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未発売映画劇場「女子レスラーvsアステカ・ミイラ」

メキシコ・ファンタスティック映画の底なし沼を探索中なのだが、そのなかで出逢ったこんな2作品。

未発売映画劇場「女子レスラーvs殺人ロボット」

未発売映画劇場「アステカ・ミイラ対殺人ロボット」

とこう来た以上、次に考えるのは当然、女子レスラーとアステカ・ミイラによる決勝戦でしょう。

で、これがちゃんと存在するから、メキシコ映画の奥は深く怪しい。

Las luchadoras contra la momia

1964年の作品で、英語タイトルは「Wrestling Women vs. the Aztec Mummy」 そのものズバリ。

内容も、ほぼそのまんま……かと思ったら、シングルマッチじゃなかった

いきなり登場するのは、怪人フー・マンチューみたいな謎の東洋人が率いるギャング団。

てっきり中国系なのかと思ったら、ボスの名はプリンス・フジタヤ(スペイン語版なのでよく聞き取れなかったが、資料を調べたらそうあった) これって、藤田? 藤田屋? 藤田谷? それとも藤ヶ谷? てことは日本名なのか?

ええ? あの風体で日本人なのか! 演じているのはもちろん、ラモン・ブガリーニというメキシコ人俳優(「サント対ゾンビ軍団」にも出てたそうだ)だが、そういえば、配下の悪役女子レスラーは柔道スタイルだし(ポスター右下に注目)、いっしょに見ていた息子がいきなり「いま日本語で、やめろよって言った!」と指摘したりしたから、じゃあ、こいつら日本から来た犯罪組織だったのか。そのわりに組織名は「ドラゴン・ネグロ」 「黒龍団」ってところかな。そこは中国風なんだ。

さてその犯罪組織「ドラゴン・ネグロ」が狙うのは、例によって毎度おなじみのアステカの秘宝。そのありかを知る考古学者は狙われて、秘宝の位置を示す暗号を死守しようとするが、逃げ切れず、なぜかプロレス会場のドレッシングルームで殺し屋の手にかかって死亡する。現場に居合わせた女子タッグチーム、ビーナスルビーのコンビは、遺された考古学者の娘(姪かな)とともに暗号解読に挑む。もちろん「ドラゴン・ネグロ」も秘宝を追う。ついに秘宝が、サント映画で何度も見たことのある、あのピラミッドで発見されたとき、そこには……

ということで、いつものように、最後のほうだけにのっそりと登場するミイラ氏だが、あれれ、かのアステカ・ミイラとはずいぶん違うぞ。

この写真をご覧あれ。目と口を大きく開いているのは、べつに叫んでいるのではなく、もとからこういう顔つきなのだ。ちょっと間抜けではないか(今気づいたが、このミイラ、女なんじゃないかな?)

観にきた子どもたちにトラウマを植えつけたに違いないアステカ・ミイラにくらべると、ちょっと迫力不足。もっとも強いことは強くて、「ドラゴン・ネグロ」はこいつに全滅させられちゃうけど。

スタイルが違うのは、そもそもこれはあのアステカ・ミイラとは別ものだからだ。原題を見てごらん、「la momia」だけでしょ「la momia azteca」じゃなくて。「the Aztec Mummy」だと言い張っているのは英語題だけ。

ということで、シングルマッチでなく、犯罪組織vsミイラvs女子レスラーのトリプルスレッド(三つ巴戦)なわけなんだが、じつは女子レスラーも単独ではない。

上のジャケット写真を見てお分かりのように、妖艶なる女子タッグチームが主役なのだ。だからタイトルも「luchadoras」とちゃんと複数形になってるんだよ。

向かって右がロリータ・ビーナス。演じるのは顎のホクロが蠱惑的なロリ―ナ・ベラスケス。これまたどっかで見たようなと思ったら、「サント対女吸血鬼軍団」でバンパイアの女王を演じていた人だった。1950年代後半から映画とテレビとを股にかけて活躍したヴァンプ(妖婦)女優だったそうだ。メキシコ以外での出演があまりないために日本ではほとんど知られていないが、ちなみにご健在で、IMDBによれば現在も現役らしい。

相棒のゴールデン・ルビーを演じるのは、アメリカ生まれの美形のエリザベス・キャンベル。こちらも1960年代までは数多くの映画に出演し、1966年にはハリウッドの大作「プロフェッショナル」にも出演しているのだが、1970年代にアメリカに帰国し、そのままフェイドアウトしたという。いまはどうしているのやら。

お二人とも本職のプロレスラーではないので、どうやら試合のシーンはスタントを使った模様。相手側の選手も含め、複数のルチャドーラと思われる名前がクレジットされている。

ところでこの二人、なぜコンビなのか、男二人組がサブみたいについているがこいつら誰なのか、いまひとつはっきりした説明がなかったようだ。まあサントやミル・マスカラスの例もあるし、プロレスラーが私立探偵やスーパーヒーローみたいなマネをしていてもそう不思議ではない。たぶん1960年代のメキシコではフツーのことだったんだろう。

とおもったら、じつはこのコンビ、この映画だけのものではなかったのだ。

シリーズものだったんだよね、この映画。調べてみると、この、対ミイラ戦はシリーズ第2作。「Las luchadoras contra el médico asesino」(1963年)がシリーズ第1作で、1967年までに合計4作が製作されているようだ。

ということで、お察しのとおり、このシリーズも全部見ることになりそう。ますます底なし沼は深くなってゆくのであった。

Las luchadoras contra la momia」1964年11月27日メキシコ公開。モノクロ。85分。メキシコ製DVD(リージョンなし)で鑑賞しました。

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