未発売映画劇場「サント対ゾンビ軍団」
お待たせしました（誰も待ってないか）「サント対悪の頭脳」「サント対地獄人間」につづくサント映画第３弾、「Santo contra los zombies」の登場です（英題「Invasion of the Zombies」をはじめ、複数の別タイトルあり）
入手したDVDのジャケットは豪華両A面仕様。リージョンフリーの英語吹き替え版でした。
先にも書いたように、前２作はキューバとの合作で製作されたごくフツーの犯罪サスペンス映画に、人気レスラーのサントが脇役出演しただけ（その時点ですでにフツーじゃない気がするが）でしたが、今回はいよいよサントが主役で大暴れするメキシコ・ファンタスティック映画の超人気シリーズの本格的な開幕作品です（大袈裟に書きました）
革命直前のキューバロケ（1958年）から３年後、1961年に公開されたこの作品は、同時に初めてアメリカでも公開されたサント映画の記念すべき作品とのこと。いやがうえにも期待は高まります（ちょっとだけ）
ストーリーは、ＩＭＤＢにある、たった１行のあらすじ「人気プロレスラーのサントが邪悪な科学者によって復活されたゾンビ群と戦う」がすべてを表わしています。いやホント、これだけのお話し。
シンプルはシンプルですし、さほどビックリするようなヒネリもなし。まさに「サントと怪しげな雰囲気を楽しむだけの映画」なので、そのつもりで見さえすれば、そうそう捨てたものではないです。
とはいえ、警察との連絡には巨大なテレビ電話装置を使い、常に白銀の覆面を着用し、タイツ姿にマントをひるがえしたリングコスチュームで街中を闊歩し、高級オープンカーをブンブン乗り回すサントの姿を楽しむには、それなりの覚悟が必要ですが。
モノクロの粗悪画質のDVDで75分。オリジナルは95分とする資料もありますが、どこかカットされていたのでしょうか。たしかにナイトクラブでの歌謡ショーが不自然に短かったような気がしますが……まあそんなことを気にしていても仕方がない。
もちろん、本作の最大の見せ場は、不世出の名レスラーであるサントのファイトシーン。いやゾンビと戦うシーンではなく、本編中に４か所も挿入されるリングでの試合シーンのほうですね。
ついに未来日に終わったサントのファイトを拝めるだけでもありがたいってことです。ただ冒頭からたっぷり２試合、時間にして10分以上も続くファイトシーンには、おいおい全部で70分くらいしかないのにこんなに時間を使ってしまって大丈夫かいなどと心配になりましたが。
さらに豪華なことに、２試合目はタイトルマッチだったりするのですが、チャンピオンのサントに挑むチャレンジャーって、あれゴリー・ゲレロじゃないか？ 音声のクオリティが悪いのでリングアナウンサーのコールはよく聞き取れませんが、名前がクレジットにあるし、風貌的に間違いない気が。
サントと同様に、未来日に終わった伝説的レスラー。関節技の芸術品ゴリー・スペシャルのその名を残し……なんてこともですが、プロレスファンにはあのチャボ・ゲレロ、エディ・ゲレロらのゲレロ兄弟（ロス・ゲレロス）のお父さんと言ったほうが通りがいいかも。
サント対ゴリー・ゲレロ！ これはお宝映像ですね。
さて、ゾンビのほうですが……
前にも書いた気がしますが、ゾンビ映画には大きな分水嶺があります。
ゾンビ映画の歴史は、1968年の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」ジョージ・Ａ・ロメロ監督のこの金字塔の前後で、古典ゾンビと現代ゾンビに大きく二分されるのです。【詳しくはこちら参照】
この「サント対ゾンビ軍団」に登場するのは、言うまでもなく古典ゾンビ。儀式などを経て死体が甦り、その創造者の言うなりに動くゾンビですね。ちなみに、現代ゾンビでは不可欠の肉体が損壊したゾンビ（手足や顔面が欠損したり、腐敗したり、内臓がはみ出てるようなやつ）も、古典ゾンビではほとんど見られません（特殊メイク技術の問題かもしれませんが）
まったく無表情で無声、やや機械的なぎくしゃくした動きで動き回る今回のゾンビたちは、この時代の「ゾンビらしいゾンビ」なのでしょう。不気味は不気味ですが、現代ゾンビを見慣れた目には物足りなく感じるかもね。
ただこの作品、ゾンビ映画としても見逃せない点があります。
ゾンビがブードゥーの儀式ではなく、それを復元した科学的手段で甦ることです。そう、この映画のゾンビはオカルトではなく科学の力で誕生しているのです。
ゾンビ＋サイエンスは、これが1961年のメキシコ映画ということを考えるとけっこう画期的なアイデアだったのではないでしょうか。
まあそのへんのこともあってなのか、この映画はメキシコで大ヒットし、おかげでこの後も連綿とサント映画が作られる、その第一歩となったわけですね。
ということで、次回は「サント対犯罪王」をお届けする予定です。サント映画の底なし沼へようこそ。
未発売映画劇場 目次
【2018／10／6】 すみません、メキシコでの封切り日を調べたら、「サント対犯罪王」よりも先に（まあ１カ月くらいなんですが）「サント対女吸血鬼軍団」が封切られていました。なので次回はこちらになります。
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