500円映画劇場「エアポート/タービュランス」
500円映画の大鉱脈、エアポート一族の一員たる「エアポート/タービュランス」の登場です。
「タービュランス」というのは「乱気流」のこと。2009年のTVムービーですが、昔、そのものずばりの「乱気流/タービュランス」ていう映画もあったっけな(1993年劇場公開)
先に言っとくと、これぜんぜん「エアポート」じゃないです。
ていうか、そもそも500円映画の「エアポート」シリーズは、そのほとんどが元祖「大空港」からはじまる正統「エアポート」とは無関係な作品なバチモンです(まあ元祖シリーズも「大空港」以外はソウトウなものだが)
原題「Storm Seekers」が示すように、これは飛行機で嵐を追いかけてさまざまなデータを収集する、ワイルドな気象学者のお話し……ん? 前にもそんなの見たような気がするな(笑)
嵐を追いかけるのはいいが、追い着いてしまったりし、機体に不具合が出たり、乗員がビビったり、嵐が予想以上に大きかったりすることで、さまざまなトラブルになるのが定石。
そして、この「エアポート/タービュランス」、やっぱりこの域から一歩も外に出ていません。
独創性が皆無に近い(笑)
そのうえマズイのは、演出が非常に不安定なこと。
登場人物たち(女性科学者など)がそれぞれの事情を抱えていて、それが嵐との遭遇でトラブルになるっていうのがミソで、その点では、由緒正しきグランドホテル形式(多数の登場人物のドラマを並行して描く)っぽい感じにはなりそうなんでしょうが、やっぱりなりません。
たとえば女性気象学者(演じるのがダリル・ハンナってところがまた中途半端っぽい)は、子供のころにトラウマがあるんですが、そのトラウマの原因となる過去の事件と現在のトラブルの描き方にまったく差がないので、見ていて混乱するのであります。
要するに、いま現在私が見ているのは、ドラマのどの部分なのかが、よくわからなくなるんですよ(まあ半分居眠りしながら見ていたこちらのせいもあるんでしょうが)
演出やシナリオが下手だと、しばしば起きるんですよね、「迷子映画」
そして、メイン以外のドラマはというと、嵐の向かう先に娘がいると大騒ぎする男とか(娘ったってけっこう大人のティーンエイジャーなんだが)、保身のためになかなか嵐接近の警報を出そうとしないお役人上司とか、どうにも新味がなさすぎます。登場人物たちはそれなりに悩んだり怒ったりするのですが、見ているこちらは退屈するだけ。
肝心の嵐の部分は、嵐の目に飛行機で突入してしまったものの、周囲の風が強すぎて出るに出られなくなるというもので、これはちょっとだけ新味があったぞ。
それだけに、余分な人間ドラマなんか全部切り捨てて、嵐対飛行機のシンプルな対決に絞ったら、あんがい面白い映画になっただろうと思われます。惜しかったな(ってほどでもないが)。
2時間近い映画を作ろうと思うと、どうしても材料を多く突っ込みたくなるんでしょうね。
そのうえ、資金を出してくれるサイドはたいがい「人間ドラマ」っていうタームに弱いので、ついつい付け足したくなるものなんでしょうね。
そしてたいがいの場合、それが足を引っ張って、映画自体はダラダラになる。
これ、500円映画を作る「秘訣」ですね。よぶんなものを混ぜ込む。
あえてヤスモノ映画を作りたい方は、ぜひお試しください。
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