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小説

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自作の小説です。 最近はほぼ毎日、500〜2000字くらいの掌編を書いています。
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2022年9月の記事一覧

短編小説「憧憬の姉妹」【2000字のホラー】

短編小説「憧憬の姉妹」【2000字のホラー】

アパートの錆びた階段に立っていた。
どうやって帰ってきたのか記憶にない。延々と夢を見ている気がする。母が死んでから。

いつまでも子供みたいな母だった。
わがままで天真爛漫で。俺のほうが親なんじゃないかと思うくらい。
幼子が犬の子を欲しがるみたいにまだかまだかとせがんでいた孫を抱かせてやることは結局できなかった。

終電後の住宅街は底無しの海みたいで、寄る辺なさを嫌でも自覚させられる。

世界が縦

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