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世界設定資料集 4.3 個々人の宗教


 人はそれぞれ個別の宗教を持っているものである。まとまった教義も聖典も何もなくても、人はどう生きるべきか、なぜ生まれて死んでいくのか、幸福とは何かなどといったスピリチュアルな問題に対する信念がその人の宗教なのである。

 特定の宗教団体に所属している人々であっても、その教えに対する感じ方や解釈は微妙に違うはずである。無宗教と思っている人も同様に、その人の属する社会で何となく共有されている価値観をベースに、独自の信念体系を築いている。それがその人だけの宗教である。

 それぞれの宗教は聖なるものを持っている。それはその人の思い出の品かもしれない。あるいは大切な誰かの遺品。幼い頃に遊んだ人形。触ると安心する毛布。推し。一冊の本。感銘を受けた言葉。空や水や風。聖なるものはその人の宗教にとって問答無用で価値のあるものである。

 個人の宗教はその人の人格の根である。命に最も近い部分である。そこに傷を付けることは、その人の生存をも揺るがしかねない。

 だから他者の宗教を侵してはならないし、自分の宗教を他者に侵させてはならない。互いの聖なるものは尊重しなければならない。

 相容れない部分は必ずある。真っ向から対立することもあるだろう。共に生きていくためには曲げなければならないこともあるかもしれない。それでも相手の宗教を頭ごなしに否定してはならない。相手を深く傷付けて激怒させ、溝を広げるだけである。

 相手の宗教は相手だけのもので、あなたの宗教はあなただけのものだ。誰にも無理強いすることはできない。

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