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未発売映画劇場「サント対絞殺魔」

サント映画完全チェック、引き続きの第10弾。

ついにフタケタ突入。しかし、これでもまだ4分の1足らずなのだから、偉大なるかな、聖者サント

で、その第10弾は「Santo contra el estrangulador」 メキシコでの公開は1965年の11月と資料にあります。前作「サント対魔の斧」が同年8月の公開だから、またしても至近距離での公開。このへんはけっこうカオス。

これもカラクリがあって、前作とはまたしても製作会社が違うのであります。だから撮影自体は前後して、あるいは下手すると同時進行でおこなっていたのかもしれません。まあ見てみると、それも可能だったろうなと思うけど。

ちなみに、ポスター左上の容貌魁偉の人物は「エルム街の悪夢」のフレディさんではありません。彼が映画冒頭から暗躍する、今回の対戦相手。ツバ広の帽子とマントで暗がりを跳梁しています。

舞台はミュージカル劇場で、出演者の女優が何者かに絞殺される事件が発生。古びた雰囲気の劇場、複雑そうな劇場関係者の人間関係、そして劇場の過去に何かの秘密が……警察の依頼を受けたサントは、いつものとおり捜査を開始するが、事件の犯人は劇場の地下に潜み棲む怪人だった。

はい、雑にあらすじをまとめましたが、ここからも明らかなように、今回の元ネタは「オペラ座の怪人」ですね。ガストン・ルルーのサスペンス小説で、何度も映画化され、また舞台でミュージカル化されて日本では劇団四季の大ネタとして有名な、アレですね。私たちの世代にはカルト映画「ファントム・オブ・パラダイス」の元ネタとしても有名。

その「ファントム・オブ・パラダイス」に先行すること十余年、メキシコ映画版「オペラ座の怪人」がこんなところで実現しているとは知らなかったでしょう?

前作「サント対魔の斧」では、これまでのサント映画とは大きく切り口を変え、サントその人を主役に持ってきていたのですが、今回はまたしてもサントは傍役へ降下。出番も少ないし、活躍もなんか中途半端。映画も怪奇色が強いとはいえ、犯罪サスペンスものへ回帰しています。

とはいえ、映画を通して強い印象を残すのは、殺人事件をめぐるサスペンスでもなく、サントのファイトぶりでもなくて、華麗なるレビューシーンなのです。

舞台が劇場なので当たり前ですが、いきなり冒頭から2曲連続でレビューショウを鑑賞。そこを含めて、映画全体で10曲ほどが披露されます。すべての曲で舞台装置が代わり、豪華な衣装をつけた歌手とダンサーが熱演。当時のヒット曲が中心らしくてよく知らないナンバーが多かったですが、それなりのクオリティで見せてくれます。ちょっとしたミュージカル映画気分(笑)

いっぽうで、いつものとおり展開されるサントの試合はわずかに2試合(相手はいつものフェルナンド・オセスら) プロレスとしての見どころも少ないし、これではどっちが主役かわかりませんね。

ただし、そのうちの1試合がストーリーにきちんと組みこまれているのはちょっと特筆もの。たぶんシリーズ初ですね。これまでは完全にストーリーからは浮いた存在だったサントの試合が、映画的にも活かされているのですから、こう見えてサント映画も進化してきているのでしょう。そこだけは評価してあげましょう。

かくしてミュージカル映画(笑)かと思わせる展開を見せつつ、謎の怪人の正体を追うサント探偵の捜査が続き、第2の殺人が起こるのもモノともせず、ついに解決の時が……

ここまで見ての私の評価は、正直言ってさほど高いものではありませんでした。しかし、映画ってのは最後までちゃんと見ないとダメですね。

最後の最後、犯人の正体が割れた瞬間、思わず声が出そうになりました。私は完全に裏をかかれたというか、虚を突かれました。ここまでのサント映画史上、最大のビックリでしたよ!

もちろん、伏線もクソもない完全なムリ筋の展開なんですが、それでもここまで思い切られると、脱帽です

ということで最後にしてやられたこの映画ですが、じつは今回はDVDなどのソフトを入手できませんでした。出ていたことは出ていたようなんですが、なんか品切れで、amazonでもプレミアがついてるんですね(つまり高いんですよ) なので、今回はネット上にアップされている全長版を鑑賞しました。著作権的にどうなのかはわかりませんが。

次回作は本作の続編らしく、監督も同じルネ・カルドナ(René Cardona) 今回は精彩を欠いた感もあるサント先生、大逆襲なるか?(じつはこれもDVDがないんですよね)

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