見出し画像

500円映画劇場「エアポート/トルネード・チェイサー」

1970年の「大空港」(原題 Airport)のヒットがきっかけとなって、「エアポート」一族が勃興し、今日に至るまで繁栄をきわめているのは周知のとおり。

試みに、毎度お世話になっているオールシネマさんで検索してみると、邦題に「エアポート」を冠している映画は、じつに40本以上。

ただし、オールスターキャストで大ヒットした元祖エアポートたる「大空港」に直接つながった、いわば正統の大作「エアポート」シリーズは、「エアポート'75」 (1974年)、「エアポート'77/バミューダからの脱出」(1977年)、「エアポート'80」(1979年)の計4本だけなのだ。

空中衝突したり、海中に没したり、ミサイルが追ってきたりと、これらもそれなりにB級テイストがあふれているが、じつはその他の「エアポート」一族は、なぜかことごとくB級作品ぞろい。なので、500円映画では定番で、もはやひとつのジャンルになっている。

さて、今回の「エアポート/トルネード・チェイサー」(ENTSCHEIDUNG IN DEN WOLKEN)も、そうした「エアポート」一族の例にもれず500円映画に列しているわけだが、ちょっと毛色が違う。

この映画、真面目ないい映画なんですよ。

空港へ着陸直前に異常な嵐に遭遇した旅客機。危険と判断した女性機長のアンドレアは、小型機用の飛行場に強行着陸して難を逃れるが、会社は嵐の存在を否定し彼女に責任を負わせる。局地的な嵐「スーパーセル」の実在は立証されていなかったのだ。そこで彼女は気象学の教授に協力し、小型機で嵐に突入する荒くれ飛行士たちとともに、「スーパーセル」の証拠を入手すべく、荒れ狂う空へ挑むのだった。

そう、ホントは「エアポート」じゃなくて副題っぽい「トルネードチェイサー」のほうが主体の映画なんだな。だいたいエアポート(空港)なんて、まったく出てこないんだからね。

そうはいっても、あらすじを読むと、けっこう手に汗握りそうでしょう? もちろんそうはいかない。だから500円映画なんだけど。

その欠点は明白だ。すべてが予想通りに進むからだ。

たとえば、荒くれ飛行士とアンドレアのロマンスにしても、最初は反発しあい、やがて理解が生まれ、恋に発展したあとで再び衝突、そして最後はともに困難に立ち向かってフィニッシュと、まさに定番コース。嵐の空への挑戦も同様に定番コースから外れることなく展開するので、見ていて安心は安心だが、そこにはスリルのカケラも生まれない。

そう、前に見た「ツイスター2010」と同じく、真面目過ぎるんですよ真面目過ぎ。

もちろん、作り手側としては、スリルとサスペンスを追求するのではなく、あくまで人間ドラマを作りたかったんだろう。でもそれだと資金が集まらないから、ややパニックものっぽく作った。そこに日本の業者が食いついた、まあこんな所か。

もちろん名うての日本の業者さん、パニックに仕立てるのはお手のものなので、この地味なドラマもめでたく「エアポート」一族入りし、まあこんな目にあったわけです。

ちなみにカバーイラストには嵐を衝いて飛ぶジャンボジェットが描かれてますが、アンドレア機長が操縦するのはジャンボではなく、しかも冒頭15分しか登場しないのは、もはやお約束ですね。

かくして、製作者たちの志と違うことになったこの映画、日本で私のようなバカモノに買われる500円映画と成り果てたのでした。残念。

2009年のドイツ、オーストリア合作のTVムービーでした。

  500円映画劇場 目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?