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エアポート一族の陰謀

500円映画劇場で「エアポート/トルネード・チェイサー」をご紹介した際に、ざっくりと「エアポートを邦題に冠した映画は40本以上ある」などといった手前、ちゃんと検証してみないわけにはいかなくなりました。

そこで、例によってオールシネマさんなどを資料に集計してみました。

すみません、35本でした。

では、その全貌をここに提示しておきましょう。

毎度のことですが、見づらいのはご勘弁。色のついたのが日本で劇場公開された作品。

しかし、あるもんですねえ「エアポート」

以前にも触れたように、元祖である「大空港」に連なる正統の「本家エアポート」シリーズはこの中で3本だけ。そして、きちんと日本で劇場公開されたのもこの3本だけなのであります(表では「キーファー・サザーランド IN エアポート24時」なんて言うバチモン臭いのも劇場公開あつかいになってますが、これは公開時は「乱気流/グランド・コントロール」ていうタイトルでしたから、一族では外様あつかい)

なのに、1974年製作の「エアポート’75」以降、本家シリーズも含めれば、「’77」「’78」「’80」「’85」「’95」「’98」「’99」と要所要所で作られ、2000年以降はほぼ毎年ビデオ市場に一族郎党を送り込んでいるのだからスゴイ! 逆にエアポート一族がなかった2006年、2007年、2009年がたいへん異常な年に見えるくらいだ。今年もどこかで「エアポート2016」が出現するのは、まず間違いないでしょう。

という事実が暗示するように、そのほとんど、いやすべてが、見事に500円映画クラス。そもそもテレビムービーだったり、オリジナルビデオだったりと、その出自は怪しげ。ううむ、誉れある一族ではないような気がしてきたぞ。

いちばん先頭にある「恐怖のエアポート」は前に「未公開映画劇場」で紹介したように名作なんですが、これはむしろ例外なのか。

結論から言うと、そう、その通りなのであります。

航空機パニックものってのは、じつは案外安く作れるもの。本家のシリーズはオールスターキャストで豪華な大作映画でしたが、その部分を除けば、航空機内のセットと、管制室内に見えるセットがあればほぼOK。なに、空港の実景などは、カメラ一台を空港に送り込んで撮影してくればいいんですから。

それでもかつては、飛行中の航空機のショットは空撮か特撮に頼るしかなく、それなりに費用もかかったことでしょうが、そこはそれ、CGという魔法の杖が登場して、ずいぶん安上がりにできるようになったはず。CGが普及した2000年以降にエアポート一族が急速に増えているのがその証拠ですね。

かくしてヤスモノ映画の大鉱脈である航空パニックものが大量発生し、エアポート一族もますます繁栄するという仕組み。わかりましたか?

しかも、邦題は「とにかく飛行機が出てくりゃエアポート」が合言葉なのか、原題や内容にはおかまいなく、「エアポート」のオンパレード。旅客機ではない軍用機や小型機が主役のものも多く、中には空港すら出てこないのもあるんだから、航空パニック大作をご希望のお客さまは充分ご注意ください。なおその際に、DVD等のジャケットデザインはまったく参考になりませんから、いっそうのご注意を。

まあ、元祖の「大空港」はそれなり以上の名作ではありますが、あれとて爆弾事件と何年に一度級の大吹雪が、よりによって同じ夜に起きるというなかなか発生確率が低そうな設定でしたし、その後の「’75」は小型機とジャンボジェットが偶然に空中衝突するという天文学的確率。続く「’77」はそもそも「ジャンボジェットって沈むのか?」的な疑問があったし、「’80」に至っては地対空ミサイルをコンコルドが曲芸飛行でかわすとか、中身的にはけっこうBテイスト(かの有名なガラッと窓を開けるシーンもあったね) 私は、贔屓のジョージ・ケネディがレギュラー的に毎回出演していたのでつきあっていたが、けっこう大したもんだったよ(笑)

なお、この「エアポート一族」は、原題に「Airport 」が入っているのが、元祖シリーズを含めても4本しかない、要するに完全に日本国内向けの名称なので、海外のお友達に話しても通じないことをお忘れなく。

 映画つれづれ 目次


【2023/8/31】 その後も一族は繁栄を続けています。メンドクサイのできちんと確認はしてませんが、少なくとも「2017」「2018」「2021」「2022」の存在は確認しました。ちなみに、本文で予言した「2016」はなかったようですが。

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