500円映画劇場「ツイスター2010」

スティーヴン・スピルバーグ製作、マイクル・クライトン脚本、ヤン・デ・ボン監督のパニック大作「ツイスター」(1996年)の続編……なわけはないですよね、もちろん。

こちら「ツイスター2010」は、2009年製作のテレビ用映画です。タイトルに年号をつける手法は500円映画では定石ですが、その年が過ぎた瞬間に古くさく見えるので、みなさんはマネしないようにしましょうね。

しかし「竜巻=ツイスター」って、どこまで浸透してるんですかね。「サメ=ジョーズ」なんかと違っていまひとつのような気がしますが。この作品の原題は「TORNADO VALLEY」で、「ツイスター」なんてかけらもありませんし、映画のなかでも竜巻のことは全部「トルネード」といってるようでしたが。

さて、どんなお話しかというと……

25年前の子供のころに、竜巻のせいで母親を失った姉妹。姉は気象学者として成功し9歳の娘もいますが、妹のほうは母の死を目撃したショックで失語症となり、立ち直れないまま父と孤独に暮らしています。画期的な気象観測網を作り上げた姉が、学会発表のついでに、娘を連れてひさしぶりに帰郷。ところが、そこへ25年前と同じよう大竜巻が襲いかかります。

邦題からしても、ジャケットデザインからしても、ド派手な災害パニック映画を思い浮かべるところですが、もう、そう簡単にはダマされないぞ。

はい、ジャケットのイラストでは高層ビルが超巨大竜巻で崩壊したりしてますが、もちろんそんな場面はまったくありません。舞台はすべてアメリカ中部のド田舎。そもそも竜巻ってのは何もない大平原に起きるものですからね。

ちなみに、竜巻のCGは悪くありません。まあ簡単といえば簡単な「画」なんですが。静かな中で徐々に空から雲が降りてきて竜巻になるシーンなどは、それなりのサスペンスも迫力もありました。うまくやれば、災害パニック映画としても、そこそこの出来ばえにはなったかも。

でもこの映画、意外なくらい真面目志向の映画なのです。ちなみに、竜巻が出現するのは、映画の最初と最後だけ。

おおっと、前に酷評した「大雪崩」を思い出させますね。最初と最後に出てきた雪崩は迫力あったけど、それ以外がグズグズだったやつ。あれもじつは真面目志向らしかったですけど、結果は惨憺たる出来ばえでしたっけ。

でもこちらは、真面目なりに善戦しています。

25年前のトラウマに苦しむ家族のドラマが主軸で、適度に抑制の効いた演技と、さりげない演出。このへん「大雪崩」とは大違い。

だから、これ、こんなバッタモン臭いもんでなく「風の吹く谷」とか文芸っぽい邦題つけて、文芸映画っぽく見せて売ったらよかったんじゃ……まあ、それほどのもんでもないか(笑)

文芸映画としても、少々踏み込みが浅いのであります。不幸だった家族が、トラウマから抜け出してすべてメデタシメデタシのハッピーエンドをむかえるまで、まったくなんのヒネリもなく、完全に予定調和の世界。もうちょっとなんとかならなかったんか。

まあそうした文芸映画的な「批評」は私の専門ではないので、そういうの好きな人は見てみてください。おススメはしませんけど

私のガッカリポイントは、そういう部分じゃないです。

つまり、いくら中身が文芸志向でも、この「ツイスター2010」、実際には500円映画っぽく見せて売られていて、私みたいなのが買ったわけですよ。

で、夜中にワクワクしながら(嘘)見てみたのに……

当たり前ですが、そうした「期待」にはカケラも答えてくれないわけですね。

そうなると、誰も死なないラストとか、もう「甘い」としか言いようがない。感動の家族ドラマも「ヌルい」という感想しか浮かばないし、けっきょくのところすべて「物足りない」となってしまうのは、仕方のないことでしょう?

映画そのものにも、製作者にも、何の責任もないことなんですがね。

でもでも、もし仮に文芸映画のまま売り出したとしたら……いや、それじゃそもそも売られていないか(笑)

そして、考えてみたらけっきょくのところ、私はこれを買ってしまっているわけで、これは日本の販売業者に軍配を上げざるを得ないってことですかねえ。またやられたな

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