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500円映画劇場「エアポート’04」

ごぞんじ、へっぽこ映画の代名詞「エアポート一族」の登場です。

「エアポート’04」 2004年製作のオリジナルビデオ映画。

おお、なんと製作年と邦題が一致している! いやいやこの一族では、けっこう珍しいこってす。それにしても、もう15年近くも前の映画なんですね。月日の経つのは早いもんです。

さて、例によってジャンボジェットがマンハッタンと思しき大都会のビルをなぎ倒しているイラストに「摩天楼激震」と派手なコピーのついたジャケットに、もう騙されないぞと気合を入れつつ映画がはじまると、あにはからんや、エンジンから出火した旅客機が危機一髪の阿鼻叫喚。なんだよ、ちゃんとしたパニック映画じゃないか……そう一瞬でも思ったら、もうヤスモノ映画師の術中にはまっていますよ。

オリジナルタイトル「Junior Pilot」におやっと思う間もなく、画面は一転。パニック場面はフライトシミュレーションゲームの1シーンでしたと、いきなり脱力させられます。

はい、この映画の主役登場。ゲームをしていた10歳の少年リッキーです。そう出来の悪い子ではなさそうですが、空想癖があり、友だちや父親からは「空想禁止」を申し渡されたりしてます。「虹をつかむ男」の子ども版ですね。彼が、学校の音楽部の仲間や父親とともに搭乗した旅客機(もちろんジャンボじゃない)に、富豪の娘誘拐犯が乗り込んでいることに気づいたことから、次々と危機が巻き起こるというオハナシ。

お察しのとおり、これ完全な「お子さま映画」 誘拐事件の犯人たちの乗った旅客機が致命的悪天候に遭遇し、そのうえ機長以下のクルーが全員操縦不能という天文学的確率の事態に対応するのは、前述のリッキー少年ほか、その親友らしきラテン系の少年、いじめっ子だが根は悪くないガキ大将、そしてロマンス色はかけらも感じさせない少女の4人組。そう、黄金の「ドラえもん」チーム構成ですね。ドラえもんいないけど

ということで、お子さま向けなので、ヒネた映画マニアには容易に予想がつく展開で物語はサクサク進み、誘拐犯を倒したところで大団円……

と思いきや、そこからがけっこうスリリングで、ああそういえばこれ、航空パニックものだったなと思いだされる展開。アメリカでの別タイトル「Final Approach」を思いだしたら、これまた容易に予想がついてしまう程度ではあるけれど。映画冒頭の伏線が物をいうこのラストシークエンスは、ささやかながら手に汗握っちゃいました。ここは、まあ上出来ですね。

もちろんお子さま向けなんで、これだけの大事件がありながら死者も重傷者も皆無という平和的パニックものでありました。甘口がお好みのフツーの映画ファンのかたは、見ても損はないですよ。たぶん。

マーク・ダカスコスとかエリック・ロバーツとか、そこそこ顔を知った役者も出ているし、主役のリッキー少年を演じるジョーダン・ギャレット(当時推定10歳くらい)はその後も多くの映画に出ているようで、素人同然のダイコン芝居を見せられることも多い500円映画にしては、配役陣もマトモ。まあ、私のようなヘソ曲がり映画ファンでも、500円なら文句は言わないでもすむ程度の出来栄えではあります。

ひとつだけ、へえと思ったのが、主役のリッキー少年の家族構成。ずっと出ずっぱりの父親(ラリー・ミラー)と暮らしているようだが、どうも父子家庭らしい。というのも、ママの話は影もカケラもないからだ。お父さん、息子の音楽部の顧問の女性教師となんとなくロマンスっぽいし、やっぱシングルファザーなのか。そのへんの事情がいっさい語られないのは、それだけアメリカではシングル親の家庭が普通の存在になっているということの証拠なのかな。スリリングな映画の最中に、カッタルイお涙頂戴の回想シーンとかエピソードが入らないから、かえって良かったんだけど、いまのアメリカの一般的な家庭事情が垣間見えた気がしたってことです。

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