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未発売映画劇場「サント対死のホテル」

絶好調(なのか?)サント映画の第6弾。1963年1月公開の「Santo en el hotel de la muerte」 前作「サント対犯罪王」から2カ月後の公開なんだけど、えらいハイペースだな。

ポスターを見ると、なんたることか、主役のサントの姿がないではないか。この骸骨男は、べつにマスクをチェンジしたサントではないし、こんなやつは映画には出てこない。

と思ったら、ちゃんといるバージョンもあった。安心した(笑)

舞台は都会を離れた遺跡地帯にあるリゾートホテル(カンクンらしい) ポスターの背景は大都会なんだが。

高級リゾートホテルで、滞在客が、同じく客の死体が小川を流れているのを発見する。ところが皆が駆けつけると、死体は忽然と消えていた。見間違いかとも思われたが、ホテルのオーナーは警察に相談、首都警察からフェルナンド刑事と相棒のゴンザレス刑事が派遣されてくる。事件の臭いを嗅ぎつけたフェルナンドの恋人のジャーナリストのヴァージニアもついてくる。客の部屋を調べるうち、ゴンザレス刑事が浴室で首を切られた女性客の惨殺死体と遭遇。ところがまたしてもその死体は血痕だけを残して消え失せてしまったのだ! 相次ぐ怪事件に、フェルナンドはついに英雄サントの出馬をうながす。だが続いて第3の死体が見つかり、またまた死体消失が……

なんとも驚かされることに、意外にちゃんとしたミステリ映画である。リゾート地を舞台にしていたり、そこに滞在する客がそれぞれ怪しげな背景があったりと、アガサ・クリスティーばりといったら誉め過ぎか。事件解決のために駆けつけるのが、名探偵エルキュール・ポアロなどではなく、マスクにタイツ、マント姿のサントなところがナニだが……

ここまで、わずか5作しかないのにシリーズに断絶があることはこれまでも触れてきた。その点、今回のこの作品は、前作「サント対犯罪王」の明確な続編になっている。フェルナンド刑事らは前作からの連続登板だし、サントへの連絡法、サントの助手の存在なども継続している。逆にいうとそれ以前の作品とはつながっていないのだが。

とまあ、いちおう合格点の映画かなと思ったのだが、当然ツッコミどころはたいへん多いので、そのへん誤解なきよう。

ストーリーそのものでいえばまずまずなんだが、決定的にどうかと思うのは、この映画でのサントの出番の少なさだ。84分の映画なのに、はじまって30分以上もサントの「サ」の字も出てこないのはどういうわけだ。後半も出番少なめで、事件の解決役は全部フェルナンド刑事に持っていかれてるし。というか、そもそもこの映画にサント氏、必要だったのか?

前半はまずまずだったストーリーも、後半はダメダメになる。事件の首謀者は×××なのだが、そもそもその動機が×××だし、これは無理すじだろうね(まだるっこしいので最後にネタバレで解説します

ただ、ラストのドンデン返し(ってほどでもないが)である、サント危機一髪の切り抜け方は、ちょっと感心した。これは世界中の名探偵を見渡しても、たぶんサントでなければ出来ないだろうな。

DVDはリージョンコード1番のメキシコ製。ちゃんと英語字幕が入っているのがありがたかった。

今回の主役(?)っぽかった、フェルナンド刑事(フェルナンド・カサノバ Fernando Casanova)、ゴンザレス刑事(ロベルト・ラミレス・ガルザ Roberto Ramírez Garza)、ヴァージニア(アナ・ベルタ・リペ Ana Bertha Lepe)のトリオは、引き続き次回作の「サント対悪魔の頭脳(仮題)」にも出演しているようなので、お楽しみに(何を?)

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【以下はネタバレです。これからこの映画を見ようって奇特な人はスルーしてください】

一連の事件の犯人はマッドサイエンティストならぬマッド考古学者(じつはもう一件べつの脅迫事件があったりするのだが、これがまた見事に本筋とはカンケーなく展開する)

ホテルの地下には迷宮のような古代の地下墓地が眠っていて、そこに埋もれる財宝を教授(こう呼ばれてる)が、ホテル従業員を組織して秘かに発掘している。その邪魔をさせないために殺人事件で脅かして、客やホテルそのものを追っ払おうとするっていうのが、なんとも薄弱な事件の動機なのだ。

しかも、殺人と思った「消える死体」事件の真相はというと、じつは死体でなく、実物大、等身大の蝋人形でしたというもの。滞在客を監禁しては、その姿を精密に再現した蝋人形でみんなをビビらせていたというもの。だから誰も死んでいない。なんでそんな真似を(笑)

最後にヒロインのヴァージニアを拉致してきた教授、気を失っている彼女を前に、いきなり熱心に蝋人形を作りはじめるのだから、何を考えているんだかわからんぞ。財宝ウンヌンでない奥深くに秘められた動機でもあったんだろう。いやまあ、たしかにマッド考古学者ではあると思うけどさ。

右側がそのマッド考古学者(演じるのはアルフレド・ワリー・バロン)だ。

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