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#56. 『上を向いて歩こう(Look Up to the Sky)』 和訳


今週の始め、宮本亞門さんの発案で立ち上がった「上を向いてプロジェクト」の一環として、著名人を含めたさまざまな方の歌唱映像をつなぎあわせた『上を向いて歩こう』が、YouTube にて公開された。



久しぶりに聴いて、あらためて不思議な力をもらえる歌詞だと思ったのだが、映像を観てもらえるとすぐわかる通り、元の歌詞に合わせて「英語の歌詞」が付けられている。

動画の概要欄によれば、ゲーリー・パールマンという方が歌詞翻訳を担当したようだ。

しかしこの英語の歌詞、「翻訳」となってはいるものの、よく読んでみると、実際オリジナルとはかなり離れた歌詞になっているので、今日はその歌詞を和訳してみようと思う。

原曲における伝え方とはハッキリ異なる、英語でのメッセージの表現法に注目したい。


■ 歌詞と和訳


Though shadows fill the sky,
(空が影でおおわれても)
We'll walk with chin up high
(顔を上げて歩くんだ)
Cast up our eyes
(上を向こう)
As we look to a new tomorrow
(新しい明日に目を向けるように)
Long as there is spring
(春がめぐり)
Long as there's love
(愛があるかぎり)
Truly we'll never be alone
(ぼくらが一人になることなんてないさ)

The same old moon above
(きのうまでと同じ月が)
Shines down on everyone
(みんなを照らしている)
Shimmering stars
(きらめく星は)
Light the way to a bright tomorrow
(かがやく明日への道を照らしている)
Long as there is you
(きみがいて)
Long as there's me
(ぼくがいるかぎり)
We know we'll never walk alone
(ぼくら一人で歩くことなんてないよね)

Happiness is out where clouds meet the sea
(幸せは海の向こうに)
   〃   is home when you're there next to me
(きみがいれば幸せはここに)

Wherever life may take us
(この先どうなろうとも)
Dreams will not forsake us
(夢はぼくらを見放したりしない)
The falling rain
(降りしきる雨は)
Will bring rainbows to climb tomorrow
(虹を明日に架けるてくれるだろう)
Long as there is spring
(春がめぐり)
Long as there's love
(愛があるかぎり)
Truly we'll never be alone
(ぼくらが一人になることなんてないさ)

Long as there is you
(きみがいて)
Long as there's me
(ぼくがいるかぎり)
We know we'll never walk alone
(ぼくら一人で歩くことなんてないよね)

Happiness is out where clouds meet the sea
(幸せは海の向こうに)
   〃   is home when you're there next to me
(きみがいれば幸せはここに)

Though shadows fill the sky,
(空が影でおおわれても)
We'll walk with chin up high
(顔を上げて歩くんだ)
Cast up our eyes
(上を向こう)
As we look to a new tomorrow
(新しい明日に目を向けるように)
Long as there is spring
(春がめぐり)
Long as there's love
(愛があるかぎり)
Truly we'll never be alone
(ぼくらが一人になることなんてないさ)

Truly we'll never be alone
(ぼくらが一人になることなんてないさ)


■ おわりに


翻訳は、オリジナルの言い回しを忠実に守りながら訳すものと、テーマを共通させた上で(英訳なら英語らしく)表現を大胆に変える訳があるように思うが、今回の訳は明らかに後者だ。

ただ、原曲では一番と二番で同じ歌詞であるところを英語では違う歌詞にしていたりもするので、後者寄りの訳としてもかなり、訳者の思いが前面に出たものであるように感じる。

「こういうことを伝えたい。こういう風に伝えたい」という強い意志がなければ、ここまで歌詞をガラッと変えることはおそらくしないだろう。

結果、原曲が「一人ぼっちの夜、涙がこぼれないように、『上を向いて歩こう』と自分に言い聞かせている」ような歌詞なのに対し、

英語の方は「空の模様に想いを馳せつつ、明るい未来を見据えて、『ぼくらは一人ぼっちじゃないからね』と “きみ” に呼びかける」ような歌詞になっている。

オリジナルにある「噛みしめるような孤独感」が消えてしまったという意見もあるだろうけれど、訳者もきっと、こういう状況での訳だからこそ、あのような前向きな歌詞にしたのだろうと思う。

世界中の人々が自宅にいることを強いられ孤独を感じている中、訳者は「それでも孤独じゃないんだ」ということを、この訳を通して強く訴えたかったのだろう。


春がめぐって、この世に愛があるかぎり、ぼくらが本当の意味で一人になることなんてない。

一人ぼっちの夜に、今日はそんなことを考えた。



※ YouTube のチャンネルをつくってみました。今後こちらでも曲の和訳を動画形式であげていこうと思います。


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