500円映画劇場「ヘル・ファイヤー」

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500円映画には数多い「深海サスペンス」の一本「ヘル・ファイヤー」だが、ひとことでいうんなら「レベル低いよ!」に尽きる。

深海底から発掘された謎のエイリアンが海底油田掘削施設に閉じ込められた人々を襲うオハナシ。いわゆる「深海サスペンス」から一歩も出ないコンセプトだね。

「深海サスペンス」は、安く作れるのだ。潜水艦でも海底住居でもなんでもいいんだが、窓のない場所に舞台が限定されるので安上がりに撮影できる。この「ヘル・ファイヤー」も、窓のない工場だか倉庫だかを撮影用に用意すれば、OK。あとは海上の風景などを先に見せれば、モンタージュ効果でその工場だか倉庫だかが深海施設の中に見えるってわけだ。ある意味では近代映画理論を実践してみせている、いい見本だ。

もちろん、そこで金をかければちゃんとした一流映画になるのは「アビス」とか「スフィア」とかいった映画が証明しているのだが、では金をかけなければどうなるかというのも数多の安物映画が証明している。

ところが、この「ヘル・ファイヤー」は、それ以前の部分でダメっぷりをさらけ出しているのだ。「深海サスペンス」がどうこう言うよりも、はるか以前の問題。

冒頭の海洋調査船が嵐に遭遇するシーン。深海で発見された「サンプル」とやらを運送しているのだが、そもそもなんでこんな荒天下でそんなに貴重なものを運ぶんだというようなツッコミどころもたっぷり。そして、まるで安手のコントのようによろよろとサンプル入りのガラス容器を大勢で持ち運び、やっぱりといった雰囲気が充満する中、見事にこいつを落っことして謎のエイリアン登場となるのだが、その瞬間、「ああ、この映画は終わったな

かの「ロボットモンスター」をはじめ、情けないモンスターやエイリアンは数々見てきたが、ここまでひどいのはあまりない。2004年の作品なので当然CGであることは予想していたが、そのCGの出来栄えが想像を絶するひどさなのだ。立体感ゼロ。まるでいにしえの「アニメ合成」かと思うレベル。いやいや、これならディズニーの「メリー・ポピンズ」なんかのほうがはるかに自然だぞ。

タコの足が無数に集まったみたいなデザインコンセプトは悪くないのに、CGの製作であまりに手を抜いたのが致命傷。どれだけひどいかは実物を見てもらうしかないが、まあ見たからといって人生に一銭の利益ももたらさないことは請け合おう。

モンスター・パニック映画で、その肝心のモンスターがコケると、結果はいうまでもないだろう。あとは、どれだけ俳優陣が頑張ろうと、工夫を凝らそうと、まったくダメージ回復不可能なのだ。だからこの「ヘル・ファイヤー」、開巻10分くらいで、すべて終わってしまったのである。

しかしこんなひどい映画を作った責任者、監督は誰かと思ったら、ジェイ・アンドリュース……いや調べてみたら、なんとクズ映画の巨匠ジム・ウィノースキーの変名だった。またお前かよ(笑) すでに「コモドvsキングコブラ」「スパイダー・パニック!2012」などで、キミの実力はもう充分わかってるってば。

ところでこの映画、先に書いたように2004年の作品で、カナダ製のDVDオリジナル作品らしいが、なぜか画面サイズは横長のハイビジョンサイズではない。昔のブラウン管サイズ。そういえば、最後のほうで意味なく出てくる「エイリアン撃退用のデータ」がはいっているメディアも、懐かしの3.5インチフロッピー・ディスク(久しぶりに見たぜ) ほんとはもっとずっと昔の映画なんじゃないか? ひょっとして大昔にボツになったフィルムを引っ張り出してきた再生品か?

まあ、そうだとしても、何らこのダメ映画の言いわけにはならないんだけどね。(原題は「Sea Ghost」また各種資料では「THE THING BELOW」とも。2004年カナダ作品)

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