500円映画劇場「大雪崩」

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またまた看板倒れ、というか看板かけ違いの映画が登場です。今回もまた、日本の業者の責任っぽいですが。

邦題が「大雪崩」で、ジャケットにも、そびえ立つ巨峰、のしかかる巨大雪崩、それに呑み込まれかけているロッジ、必死に逃げるスノーモビルといった、迫力満点のイラストが掲載されていて、どっからどうみても大がかりなパニック・アクション、デザスタームービーの超大作に見えますが……原題は「LOST LAKE」。あれ? なんだかおとなしげだな、と不安がただよいます。ちなみに2003年のアメリカ映画だそうです。

映画が始まると、いきなり事情のよくわからない痴話喧嘩からベッドシーン、そこに意味の分からないフラッシュバックがインサートされ、のっけから欲求不満が高まります。そして何の前触れもなく、襲いかかる大雪崩。

映画の名誉のために言っておけば、この雪崩のシーンはちょっとした迫力。実写なのか、CGなのか、どちらにせよ迫真の出来栄えで、一瞬、大いに期待を抱かせます。一瞬だけ。

その期待は次の瞬間、どこかへ霧散します。いきなり「1週間前」の字幕が出て、物語は回想シーンへ。こうして始まるのは、ごくごく平板な人間ドラマ。のちに雪崩に遭うロッジの経営者とスキーガイド、そこに新たにやってきた奔放な女性のハウスキーパー、そしてロッジの客としてやってくるプレイボーイ気取りの大学教授と、その新しい愛人と思しき研究助手、そして無謀な若者の3人。登場人物はほぼこの6人だけです。

で、何が起こるかというと、要するにスキー休暇の日々の淡々とした描写。まるでスキー場のプロモ―ションビデオのごとく、延々と続くスキーやスノボやスノーモビルの滑走シーン。そして、おいしいご飯を食べ、楽しくお酒を飲み、美しい景色を愛でるだけの展開。正直まったく面白くない。あ、温泉シーンなんかあって、ちょっとだけヌードサービスもあります。

もちろん、それだけではないです。若者の客とロッジのガイドがじつは異父兄弟だとか、大学教授と愛人の仲がこじれたりとか、いちおうドラマは仕込まれています。いちおう。

さらには、ロッジの主人の過去に何か事件があったらしく、それにはガイドの父親も絡んでいたらしく、さらにはハウスキーパーがその事件にかかわった女性の生まれ変わりらしく……映画を見ないで話されても、なんだかわからないでしょ。安心してください、映画見ててもわからないです

ようやくラスト近くで、冒頭にチラ見せした雪崩が襲いかかりパニック映画っぽくなりますが、次の瞬間には映画終了。なめとんのか!

要するに、何をしようとしたか、よくわからない映画です。ひょっとしたら、ロッジに集った人々の人間ドラマを真面目に描こうとした文芸系の映画なのかもしれませんが、まったく成功していません。

ジャケット裏面のコピーには、こうあります。「一瞬にして地獄と化したスキーリゾート地で人々の決死のサバイバル脱出劇が始まる……‼」まったくの嘘です。サバイバル脱出劇が始まる前に救助隊が来て映画は終わります。

ただし、こう見てくると、日本の業者がとった作戦は、悪くなかったんでしょう。けっきょくのところ、ラストの10分ほどにしか発生しない雪崩をメインに持ってきて、パニック映画仕立てに見せかけたんですから。私もそれにダマされましたし。

これまで見てきた500円映画の数々を考えても、文芸映画というのはこのカテゴリーには、どう考えても似合わないジャンル。安価な娯楽を求める購買客のニーズにまったく応えないわけですから。そのうえ、かなり贔屓目に見ても失敗作だとあれば、やむなく「誇大広告」もしくは「虚偽広告」に走ったとしても、まあやむを得なかったか。

いや、そもそもこの映画を買い付けた時点で、ダメだろ? ひょっとして日本の業者も、ダマされたのかもね。

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