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マカロニえんぴつ『恋人ごっこ』

ポピュラーミュージックは個人的に2つの時間軸に分類されると思っている。ビートルズ以前の世界とビートルズ以降の世界。ビートルズを聞くたびにつくづく既にすべて彼らにやりつくされていると感じる。その事実を受け止めて自分の色を出して新しい価値を創造していくのがクリエイターの醍醐味でもあるのですが。マカロニえんぴつは全員洗足音大を卒業して、その知識やテクニックを生かしたトリッキーな曲も多いのですが、このようなストレートな曲にこそ彼らの魂と魅力を感じます。

Oasis?いやそのルーツはThe Beatles

最初楽曲を聞いた時に、彼らはOasisが凄く好きなんだろうと思いました。この曲に関してはメロディーの持っていきかた、アレンジなど含めてWhateverという曲に似ています。パクっているというよりも本当に大好きで研究しつくして、アウトプットしている元作品への相当な愛を感じるほどです。元々ボーカルのはっとりさんは、春の風と言う曲のインタビューでこう答えている。

はっとり 最初からこういう曲を作ろうと思っていたわけじゃないんですよ。この曲はけっこう前に弾き語りで歌詞も含めて1コーラスできていて。そのデモを自分でも気に入ってたし、スタッフの反応もよかったので、大事に大事にしていました。で、レコーディングが近付いてアレンジをしていく中で、なんの気なしにDAWソフトでOasisの「Whatever」みたいな質感でストリングスを入れてみたら、全然違和感がなくて。
(引用:マカロニえんぴつ「CHOSYOKU」特集|メンバー4人インタビュー&sumika片岡、ビーバー柳沢ら関係者からの賞賛コメント (3/4) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー)

つまり彼らのルーツみたいなものは確実にOasisにもあって、寄せるのではなくてちゃんとリスペクトした上でアウトプットしている。しかし、この曲はOasisをはじめとする90年代のブリティッシュロックのエモさはあるものの、力強さ・新しさがない。むしろ懐かしさを感じるはず。それは何故かというのは、Oasisのルーツをたどるとわかる。The Bealtesだ。

マカロニえんぴつの今までの楽曲は、基本的に解像度が高い音でJAMIROQUAIとかのアシッドジャズにモロ影響を受けたようなヌケのあるサウンドが特徴でした。が、この作品は違います。一番わかりやすいのがドラムのスネアの音。今までにないくらいこもらせて、まるで70年代のモータウンサウンドのような音作りとビート。その他に下記点に注目です。

・左チャンネルでずっと鳴っているギターはまるでチェンバロのよう。
・荒々しくボーカルが刻むアコースティックギター
・たまに右チャンネルで聞こえてくるギターはファズのような歪で荒々しく、まるでアナログシンセのような音。
・跳ねるのではなくてはねてしまっているドラムとベース。

ものすごく後期のThe Beatlesのサウンドと共通点があります。

The Beatlesの影響

影響されないほうのが難しいのですが、例えばMr.Childrenの深海に収録されているありふれたLove Storyと言う曲がモロにビートルズをオマージュしています。The Beatlesの特徴としては、影響にとどまらず各アーティストが自分なりに消化して、あえてあからさまにオマージュだとわかるようにする所にあります。
The Bealtes感と言うのを纏めますと下記になります。

・アナログなレコーディング環境
・右チャンネルと左チャンネルを多用したサウンド
・ギターのローファイ(簡単に言うとラジオっぽい、音質の解像度が低い)歪み
・はねるのではなくはねてしまうドラムのハイハット
・シンプルでつっこみがちなベース

最後にえ?違う曲?

曲を聴き進めていくと、最後に急にドラムが3連符になり、全く違う曲になります。ここで特質べきことは全楽器の音が変わっていること。一番わかりやすいのがドラムのスネアとギター。ここで急にOasis、つまり現代的なサウンドへと切り替わります。それを締め切った後に謎のデジタルサウンド。これ完全に僕の妄想ですが、2000年代後半にブリティッシュロックの少しデジタルが入り込んでいた(the museやthe musicなど)時代があります。つまりマカロニえんぴつはこの曲のアレンジを通して、イギリスの音楽史を描きたかったのではないかと考えています。

まとめ:聞くべきポイント

もちろん歌詞もメロディーもこの曲は素晴らしいのですが、今回はアレンジに部分を中心に触れました。ちなみに歌詞もOasisのWhateverのアンサーソングみたいになっている場所が多く面白いです。

・今までの彼からは想像できない古いサウンド
・The Bealtlesのようなサウンドメイキング
・最後の時代が切り替わるようなアレンジ
・OasisのWhateverに答えるような歌詞とアレンジ


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