見出し画像

しくじり商品研究室:ペッパーくん

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.softbankrobotics.com/jp/product/consumer/spec/

ペッパーくんの例

ペッパーくんは、ソフトバンクグループが開発し、2014年に販売が開始された、感情を認識する人型ロボットです。人と自然にコミュニケーションを取ることを目指し、教育、接客、介護など様々なシーンでの活用を想定して開発されました。一時期かなり話題になり、様々な店舗で見る機会もあったので、多くの方がご存じで、実際に触れたことがある方も多いかと思います。

店頭の接客で見る機会も多かったペッパーくん
(画像引用元:https://www.softbank.jp/robot/)

しかし、2021年には生産中止が発表され、最近は店頭で見る機会も減りました。ペッパーくん自体がサブスクでのビジネスに移行している面もあるので、一概に判断はできないのですが、一時の話題で店頭から消えていった背景を見ていきます。

しくじり理由

ペッパーくんが消えていってしまった理由は、対応業務が受付業務の範囲を超えなかったからです。
その理由は主に二つあります。

①情報の仲介役でしかない

ペッパーくんは胸元のタッチパネル画面に様々な情報を表示し、コミュニケーションを取ることができます。また、頭部の音声マイクにより、会話を認識し、口頭でのコミュニケーションも可能です。しかし、ペッパーくん自体ができるのは、店舗の入り口で、顧客の来店目的などの情報を取集し、その情報を実際に対応する人に伝えるまでです。ペッパーくん自体が接客をすべて対応したり、何かサービスの提供を行うことは難しく、店舗で人に代わって担当できる業務は一部にとどまります。主業務まではこなせないわけです。
このような状況では、ペッパーくんである必要性はなく、受付端末で十分代替できてしまいます。

②カスタマイズには知識が必要

ペッパーくんはアプリによるカスタマイズができる。
(画像引用元:https://www.softbank.jp/robot/consumer/roboapp/)

ペッパーくんは、アプリをダウンロードしたり、プログラミングによって、機能を拡張、カスタマイズすることができます。スマートフォンや、パソコンのようですね。
ソフトバンクでもベーシックアプリとして様々なアプリが用意されています。

しかし、店舗や業務に特化したカスタマイズをしようとすると、アプリそのものの開発や、プログラミングが必要になります。
例えば、アンドロイドアプリは誰でもGoogle Playに登録・販売できますが、アプリの開発には知識が必要です。ペッパーくんも同様になるでしょう。プログラミングは、ChoregrapheやC++、Pythonといった言語になりますが、当然いずれも知識ゼロではプログラミングできません。
冒頭でも書いた通り、ペッパーくんは、人間の感情を認識、コミュニケーションを取ることができるロボットです。限られた業務内であっても、上手くカスタマイズできれば便利に使える可能性がありますが、そのためには使用者にある程度の知識が必要になります。一方で、その知識がなく、使いこなせない場合は、ただの客寄せになってしまうわけです。

本当に失敗なのか?

ペッパーくんの開発背景には、労働環境の人手不足が挙げられます。労働力の補完という大義に対して、実際のペッパーくんは情報の仲介役にとどまっている点が、本来の目的と商品のズレを感じる部分です。もしも、本当に労働力を保管できるロボットが作れていれば、もっと定着していたことでしょう。
しかし、技術力の限界もあります。ペッパーくんが発売された2014年というと、iPhoneにSiriが搭載されて3年ほど、ChatGPTは当然ありません。現在ではファミレスの配膳ロボットのように、店員の主業務の一部を代替するロボットが出てきています。今後このようなロボットは技術の進歩と共に増えていくことでしょう。一台のロボットがすべてを担う前に、業務ごとに特化した別々のロボットが、連携を取る時代が予想できます。その時に、ペッパーくんのノウハウや知見から、受付周りを担うロボットとして地位を築くことができれば、結果的には成功したと言えるでしょうし、ロボットの形は必ずしもペッパーくんの形でなくても良いはずです。

ソフトバンクロボティクスが展開する配膳ロボット「SERVI」
(画像引用元:https://robotstart.info/2021/02/16/servi-release-2021-2-16.html)

ソフトバンクロボティクスでは「SERVI」という配膳ロボットも開発しており、ペッパーくん単体ではなく、ロボット事業全体で労働力の補完ができるかが、問われているのだと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?