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ヒットの手がかり:ターゲットを特定する

今日もご覧いただきありがとうございます。商品がヒットした要因を独自に分析、その中から一つを、”ヒットのヒント”として解説します。今日はぺんてるの「マットホップ」を見ていきたいと思います。(トップ画像引用元:https://www.pentel.co.jp/products/ballpointpen/mattehop/

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がればと思います。

ぺんてる・マットホップについて

「マットホップ」は、ぺんてるが2023年8月30日に発売したボールペンです。見た目は通常のボールペンのようにも見えますが、「絵具のような存在感あるイラストや文字を描けるボールペン」であり、通常のインクに比べて、高発色で黒い紙の上や、プラスチックといった素材にも描けるという特徴を持っています。この「マットホップ」は、ヒット商品として日経MJの「2024年上期ヒット番付」の東前頭に選出されています。

様々な素材や、黒い紙の上にも描ける
(画像引用元:https://www.pentel.co.jp/products/ballpointpen/mattehop/)

ヒットの手がかり:ターゲットを特定する

「マットホップ」のレビューを見ていると、「ポスカのボールペン版」といった表現が見受けられます。三菱鉛筆の「ポスカ」は1983年から販売されている商品で、名前の通りポスターカラーのような高い発色性とプラスチックやガラスといった様々な素材に描ける特徴を持っています。その一方で、修正ペンのようにペン先を押し込んでインクを吐出する構造から、ドバっとインクが出ることがある点や、本体もマジックのように太く、持ち運びの際にかさ張るといった点で弱点がありました。

三菱鉛筆のポスカ
(画像引用元:https://www.askul.co.jp/p/124394/)

「マットホップ」は、ロングセラーでありながらも、弱点を持つポスカを改良、ボールペンのように安定した筆記と、持ち運びのしやすさを付加することで、本質的には「使いやすいポスカ」というポジションを築いたことが、ヒットの要因の一つと言えるでしょう。
ただし、この改良のきっかけになっているのは、ターゲットユーザーを特定している点です。ぺんてるでは開発にあたり、ターゲットを女子高生に特定し、グループインタビューを実施しています。女子校正の間では「JKアルバム」と呼ばれる、友達との思い出の写真やメッセージでデコレーションしたアルバムを、誕生日や卒業祝いとしてプレゼントしたり交換することが流行っているそうです。

マットホップのホームページからJKアルバムのイメージ
(画像引用元:https://www.pentel.co.jp/products/ballpointpen/mattehop/)

女子高生がターゲットになれば、学校や塾での使用シーンが考えられ、「持ち運び」というキーワードが出てきますし、また、写真をデコレーションしようとすると「ポスカ」のように「高発色で何にでも描ける」というキーワードが見えてきます。
その結果生まれたのが、「使いやすいポスカ」であり、最終的に女子高生以外にも、仕事で持ち運ぶ、少ないスペースで収納したいといったニーズも満たすことになり、多くの人に受け入れらたのだと考えられます。

ターゲットは絞らず”特定する”

マーケティングにおいて、よく「ターゲットを絞る」という言葉を聞くと思います。ターゲットを絞ることで、ニーズが明確になり、ユーザーに刺さる商品ができる、というものです。しかし、一方で「ターゲットを絞る」という表現は排他的な表現でもあり、外されたターゲットは対象外とする、市場を狭めるという風にも受け取ることもできます。ターゲットを絞るから商品が売れなくなる・・・?
正しくは「ターゲットを絞る」ではなく「ターゲットを特定する」になります。無数に存在する消費者を分類し、その中から、ターゲットになりそうなグループを複数見つけ、その中から便宜上”特定する”のです。商品の企画においては、特定したターゲットに向けて商品を考えていきますが、決して、他のターゲットを拒むことはしません。むしろ、商品を展開する中で、販促のバリエーションとして、最初に見つけた他のターゲットにアプローチすることもあります。いわゆる「サブターゲット」です。共通のニーズを満たせるターゲットを複数持つので、市場も狭くなりません。

ターゲットは絞らずに"特定する"

今回のマットホップに当てはめてみると、特定されたターゲットは女子高生ですが、他にも「広い店内を移動しながらPOPを書く人」や「子供が手を汚しにくい、絵の具のような画材を求めている人」もサブターゲットになり得ますし、このような方も商品に反応することで、売上が拡大、ヒットに繋がります。
「マットホップ」はターゲットを絞るのではなく、特定した良い例でしょう。

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