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#51. 毎日泣きたくなっている


毎日、毎日、泣きたい気持ちになっている。

毎分、毎秒、悲惨なニュースが雪崩のように押しよせてきて、前向きな気持ちを保ちたいのに、とても耐えてはいられない。

日本国内だけ見ていれば、「恐いね」くらいかもしれないが、世界の流れやここ一週間の日本の状況を見るかぎり、事態は紛れもなく、人類全体の危機を描く SF 映画のごとく、「最悪」だ。

世界的ベストセラーとなった Sapience(邦題『サピエンス全史』)の著者 Yuval Noah Harari は、3 月 20 日の記事 The World After Coronavirus(コロナウィルス後の世界)の冒頭を次のように始めている:

Humankind is now facing a global crisis. Perhaps the biggest crisis of our generation.
人類はいま、地球規模の危機に直面している。おそらく、我々の時代における最大の危機である。
The decisions people and governments take in the next few weeks will probably shape the world for years to come. They will shape not just our healthcare systems but also our economy, politics and culture. We must act quickly and decisively.
人々や政府が今後数週間でする決断が、このさき我々の住む世界を形作っていくことになるだろう。医療制度だけではない。我々の経済、政治、そして文化の形をも変える。我々は迅速に、かつ決断力をもって行動しなければならない。
We should also take into account the long-term consequences of our actions. When choosing between alternatives, we should ask ourselves not only how to overcome the immediate threat, but also what kind of world we will inhabit once the storm passes.
また我々は、自分たちの行動がもたらす長期的な結果も、考慮に入れておくべきである。さまざまな取捨選択の過程で、我々は自分に「目の前の脅威をいかにして乗り越えるか」ということだけでなく「この嵐が過ぎ去った後、我々はどのような世界に住んでいるのか」ということも問うべきなのだ。
Yes, the storm will pass, humankind will survive, most of us will still be alive — but we will inhabit a different world.
いずれ嵐は過ぎてゆき、人類は生き延びることだろう。我々のほとんども、きっと生き残っているはずだ。しかしそのとき、我々は違う世界に住んでいる。

言うまでもないが、この記事が書かれた 3 月 20 日より、事態ははるかに深刻になった。

WHO のレポートによれば、20 日になる時点で判明していた感染者数は 23 万 4073 で死者数が 9840 だが、昨日 29 日になるころには、感染者数 63 万 4835 に死者数 2 万 9957 となっている。たった 9 日で感染者が 40 万人近く増え、また 2 万人以上が亡くなっている。

世界の感染状況は、このウェブサイト(Coronavirus: the disease Covid-19 explained)でも簡単にチェックすることができるが、

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このサイトによれば、現時点での感染者数は 73 万 665、そして死者の数は 3 万 4769 となっている。

ウィルスはいまも加速度的に拡がっており、毎日数万単位で感染者が増え、数千単位の死者が出る。一週間前の報道だって、可愛く思えてくるほどだ。

日本も、とりわけ 24 日にオリンピックの延期が発表されてからのこの数日間で、状況は明らかに悪化した。

国内の感染状況は、このサイト(Japan COVID-19 Coronavirus Tracker)で逐一チェックしているが、様子は以下の通り:

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(オレンジ Confirmed の線が感染者数の推移)

とくに東京都では、24 日まで 1 桁か 10 数人あたりで揺れていた新たな感染者数が、25 日に 41 まで急上昇したかと思うと、26 日(+47)、27 日(+40)、28 日(+63)と続いて昨日 30 日はとうとう 68 人もの新感染者が出てしまった。

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(都道府県別感染者数推移:
東京の上昇率に恐怖を覚える)

※なお、最終日(つまり今日)だけ上昇がゆるやかになっているが(+13)、これはそもそも「ウイルス検査ができた検体数が少な」かったからということだ(参照:「東京で新たに 13 人感染確認」)。

現時点での日本における総感染者数は 1925 、死者の数は 54 となっている。

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少ないと思うだろうか。だがこれは、単にこれまで検査をしてきた数自体が他国と比べて圧倒的に少ないだけで、この数値を見て「日本ではあまり蔓延していない」とか「日本では抑え込めている」とか判断するのは、明らかな誤りである。

ヨーロッパなどはこの件について非常に厳しい目を向けている。

たとえば、Coronavirus: German embassy criticises Japan's case figures as expats question Tokyo's approach という記事には、日本に住む外国人の声がいくつか取り上げられている。

A grand total of 21,000 tested until now, over two months. . . . About the same as other countries can manage in two days. Olympic money was more important than public health.
この 2 カ月間で、今日までの検査総数が 2 万 1000 。こんなの、他の国なら 2 日でできる数じゃないですか。オリンピックのためのお金が、国民の健康よりも大切だったということなのか。

また、東京にある語学学校を経営するフランス人 Eric Fior は:

I don't believe a word of what they have told us. . . . The government has been telling the world that Japanese are 'special' and that they won't get the disease because they wash their hands a lot and wear masks, but all of a sudden the Olympics are delayed and the number goes up.
彼らの言ってきたことなんて一つも信じられません。日本政府は世界に対して「日本人は『特別』なんです。わたしたちはよく手を洗うしマスクもしているからコロナには罹りません」と言い続けている。それが突然、オリンピックが延期となったら感染者数が上がっているじゃないですか。

こういったある種の「日本人特別論」は、ネットなどでもいまだに根強く支持されているが、

感染が拡がるヨーロッパでは、(国ごとに差異はあるものの)すでに街は封鎖され、人々は自宅にいることを命じられている。お店は薬局やスーパー以外閉まっており、3 人以上で外を歩いていようものなら、捕まって刑務所に入れられたり、さもなくば破格の罰金を課されるという状態が続いている。...... が、そのような閉鎖的環境下でも感染は拡がっているのである。

それをふまえて考えてみれば、大人数で集まる時点で十分危険だ。日本人は「よく手を洗うから」、「マスクをするから」、「清潔を好む国民だから」と言って自分たちだけ神聖視できる段階は、もうとっくに過ぎているのではないか。

ドイツ大使館は、日本に居住するドイツ人に宛て、日本を痛烈に非難する声明をウェブサイト上にアップした:

The official infection rate in Japan cannot be believed. Due to the low rate of testing, it is likely that there is a high number of cases that have not been reported.
日本が公式に出している感染率は、信用できるものではありません。検査率の低さのために、これまで報告されてこなかった感染者の数がもっとあるはずです。

報告されている感染者数が他の先進国と比べて少ないからと言って、問題を他人事としてしか扱わず、注意を怠ったままでいると、イタリアやスペイン、イギリス、あるいは今や世界で断トツ 1 位の感染者数となってしまったアメリカのように、取り返しのつかないことになってしまう。

(国別感染者数の推移ビデオ:
イタリア・スペイン・アメリカに注目)

次の記事によれば、現時点で世界の 3 人に 1 人が、なんらかのロックダウンの状態で、移動や外出を制限されているそうだ。

今日の小池都知事の会見を見るに、この国はまだ、ロックダウンを実施する気はさらさらないようだが、海外を見ると、感染者数の多い国はもちろん、日本よりも数の少ない国であっても、国から外出制限・移動制限がかかっているというところは実にたくさんある。

以下は、上の記事を参考に、「現時点(3/30)で強制隔離や国境閉鎖などのロックダウンを行っている国のリスト」である。日本も決して悠長に構えていてはいけないということを強調するため、( 3/30 の時点で)「日本よりも感染者数の多い国」「日本よりも感染者数の少ない国」に分けてリストアップする。

▼ 日本よりも感染者数の多い、ロックダウンを行っている国

イギリス,オーストラリア,中国,イスラエル,ベルギー,ドイツ,マレーシア,チェコ,フランス,スペイン,アイルランド,ノルウェー,デンマーク,イタリア,カナダ(計 15 ヵ国)

▼ 日本よりも感染者数の少ない、ロックダウンを行っている国

ロシア(来週から),南アフリカ共和国,ニュージーランド,サウジアラビア,コロンビア,インド,ヨルダン,アルゼンチン,モロッコ,ケニア,ポーランド,クウェート,エル・サルバドル,リトアニア,モルディブ,北朝鮮,ペルー,カタール,スロバキア,ウクライナ,クロアチア(計 21 ヵ国)

単純に感染者数の多い国がロックダウンを行っているというイメージかもしれないが、こうして見てみると、(まだそうするに至っていない)日本よりも感染者数の少ない国でも、かなりのところがロックダウンに乗り出していることがわかる。(もちろん人口比とかそういった部分も関わってはくるだろうけれども)

それぞれの国がどのような形で制限を行っているかは、元記事に飛んで確認してほしい。

いずれにしろ、これだけの国が大々的に外出制限・移動制限を賭けている中で、日本はほとんど「博打」のような様子見を続け、他国を困惑させている。

しかし、何度も言うが、事態はほとんどの日本人が思うよりはるかに深刻だ。このウイルスは、あまりに強い。

(「家から出ないで」と市民に直接
訴えかけるイギリスの医師と看護師たち)

国が「要請」だけして煮え切らないでいることに、苛立つ気持ちはたしかにある。どこが「ぎりぎり持ちこたえている状態」なんだと噛みつきたくもなってしまう。

だが、動いてくれないなら仕方ない。文句をだれに言ったところで、救われる命は一つもない。だから国に強制される代わりに、自分たち国民一人一人が、他の多くの国にならって、できるかぎりの外出自粛と衛生面での感染予防に努めていくしか、手立てはない。


毎日一度は泣きたい瞬間の訪れる、こんな日常がはやく、はやく過ぎ去りますように。


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