企画の世界では、合計を2にするのが難しいのです。
二つの要素の良いところを足し合わせたつもりが、両方のデメリットも受け継がれて「1+1=1」の中途半端な商品や、ひどいものでは1未満のメリットのない商品になってしまうことが多々あります。

任天堂Switchの場合、類似の価値を提供する競合としてスマートフォンの存在が大きかったであろうことは容易に想像できます。しかし、スマートフォンと据え置きゲーム機の足し算ではなく、あくまでもゲームに的を絞り、「携帯ゲーム機の持つ価値」と「据え置きゲーム機の持つ価値」を足し算したことで、性能面やゲームの操作性はもとより、提供価値でもスマートフォンと差別化を行いました。あくまでも、自分たちの得意なゲームという分野でスマートフォンと対峙したことが、「1+1=2」の実現に貢献していると考えられます。

また、任天堂はWiiの時代からゲーム人口の増加をテーマに、健康イメージを打ち出した「Wii Sports」などで、ファミリー層やこれまでゲームをやらなかった人へのアプローチに注力してきました。任天堂が培ってきたユーザー層のニーズと任天堂Switchの提供価値が合致していることも大きな要因でしょう。

さらに、任天堂Switch本体がどんなにすばらしいものでも、「Splatoon」や「ゼルダの伝説」などの魅力的なソフトの存在がなければヒットにはつながらなかったでしょう。
ユーザーを開拓し、そのユーザーに任天堂Switchの魅力を引き出し、提供する、任天堂の総合力あってこそのヒットといえます。

「1+1=2の法則」は商品のみでは実現しない

「アイデアは既存の要素の組み合わせ」であることから「1+1=2の法則」はヒット商品を生むうえで最も基本的な法則と言えるでしょう。
ただし、やみくもに何かと何かを足し算しても、新たな価値を生むとは限りません。商品の機能・性能面だけではなく、顧客やユーザーにとってのメリット、さらには販促や販売方法など、広い視点でマーケティングを考える必要があります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?