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世界設定資料集 4.2 自己否定


 自己否定は慢性的に続く息の詰まるような苦しみをもたらす。

 他者からの否定による傷付きも本質的に自己否定によるものである。ひどく罵倒されたとしても全く意に介さなかったとしたらどうということはない。罵倒の言葉を真実として自分の中に取り込んでしまい、自分の一部が敵対者と化して自分自身を攻撃し続けるから苦しいのである。

 自己否定が続くと自分を信頼できなくなる。自分の人格、記憶、想い、喜びや痛みさえ、間違った恥ずべきものとみなすようになる。自分の下す判断に自信が持てず、外部から与えられる「こうあるべき」という基準に頼り、基準値からはみ出した自分を貶め、罰する。他人の顔色ばかり窺って自分の人生を生きられなくなり、本当は何が好きで何がしたいのかさえわからなくなる。

 恥ずべき自分を改良するため、本来の自分は強く抑圧される。しかし抑え込まれた怒りも傷も自然に消えてなくなることはない。手当もせずに覆い隠した傷は膿んで、いつまでも治らず全身を侵す。

 一度蓋を開けて消毒してやらなければ傷は治らない。なかったことにしたかった自分の汚い感情がそこには封じ込められているが、それは否定すべきものではない。どんな感情も常に正しい。その感情をどのような行動として表現するかについてはコントロールする必要があるが、その感情が湧き出すこと自体は止めようがなく、自分はそういう感情を抱いているのだということをまず事実として認めなければならない。

 どんな人も、どれだけ怠けているように見えようとも、その人なりに精一杯の今を生きているものである。過去の痛みも過ちも、その時点での最善を尽くした結果のはずである。だからその傷を慈しんでも良い。

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